第641話 こんな調子で大丈夫か?
息切れしながら無我夢中で走り、ようやく豪風を抜け出せた。ここまで来るのにもう3回死んでいる。まだ1階層目なのにこんな体たらくで大丈夫なのかな...?
「あ、階段!」
豪風を抜けてすぐの所に半透明で半球状のドームがあった。その中には先が途切れている上層へ行くための真っ白な階段があった。
───ぽわわんっ...
ドームに近づき、右手で触れてみると抵抗なく中に入れてしまった。
『──アヤネ』
───グォォオオオオオオッッッ!!!!!
「っ...ごめん。油断禁物だったね。」
階段に意識を奪われて周りの状況を確認していなかったけど、どうやら真ん中の頭が潰れたティラノヘルベロスが追ってきていたようだった。慌てて階段を登りかけ、ちらりと後ろを見るとティラノヘルベロスはドームに攻撃を弾かれている様子。
「...ここまで来れたら安全ってこと?」
『ん。じゃあ次は2階、がんばれ。』
「うん。」
未だに諦めずにドームを攻撃し続けるティラノヘルベロスを尻目に私は階段を登って次の階層へ向かった。
─────────
──ゴロゴロゴロ...ドゴォォオオンッッ!!!
「...今度は嵐かぁ...。」
階段の先では常に雷が落ちる音が鳴り響いており、これまた私のやる気を低下させた。とはいえ逃げることは許されないのでとりあえず階段を登りきる。
───ドッゴォォォォンッッ!!!
「がぁっ!!?!!?」
と、同時に私は雷に直撃し、即死した。
「...はぁぁぁぁぁ。」
思いっきりため息を吐く。今度は岩石じゃなくて雷が落ちる場所を予測しなきゃいけないのか...。
幸い察知能力と反射神経は何とかなってるからあとは体をついて行かせれば避けられるはず。天力を全身に纏わせて歩き出す。
──ゴロゴロ...ドゴォォオンッッ!!!!
「っ!よし...」
私の左足から僅か3センチ離れた所に雷が落ち、黒焦げになる。
───ドゴゴォォォンンッッ!!!!!
「ぐぅっ!!?!」
...また死んだ。まさかの2連落雷。今までのステータスならば問題なく避けれていたこの落雷だったけどまさかここまでキツいとは...。天力纏ってようやく避けられるかどうかっていうレベル。
『アヤネは無駄が多い。無駄を無くせばもっと動ける。』
そう言われても天力なんて私にとって馴染み深い物じゃないからなぁ...。でもそろそろ真面目に向き合わないとね...。
まず天力とは何か。魔力と対を成す存在って聞いてるけれど、私はその魔力すらもまともに扱えない。いや使えるんだけどすずみたいに自由自在という訳では無い。魔法やらのスキルに沿って使ってるだけだからイマイチよく分からないのだ。天力も同じ感じ。自分の体の至る所に纏うことと、球体として天力を体外で物質化させることぐらいしかできない。
『...そこまで出てるならもう行けるはず。』
「......。」
本当に?天力ってもっとできることがあるんじゃ?私が知らない使い方がもっと他にもあるんじゃないか?でも今の私じゃそんなこと思いつかないから今できることの延長線上で何ができるかを考えて、それを試してみよう。
...とまぁここまで思考が纏まったところでそろそろ現実に目を向けないとね...。
───ドゴォォオオンッッ!!!
「あぐっ...!?」
現在死亡回数23回。復活してから死ぬまでの時間で1番長く生きられたのはたった20秒弱。他はもう復活した瞬間即死とかばかりだった。
「私が今、できること...。」
とりあえず天力を放出して丸い形を目の前に創ってみる。それを操って頭の上に浮遊させておく。これで雷に当たったらどうなるかを見てみることにする。
───ドゴォオォオオオンッッ!!!!
「ぃっ...!?」
数歩歩くだけで真上から雷が落ちる。しかし、無駄ではなかった。死に際に見た天力球は弾かれるようにどこかに飛んで行ったのだ。
「つまり...支えれば盾になる...?」
今度は薄く伸ばして盾のように天力を形作ってみる。これを上に構えて歩いてみる。
───ドゴォォオオオオオオオンンッッ!!!!
「くぅっ...!い、生きてる...!」
───ドゴゴォォォンンッッ!!!!!
「あがぁっ!!?!?」
...薄くても多数の落雷には耐えられないみたい。
「んー...どうしよ...。」
受け止めるのが無理ならやっぱり逸らすしかない、か。そう思ってやってみたら案外何度でも逸らせた。だけど扱いにくい...。私は盾を使ったことがあんまりないから仕方がないと思う。
だから私は思い切って盾を落雷に耐えられるような分厚さの短刀にしてみた。これなら盾よりも視界が良好になって振り回しやすく、普段握ってることもあって扱いやすい。まぁでもその分受け流すのがめちゃくちゃ難しいけどね。
「すぅ......はぁ.........よし。」
────ドゴォォオオオオオオオンンッッ!!!
────ギィィイイイインンッッ!!
右腕しかないから力はいるけどそれでも最小限の力で受け流すことに成功する。これなら少し無理な動きもできそう。
『...相変わらず人間離れの動きする。』
「えへへ...」
『褒めてない。』
○TIPS○
・危なかった
書き終わった時間がちょうど17時だった...気づかなければオーバーしてたね。せふせふ...(今回は本当にセーフ)




