第677話 可愛い狂い
「アヤネさんはこの後どうするんですか?」
「っ...未定かなぁ...とりあえずここが何処か知りたいんだけど...」
「んーここはロウアー大陸のガンヴァント国ですね!えーっと...ここです!僕たちはこの後こういうルートで回るんですが...」
ユウトくんが泣き止んでしばらく。未だに潤んだ目で問いかけてくるのでちょっと心が癒されながらも答える。すると自身の背丈ほどある大きな大きな地図をインベントリから取り出して今いる現在地を指さすユウトくんはこの後汽車が行くであろうルートを指でなぞっていく。この後北に向かって、ロウアー大陸と魔大陸を繋ぐ中立国家アポカリプスを通って、最後に私たちが初めて出会った場所である魔大陸の炎の国の街ニスリンドに到着するらしい。まだすず達はニスリンドにいるらしいのでこの汽車に乗せてもらえれば楽ができる...?
「じゃあ是非乗っていってください!!アヤネさんがいればスリーナさんが怪我しないで済むので...!」
「ユウトくんありがとうね。」
「ユウト...そうだよな...私は頼りないよな。」
「え...ち、ちがっ、そういうのはずるいです!」
「はっはっは!冗談だよ。そういう訳でアヤネ...私個人で頼みたいことがあるのだが話を聞いて貰えるかい?」
「はい、なんでしょう?」
「私に...剣を教えて欲しい。」
「えっ!?...で、でもスリーナさん実力は十分ありますよね?」
「...いや、先程の戦闘を見てもらったのならば分かるだろう?多対一の戦闘はどうにも苦手でな...魔銃の扱いには長けているが剣はからっきしで近づかれればなにもできない...。だからどうか頼む...!」
「んー...」
突然90度に頭を下げて頼み込んできたスリーナさんに驚きつつも理由を聞くと納得した。確かに銃を使っている時は強かったけれど、敵に近づかれてから一気に追い詰められていた。
「このままではこの汽車を守る傭兵として役に立てないのだ。」
「...分かりました。教えるのは下手だと思いますがそれでも良いですか?」
「あぁ。ありがとうアヤネ...!」
「えーっと...話も纏まったところでガンヅさんのところに行きましょうか...?」
「おっとそうだったな。」
「アヤネさんはガンヅさんとは初めましてだったよね。」
「そうだね。ガンヅさんって汽車を運転してる人なの?」
「そうです!同時に汽車を造った人でもあるんですよ!」
「へぇーそうだったんだね...。」
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「おっ、やっと来たかユウト。中々来ないから心配したぞ?」
「遅れてごめんなさい!」
「ん?そっちの龍人様は誰だ?」
「アヤネさんです!」
「たまたま通りかかったので...。」
「そうか...ありがとな。聞いてるか分からんが俺はガンヅだ。よろしくな。」
「いえいえ。よろしくお願いしますガンヅさん。」
ユウトくんの頭を撫でながら感謝するガンヅさん。私もユウトくんを撫でてみたいなぁ...なんて思ったり。なんかユウトくんって母性が擽られるっていうか...可愛いよね。
「...なるほどな。アヤネも乗ってくんだな?」
「へ?あ、はい。」
いつの間にか話が進んでいたみたいでとりあえず返事しちゃったけど大丈夫そうかな?
『ボーッとしてるんじゃないよ全く私がいないとなにもできないんだなご主人は...。』
『ご主人様メッ!ですよ?』
『あ、はい...。』
この子達も違った可愛さがあるよね。うんうん...。
『はぁ...。』
『どうしたのスカーレット?』
『...なんでもない。』




