第638話 吐血
「とりあえず斬ってみようかな...。」
同じ箇所を滅多斬りにするというよりは一刀に全てを込める感じで行く。さっき見た高ステータスから分かる通り軽い攻撃だと弾かれるだろうからね。
「ふっ...!」
───ズパンッッッ!!!!
鞘から引き抜くと同時に真横に一閃。空気をも切断し、ソニックブームを起こしたその攻撃は見事に肉壁を削った。しかし、削っただけ。
「...穴開けるぐらいのつもりだったんだけどなぁ。」
『ふふん。私なら開けれる。』
「むっ...。」
思った以上に硬いこの胃。スカーレットのドヤ顔(幻視)も相まって色んな意味で負けた気がしてなんだかムカつく。というか見た目は柔らかいお肉のくせに斬れないのはおかしいと思うんだ。
「...分かった。本気で行くから。」
『お、おぉ...?頑張って?』
「うん。」
火がついてしまったら止められない。私は大穴を開けてここから脱出するんだ。
『...なんか穴を開けるのが目的になってるのは気のせい?』
「...《刀堂流刀術:人刀一体》」
私自身を刀と一体化させ、私自身の無駄な動きを無くし、刀の耐久を底上げする。そして体に内在する天力全てを右手と刀に纏わせる。
「《刀堂流刀術:天新月斬》ッ!!」
───スッッッ.........
両足を極限まで地面にめり込ませてからそれっぽい名前をその場で考えて刀を振り抜く。と言っても新月斬に天を付けただけなんだけどね。そして力任せの一撃だが物理攻撃が効かない訳じゃないのはさっきの攻撃で分かっているから有効な攻撃だろう。
もはや瞬間移動したかのように両手が左から右へと移動した。その数秒後、ようやく自身が斬られたことに気づいたのかグパッと大きな穴が空いた。
───ドパァァァッッ!!!!
それと同時に流れ込んでくる青い液体。これがこの魔物の血液なのだろうか?どうやら私は胃の血管を斬ってしまったようだ。目の前にいた私は当然その青い液体を頭から被ることになり、口に青い血が入ってしまった。
「ぺっぺっ...ぅぅ...まずぅぃ...。」
自分でも変な顔になってると自覚できるほど顔が歪む。血を少し飲み込んでじゃったから体調になにか変化はないかとステータスを見てみるけど特に何もなし。良かったぁ...。
「さて...こっからどうしよっか...。」
『...胃の壁を斬っただけだからまだまだ外は遠い。』
「うん...しかもここからはひたすら斬り進んでいくしかないんだよね...。」
空間があるこの胃とは違って体は肉や骨で詰まってる。胃の壁は何とか突破したけどこれだけでも大分体力を消耗した。ここから斬り進むとなるとリアルタイムで1ヶ月ぐらいかかりそう...どうしたものか。
『...というか口からは出ないの?』
「あ」
普通に考えれば分かることだった。ここは胃なのだから口まで繋がっている。口から外に出れるのになんで私はその事に思い至らなかったのか...はいそうです負けず嫌いのせいです...。
『...ポンコツ。』
「スカーレットに言われたくないもん。」
『な、なぜ...?私、ポンコツ、違う。アヤネ、ポンコツ、合ってる。』
「なんでカタコトなの...。」
そんな事よりも早く食道に繋がる穴を見つけないと...。
───ピチャンッピチャンッ!!
青い液体が広がる床をしばらく歩き、食道に繋がるであろう穴を探す。しかし、なかなか見つからない。
って、青い、液体...?さっきまで色なんて無かったはず...あ、でも私が斬った穴から流れ込んでくる血が混ざったからかな?
───ドグンッ!!
───ボゴボゴボゴボゴボゴッッ!!
「うわわっ!?きゅ、急にどうしたの!?」
『...耐えきれなかったか。』
急激に青い液体の水位が増して私の体が飲み込まれる。私は息を止めて口の中に血が流れ込んでこないようにした。
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「.........外?」
私は青い血と共にいつの間にか外で横たわっていた。
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現在23:57。まだ今日だからセーフ




