第646話 階層破壊
「危なかったぁ...。」
ほっと一息ついて膝に手を当てる。もちろん周りの警戒を忘れない。先程の6つ首の巨大な魔物の攻撃は凄まじいものだった。あんなのに掠るどころか半径百メートル以内にいても今の私なら即死するレベルだろう。
「すぅ...はぁ......この階層はどんな魔物が──」
────ドゴオオオオオオオオオオオオンンッッ!!!!
「きゃぁっっ!?!!?」
突然の大きな揺れに思わず尻もちをついてしまう。目の前に突然巨大な光の柱が立ったのだ。それは地面から生えて空高く舞い上がり、消えていく。しばらくして目が冴えてきたので何があったのかを見てみると私の前には大きな穴が空いていた。
「...下の、階層...?」
巨大な穴の下には先程私がいた階層が。空から見るととてつもなく広いことが分かる。それにさっきの広範囲攻撃の跡がきっちり残っている。そして...
「っ!?なんで飛んでるのっ!?」
先程の6つ首の巨大な魔物が異形の翼を生やしてこちらに向かってきていたのだ。それを見た瞬間私は弾かれるように飛び上がり、その場から全速力で逃げる。ここで死んだら大変なことになる...そんな嫌な予感を胸に周りから追いかけてくる魔物を尽く無視する。
「はぁ...はぁっ...はぁっ...!」
────ドスゥゥゥゥンッッ...!
「...ふぅ...ここなら多分大丈夫...。」
大きめな木の裏に隠れ、息を整える。ここなら100メートル以上は離れてるしそう簡単には見つからないだろう。と、この時の私はそう思っていた。しかし先程無視した魔物達は一斉にこちらに向かってきている。つまり...
「っ!?」
心眼で捉えた夥しい量の魔物たち。それらはあの巨大な6つ首魔物を連れながらこちらに向かってきていた。
「やばいやばい...!」
相手から...特にあの6つ首魔物から見えないように木々に隠れながら急いでその場を離れる。ん...?なんかほかの魔物たちが横に逸れてる...?ってまさか...!!
「っ...!!!」
6つ首魔物のことを見てなかったから気づくのが遅れたが、今相手はあの光線攻撃をしようとしてるのだろう。あの6つ首魔物から逃げるように離れていたのを、回り込む形で逃げることで光線攻撃から離れたい。
「岩場があれば...!あったっ...!」
────ドガァァァァアアアンンッッッ!!!!
ザァァァッと流れる川の近くに大きな岩が。この後ろに入れば爆風から身を守ってくれるだろう。そう思って駆け寄った瞬間、私の視界が後ろから迫る真っ白な光に潰された。
「ひゃぁぁああっっっ!!?!?」
───ドボォォォォオンッッッ!!!
吹き飛ばされてそのまま川に落ちる私。勢いはこの川のお陰でなんとかなった。急いで川から這い出て近くの岩に身を寄せる。
「っはぁ......はぁぁ......」
あ、危なかった...。木々のお陰で爆風が抑えられていたのだろう、私は死ぬことなく吹き飛ばされることができた。あと、川がなければ地面に激突して死んでいたことだろう。なにせ視界が真っ白で何も見えないし聞こえなかったからね。心眼も心の目で見るとは言いつつも、その実耳から入る音からの情報から周囲の姿形を正確に捉えるものだから爆音で掻き消されてしまえばしっかりと脳内に地形を描くことができない。
「「「「「「グォオオオオオオオッッッ!!!!」」」」」」
「...嘘でしょ...。」
岩の裏に隠れていたら目の前に魔物達の群れが。6つ首魔物もその後ろにいる。私はどうやら囲まれてしまったみたいだ。
「...ははっ...」
魔物たち...ティラノヘルベロス達は口元に大きな光を溜め込んでいる。それらを発射されれば私は木っ端微塵となるだろう。こうなったらヤケだ。私は急いで立ち上がって大きく後ろにジャンプした。クルッと回って岩の頂点よりちょっと後ろ側を掴み、衝撃に備える。
────ギュゥィィイイイイイイイッッッッ!!!!!
───ドゴオオオオオオオオオオオオンンッッ!!!!
割とギリギリで避けたので光線は全て岩に直撃し、岩は破壊される。ちょうど壊れた破片の上に乗っていた私はそのまま衝撃波で岩ごと吹き飛ばされる。
「くっ......なんとか、なったかな...?」
私の体の2倍ほどある岩の破片を掴みながら宙を舞う私。これで物凄く距離を離せたはず。
「あとは滑空すれば大丈夫かな。」
なるべく離れるように天力を翼に込めて滑空する。今のSTRじゃ飛ぶことはできないが、天力を纏いさえすれば滑空までならできるのだ。
私はそのままこちらを睨みつけている6つ首魔物達から離れたのだった。
○TIPS○
・階層破壊する6つ首魔物
単純にやばい。ほかの魔物ならできないが、執着心の強いこの魔物ならではの成す技。
・岩に掴むアヤネたん
ゼル○の伝説B○TWのビタ□ジャンプをイメージしてもらえれば良いかと...。今回の場合、岩が不壊の物という訳でもなく普通に破壊されるのでどこに亀裂が入るか、どうやって岩が壊れて、どのようにして破片が散らばるかが予測不可能だったので完全に運ゲーでした。生きててよかったね...。




