第639話 世界の中心
「うぇぇ...気持ち悪いよぅ...」
『あの魔物もアヤネのせいで気持ち悪くて吐いたからおあいこ。』
「...スカーレットはどっちの味方なの?」
『...私は私の味方。』
青い血が辺り一帯を青く染めている。私はその中心で目が覚め、口の中に入ってきていた血を吐き出す。スカーレット曰く私が胃を傷つけたせいでモグリュウグウノユーズが吐いちゃったらしい。そのせいか、おかげか、私は外に出ることができた。
「...うぅ...服も血で濡れたし洗って乾かさないとなぁ...」
とりあえず上だけ脱いでサラシ状態になる。普段なら絶対外じゃ脱がないけどこの大陸に他の人はいないらしいので遠慮なく脱がせてもらう。
「それで...水はどこにあるのかな...?」
血が乾くとめんどくさいことになるのでインベントリに入れることで濡れた状態を保つことにする。インベントリって時間が止まってるから便利だよね。
青黒くなった服をインベントリに放り込んだ後は宛もなく彷徨う。地図もないし、行き先である川や池などの水場もどこにあるのか分からないからね。
「そういえばあの魔物ってどこに行ったの?」
私をログアウト中に呑み込んだモグリュウグウノユーズ。私が目覚めた時にはもう周囲に彼の髭らしい白い木々の生えた森は無かったのだ。
『今は地中で療養中。回復したらまた出てくると思う。』
「なるほどねぇ...」
でも胃だけでも結構体力あったよね?そんなに療養するほどなのかな?あー斬った時に鑑定しとけば良かったかも...。
『アヤネ。』
「ん?なに?」
『見えてきた。アヤネに挑戦してほしい...最後の試練の塔。』
何も無かったはずの前方に突如として現れたのは今までに見てきた物よりも遥かに大きい試練の塔。外装は立派だが、何かの災害に巻き込まれたのかボロボロとなっていて、真っ白に染っていた。
『あそこがこの大陸の中心。アヤネ...私が創った試練の塔、制覇してみせて。』
「っ...分かった。」
ここに来て衝撃の事実が発覚した。まさかのスカーレットが試練の塔を創っていたなんて...。
『...?私が創ったのはここのだけ。他は他の奴が創った。』
「他の奴っていうのは七大罪の、ってこと?」
『ん。』
まじかぁ...どうやってできたのか気になってはいたけどそうかぁ...でも試練の塔って7つ以上あったよね?
『私がここしか創らなかっただけで他は複数創ってる奴もいた。私はめんどくさかったからここだけ。』
「へぇ...。なんで試練の塔を建てたの?」
『んー...なんでだろう。多分...世界を繋ぎ止める、ため?』
「...なんで疑問形なの?」
『何となく創らなきゃいけないと思ったから。それに理由を付けるとしたらそれってだけ。』
...とりあえず聞きたいことは聞けた。あとは踏破するだけ。
そうして私は試練の塔に入った。
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「...中は綺麗なんだね。」
『今までとどこも変わらない。あの扉を開けたら試練開始。』
「...よし。じゃあ開けるね。」
『頑張って。』
「うん。」
────キィィッ...
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《天下の試練の塔に挑戦者が現れました》
《特殊設定を確認──完了──》
《──プレイヤーネーム:アヤネ に状態異常:レベル低下(MAX)を付与──》
《──プレイヤーネーム:アヤネ に状態異常:ステータス低下(MAX)を付与──》
《アバター情報を記録中──記録しました──》
《環境設定──異常気象:天変地異 設定完了──》
《バトルシステム──全モード──》
《エネミー設定──データ収集中──》
《エネミー設定──完了──》
《レベル設定──計測中──》
《エネミーレベル設定──LV.1000に設定完了──》
《?????レベル設定──LV.2000に設定完了──》
《───》
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○TIPS○
・レベル低下(MAX)
自身のレベル-1を自身のレベルから引いたレベルになる。つまり強制レベル1スタート。
・ステータス低下(MAX)
上記に同じ。つまり強制全ステ1スタート。
・レベル1000
一般魔物の限界レベル。ほとんどの魔物の限界がここであり、レベル1000を超える魔物は特別な存在であるとされる。




