第676話 自立型神器
「どうぞスリーナさん。」
「あぁ、ありがとう。」
綺麗な青髪女性のスリーナさんの手を取って立ち上がらせる。先程彼女は自身が情けないということを口にしたけれど、私はそう思わない。まず多対一という状況で立ち向かおうとする気概があり、今回は危うかったけど実力もある。そんな人が情けなかったら世の中情けない人だらけになってしまう。それぐらい私はスリーナさんを買っている。
「...珍しいですね。ここで銃なんて初めて見ました。」
「前にもユウトに言われたな...私の改良作だ。」
「良い銃ですね。」
「ありがとう。...アヤネの剣?も素晴らしい業物と見たが...もう一本あるのではないか?」
「へ?あぁ...そうですね。」
今ここにあるのはともちゃんだけ。でも腰に差している鞘は2つ。ならばもう一本あるはずだという考えに至るのに時間はいらない。
「今は外で戦ってます。」
「...???」
──────────
──────
「敵襲!!!」
「なんだ!?」
───ズバンッ...!!!
「と、透明人間だ!!!矢を放てェッ!!!」
───ヒュヒュヒュンヒュヒュンッッ!!!
炎や風、雷や水といった様々な属性が付与された矢が一点に放たれる。しかし、それは空中に浮遊する刀には当たらず、かといってそれを握っていると思われる透明人間?にも当たらなかった。
「物理は無効か...!いやしかし属性攻撃もしているはず...?」
「ま、まさか...剣が意志を持っているってことか...!?」
「そんな馬鹿な!!」
──スパァッッ!!!
「ぐァァァァアッッッ!!?!!?」
「クソッ!!」
───ギィ、バギィィンッッ!!!
鍔迫り合いを臨もうとするもその剣は容易く真っ二つに折れ、その持ち主も真っ二つにされる。
「ば、化け物...!」
「お、俺は逃げるぞ...!!!」
「あ、ちょっ待てよ...!」
『逃がさんぞ愚図共。』
まるで透明人間が握っているかのように綺麗に浮かぶ真っ黒な剣。それはただ横に一閃しただけ。
───ッッッ...!!!
「お、おい/俺も」
「クソッ...お前た/ちだけ逃げるんじゃねぇっ!!」
「お、俺/を置いてくなよ!」
「ひ、/ひぃぃぃっっ!!!」
ただそれだけで汽車を攻撃していた数十人の盗賊たちは胴から横に真っ二つにされた。
『他愛もないな...。』
「あ、いたいた。」
『ようやく来たかご主人。遅かったな。』
「ごめんね?」
黒い剣はくるりと回って赤髪少女の帯びている鞘に収まる。
「...全員殺しちゃったんだね。」
『ふん。こんなヤツら生かしておいても無意味だ。』
『もうお姉様ったら...ご主人様の意に反してばかりだと捨てられちゃいますよぅ?』
『なっ!そ、そんなことご主人がする訳ないだろ...!!そ、そうだよな...?』
「んー...」
『そ、そうと言ってくれご主人...!』
「...分かんないや。」
『うそ、だろ...?』
落ち込んじゃったそーちゃんを2人で慰めて汽車の中に戻る。この一部始終を見ていたスリーナさんに誰と話していたんだと引き気味な目で見られたけれど、刀達に魂が宿ってると言うと納得してくれた。
「アヤネの剣は凄いのだな...聖剣や魔剣が持ち主と話せるという伝説は知っていたのだが、まさか存在するとは思わなくてな。変な目で見てすまなかった。」
「いえいえ!私も変な目で見られることは分かってましたので。」
「うわぁぁぁんっっ!!すりーにゃさぁぁぁんっっ!!!」
「うわっ、と...ユウト、危ないじゃないか。」
「ぐすっ...よがった...いぎでてよがっだです...!」
「あ、ユウトくんも乗ってたんだね。」
「ふぇ...?あ、あやねしゃん...?」
『...ふむ。この少年は中々愛いところがあるな。』
『お姉様...ダメですよ...。』
『何がだ!?』
「あ、あやねしゃんがスリーナさん、を...?」
「うん。通りかかったからねー。」
「ありがとうございましゅ!」
未だに涙を流しながら感謝の言葉を口にするユウトくん。ユウトくんはやっぱり可愛いね。
『...自分より小さいものは可愛いものだから稀有な存在。』
『うるさいよスカーレット。』




