第662話 対価
───ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!
たくさんの金色の龍の手が身を伏せてガードするエレメンタルドラゴンさんをタコ殴りにする。...なんだかこうして見るとイジメの現場みたいで心苦しくなってくる。...そうさせてるのは私なんだけどさ。
「ごほっ...こうなってしまったらもう仕方ありません...私も本気で行かせていただきます。」
彼女の黒い身体にどんどん色が混じっていく。これは元に戻ってるのかな?あ、やっぱりそうだ、虹色になってる。
──グォォオオオオオオオオオオオッッ!!!!
最初に出会った時の虹色の体になると大きな咆哮をあげる。
「龍神様には手加減は要らないですよね。さぁ私の胸に!」
「ひぇっ...」
虹色の首輪をこちらに向けてくる彼女に私はドン引きしつつ、小さな金色の炎の槍を数百ほど召喚する。狙うはあの虹色の首輪。
「先程とは全く立場が逆転してますが、私は簡単にはやられませんから。」
向こうも対抗するかのように炎の槍やら水の槍やらつむじ風やらをたくさん召喚して放ってくる。地面から生えてきたあの黒いうねうねと追加で光るうねうねもある。その光るうねうねは他の魔法とは違って強いみたいで私の炎の槍を打ち消しながらこちらに向かってきている。
「まだまだっ!」
私は空高く舞い上がり、4枚の翼を大きく広げる。
───カァッッ!!!!
4枚の翼から放たれる強烈な光は光るうねうねの進行を阻み、ついには消し去った。光にはもっと強い光を。他の魔法諸共消し飛ばした光はエレメンタルドラゴンさんの顔を、辺り一帯を照らした。
「ぐぬ...龍神様...これさえ付ければ...!!」
大きな翼を広げて光に飛び込んでくる彼女。凄まじい速さで左手に持つ首輪を構えてこちらに向かってくる彼女を私は右手に召喚した巨大な天力刀で迎撃する。
「龍神様ァァァ
──────────────────
ァァァァァッッ...!!!」
たった一振。右腕を真横に一閃するだけでその首輪は、彼女は真っ二つになった。無表情のまま落ちていく彼女を金色の手を創り出して受け止めさせる。
「...呆気なかった、な。」
『...神の力というものはそんなもの。神と普通の魔物が対等に戦えるはずがない。』
「そっか...。」
エレメンタルドラゴンさんの断面は未だに金色の炎で焼かれ続けている。彼女をインベントリに回収した後、私は龍神状態を解除した。
「あっ...」
急激に力が抜け落ちる感覚がしたかと思えばいつの間にか私は地面に横たわっていた。起き上がるための力も湧いてでない。無理やり天力で補おうとするも上手く天力を操作できない。
えーっと...どうしよこれ。
ステータスを確認すると状態異常のところに色々と付与されている。強制的にレベルと全ステータスを1にするやつと...『状態異常:天獄の対価』...?なになに...?うわっ...現実世界で7日間全ステータス0.1倍って...《最期の煌めき》よりも酷いじゃん...あ、髪も真っ白になってるし...。
うつ伏せで寝転がりながらどうしようか考える。試練の塔の状態異常で全ステータス1にされて天獄の対価で今の私の全ステータスは0.1。もはや動くことすら困難である。これは...7日間何もできないのかな...
「ふみゅぅ......」
うつ伏せだからか、情けないため息が出てしまった。
───────────────
「...あや...私、そろそろ限界よ...。」
──キィィ...
「...お姉ちゃん大丈夫...」
「...。」
「には見えないね。」
妹である雪華を一瞥した涼香はそのまま無視してベッドに横たわる。普段涼香を狙っている雪華だが、このような姿を見てはさすがにアピールを中断せざるを得なかった。
「...あや...」
「...そんなに会いたいなら会いに行けばいいじゃん。」
「...でも...あやは家出したから...」
「彩お姉ちゃんが家出したってのは聞いたけどやっぱり信じられないなぁ...だってあの彩お姉ちゃんだよ?お姉ちゃんにいつも甘えてる子が家出なんてするかなぁ?」
「......。」
「彩お姉ちゃんが行きそうなとこ、メモに書いといたから落ち着いたら見てね。机の上に置いてあるから。」
──キィ...パタン...
「......。」
雪華の言う通りに涼香は零れそうな涙を引っ込めたあとに机へ向かう。そこには彩音の普段の行動範囲から家出した時に行きそうなところがたくさん書いてあった。そこにはルーナこと美月の家もある。
「あの子...改めて怖いわね...」
雪華の情報収集能力に驚きつつも、涼香はある1つの場所に目を付けた。
「刀堂さんがいる、山...?」
なぜかわからないが、涼香はここに彩音がいると思ったのだった。
○TIPS○
・龍神モード
自分が解除しない限りずっとこのモード。アヤネたん解除しなければこの先楽だったのにどうして解除しちゃったんだ...。
・涼香さん
迫り来るタイムリミット。彼女に捕まってしまえばナニとは言わないがぐちゅぐちゅのぐちゃぐちゃのとろっとろにされてしまうこと間違いナシ。ナニとは言わないが。
・アヤネたん
「くちゅんっ...な、なんか寒気がする...」
『...私は知らない。』
「ログアウトしたら大変なことになりそう...」
『......私は知らない。』
次回、アヤネ死す()。デュエ○スタンバイ!
 




