第657話 欠けた月明かりに照らされて
──スッ......
右手だけに全ての天力を纏わせて霊体化状態のChaos Swordを握る。これでようやく自由に動かせるレベルなのだからこの刀が重いことがよく分かる。霊体化状態でこれなのだから実体化させたならもう持てないほど重くなるだろう。
「ふぅ...」
防御は捨てる。攻撃こそ最大の防御という言葉がある通り、私はあの偽物達の攻撃を受ける前に斬り伏せる。幸い向こうは物理攻撃しかできないみたいで魔法攻撃はこれまでに一度も使ってこなかったから安心だ。...いやこの偽物たちが魔法攻撃なのかな?まぁいいや。
「...リーチはこちらの方が長い。」
状態異常のせいで右腕以外どこも動かない。立つだけで精一杯の体をなんとか支え、元より視界は真っ暗だけど目を閉じて音を聞く。ドクンドクンと激しい鼓動が忙しなく周囲を駆け巡っている。
「「グォォオオオオオッッ!!!」」
右斜め前、左...。
──スパパンッ!ズバンッッ!!
2体同時に襲いかかってきたが、それでもズレはある。僅かに早い方の脚を切断し、遅れた方の脚も切断する。そして体勢が崩れた2体の首を同時にはねた。
──ドクンドクンッドクンドクンドクンッ!
──ドクンドクンドクンドクンドクンッ!!
「「「...!!」」」
真後ろ斜め上、右、左斜め前...。
──ギギィィンッッ!ズババンッッ!!
今度は吠えずに飛び込んできた3体。後ろにいる相手の爪攻撃を逸らし、左斜め前にいる相手に誘導し、共倒れを狙う。その間に私は右から襲ってきた相手を斬り伏せた。
───ドクンッ!ドクンッ!!トクン...
──ドクンッドクンドクンッドクンッ!
「見えてきた。」
偽物の数が減り、本物の心音が聞こえてくる。痺れを切らして襲ってくるか、はたまた最後まで偽物をけしかけてくるか。
「...どっちでもいいけどね。」
───ズババババッッッ!!!
残り全ての偽物をけしかけてきたが、ほとんどは私が攻撃を逸らしたことによって共倒れしていく。...残るは貴方だけだよ。
「グルルルッッ...ッ!!!」
唸ったが、それでも冷静になって息を潜めてまた偽物達を召喚した。私の方はずっと頭を働かせてるから精神的に消耗してるだけだけど、向こうは召喚するたびに魔力を消費している。こうなればあとは粘ったもん勝ち。
『...もっと多くの芸を覚えさせれば良かったかも。』
『...そうなると私の方が困るんだけど...?』
スカーレットの独り言に呆れを込めた返事をして偽物達を両断していく。本物のシュバルツタイガーよりも動きが鈍いからほかの事を考えていても倒せるけど、いつ本物が襲ってくるか分からないから集中しなおす。
──ドクンドクンドクン...
───トクン...ドクンッドクンドクン...
──ドクンドクンドクン...ドグンッッ!!!
「...来る」
──《カオスチェンジ》──
──《刀堂流刀術・三日月》──
今出せる私のありったけを相手にぶつける。三日月は体調不良の時に使うと真価を発揮する。自身に降りかかる病魔のエネルギーを全て私の力に変換するのだ。...師匠曰く、「欠けた月は本領発揮できないお前と同じだと思え」との事。
今の私は状態異常漬け。これならば新月よりも大きなダメージを与えられるだろう。
「グォオオオオオオオオオッッッ!」
「はぁぁぁあああああああッッッ!」
ゆっくりと進む時間。刀から吹き出る黒いオーラが私を蝕もうとするが、それよりも速くシュバルツタイガーの首に刀が触れた。
───ズバンッッ...!!!
「グオォオ、オォォ......」
「かはっ...ぁぐ......」
《カオスチェンジ》してから1秒経ったので私の体力が蝕まれる。相手とほぼ同時に地面に倒れるが...
「わ、たしの、勝ち...へへ...」
『...しょうがないな。』
僅かに私の方が長く生きてたので私の勝ちなのである。勝ちったら勝ちである。え?もう戦いたくないだけだろって...?そりゃそうでしょ...
○TIPS○
・まだ出てない月
満月と半月ぐらいかな...?満月の効果はだいぶ前に思いついてるけど半月がなぁ...まぁいずれ出します。
・今回の無双
私の生命線の1つであるとあるスマホゲーで来年に実装されるキャラが発表されまして...。めちゃくちゃ私の性癖に突き刺さったのでそのキャラをイメージしながら書きました。書いてしまいました。ちょうど刀キャラだったしすごく書きやすかったです()
はぁー完凸させなきゃ...(使命感)




