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第666話 動き出す歯車

お久しぶりでございます。いやぁ色んな意味で終わりました。やっと全てから解放されたので今日から投稿再開します。リハビリ兼ねて今日は本編という名の番外編です。土日の投稿はお休みです。





...金曜から5日間バイトあるのは聞いてない。





「いたぞ!!捕らえろッッ!!!!」


「うぉぉおおおおおおおっっっ!!!!!」



「チッ...」



全身黒ずくめの男たちに追われる背の高い青髪の女性。全身の至る所からボタボタと流れ出す血液が彼女の命が潰えそうであると知らせる。そんな文字通り必死で走る彼女の右手には自身と同じく青い色をした銃が、左手には剣が握られており、その銃口は常に黒ずくめの男たちへと向けられていた。



「吹っ飛びなッ...!!」



───キィィィンッ...


───ドパァァァンッッッ!!!!



青い銃から放たれる水の弾丸。凄まじい火力を誇るそれは周囲の木々を薙ぎ倒しながら突き進む。だがしかし、その程度では黒ずくめ達の追跡を阻止することはできず更に距離を縮めてしまう。



───ギィィィインッッ!!!


「うぐっ...」

「大人しくしな!」

「うっ...せぇッ!!!」


───ドパァァァン!!!!



左手の剣で黒ずくめの攻撃を受け止め、右手の銃をぶっぱなす。しかし、無理な体勢での射撃のせいで勢いを殺せず、銃が右手から離れてしまった。



──ドスッ...


「...もう終わりだ王女スリーナ。」

「クソったれが...。」



背後の木に叩きつけられ、周りを囲まれる女性──スリーナ。剣の切っ先を向けられながら彼女は左手の剣をギュッと握りしめた。



「両手を切り落とせ。」

「「はっ...」」



これ以上の抵抗を許さないといった声色で配下に命令を下す。ここで彼らに捕まってしまえば彼女は()()()()()()()()()()()()()()として処刑されるだろう。



「っ......」



そんな情けない自分に思わず涙する彼女。ジリジリと近寄ってくる男たちを睨みつけながら剣を構える。すると...



───ピシピシッッ...!


───パキッ...パキンッッ...!



突如として空間に入る亀裂。それは彼女を中心に黒ずくめ達をも巻き込んだ。



「っ...こ、こは...?」



なぜか倒れ伏す黒ずくめ達と目の前に現れた防壁にしては低すぎる...土台のような何か。逃げるなら今のうちと判断した彼女は落とした銃を拾い上げ、体を起こすと何処からともなく音が聞こえてきた。



───ポッポォオオオオオッッ...



「なん、だ...あれは...?」



車輪のついた大きな箱。それが幾つも後ろに連なっている。そしてその箱の下では熱い煙が吹き出している。よく見ると溶かした金属をばら蒔いていて、そのすぐ後ろで急速に冷却しているようだ。



「...少しばかり邪魔させてもらう。」



結構な速さで動くそれの前から3番目の箱に飛び乗り、身を伏せる。こうして今は亡き国の王女スリーナはこの世界の最新技術に触れたのだった。



───────────────────

───────────────



「...てください!大丈夫ですか!?」


「うっ...クソ...いつつつ...」



起き上がるのと同時に目に入る陽の光。それに照らされる1人の男の子の顔。スリーナは警戒心をあらわにしていたがそれもすぐに収めた。



「君、は...?」

「僕?僕はこの汽車の車掌のユウトだよ!すごいでしょ?」



ふふんと青い帽子を被り直す少年。しかしスリーナには聞き慣れない単語があった。



「『このきしゃ』...?『しゃしょう』...?なんだいそれは。」

「ほら周りを見てよ。汽車っていうのは今貴女が乗ってるもののことだよ!この世界にはまだ珍しいものみたいだから仕方ないよね。うんうん...。あ、車掌は...んーなんて説明しようかな...えーっと...この汽車で色々する人!」

「へぇ...」



まだ小さい子供だから意味もよく分からずに使っているのだろう。そう思ったスリーナは微笑んでユウトの頭を撫でた。



「えへへ...。あ、そうだった!起きたらガンヅさん...この汽車の運転士のところに行かなきゃだった!一緒に来てくれるかな?えっと...」

「私はスリーナだ。...ただの、スリーナだ。」

「ん?わかったスリーナさん!」



前の箱へと移るユウトの後に続く。スリーナは歩いている途中で自身に包帯が巻かれていることに気がついた。



「この包帯は君がやってくれたのか?」

「うん!下手だけどやらないよりは、ね?」

「そうか...助かった。」

「えへへ。」



驚くほど揺れのないこの汽車の中を進む。椅子がたくさんあるが、それらの座る人が存在しない。この広い空間の中にたった2人。ガタンゴトンという少し大きな音と足音のみが耳に入ってくる。



「あ、そういえばスリーナさん!」

「ん、なんだ?」

「その青い銃カッコイイですね!この世界には多分まだないと思ってたので見た時ビックリしました!」

「まだない...?あぁ我が国の最新技術を駆使して私が造ったものだ。...これの劣化版は世界中で使われていたはず、なんだがな...?」



ここにきてようやく彼女は違和感に気がついた。



彼女のいた世界では見ることのなかったこの走る汽車と窓から見えるこの美しい景色。そして逆にこの世界にはない銃という存在。





───彼女は別の世界に迷い込んだのだった





そして原因と思われるあの亀裂の発生は奇しくもこの世界で彩音という少女が龍神となった瞬間と同時刻であった。



○TIPS○

・スリーナ

別世界のダルニア国の王女。低身長が特徴の普通のドワーフとは違い、ドワーフとエルフのハーフである彼女は他の人種と同じ背丈を持つ。彼女の持つ水の魔銃は彼女自身が既存の銃を改造した物で、その威力も装弾数も凄いことになっている。

別世界からこの世界に迷い込んだ彼女は一時的に魔道機関車の乗務員且つ戦闘員になったようだ。


・魔道機関車

道がなければ作ればいい。溶かした魔鉄をレールの形で地面にばら蒔いて、即冷却しながら走る機関車。出発してから10日が経過し、ようやくこの世界の半分の線路敷設が完了した。


・ユウト&ガンヅ

この世界に機関車を生み出したプレイヤーである少年とNPCのおっさん。今の所は大人であるガンヅが熱に耐えながら運転士を務め、ユウト少年は客のいない客車を見て回っている。その際に傷だらけで倒れ伏していたスリーナを発見した。いつかこの汽車が一般開放されたらユウト少年車掌は客に可愛がられるだろう。それが役目だから。


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[一言] 常時薬物と道具と魔法と淫獣と機械による際限のない発情と絶頂によって、 身も心も意志も思考も感情も快楽で塗りつぶされて快楽を得るだけの人形へと 開発される過程と末路の夢を見る彩音の外伝は・・・…
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