第633話 暴獄龍
「まずは拠点からかな。安地がなければ休めないもんね。」
スカーレットは一切手出しはしないって言っていた。だから私がログアウトしている間も大丈夫なように安全地帯を確保しなければいけない。
「となれば山の上とかがいいと思うんだけど...」
──ぱたぱたぱたぱた...
「体が重いんだよねぇ...」
重力が他の大陸とは違って倍増していると思うぐらい体が重い。翼に天力を纏えば飛べなくもないけれど今天力のリソースを翼に割いて守りが手薄な状態で空を飛べばきっと魔物達の格好の的になるだろう。
ひとまず山の麓まで歩いて行ってから考えよう。
とその時だった。
───グルォォオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!
私の体全体を震わせる咆哮。それが私の背後から聞こえてきた。その声の持ち主は全体として見れば全長10mを超えており、真っ白で大きな体と比べると更に大きい3つの頭を持っていて、両足は十分に大きいが両手は私の両手と同じぐらいの小ささである...恐竜?
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【名前】ティラノヘルベロス《RAIDBOSS》LV.1028 状態:正常
【弱点】?
【苦手属性】?
【説明】
──未確認生物のため詳細なデータがありま...|──
これの名前は『ティラノヘルベロス』。この世界が誕生した時からいた魔物の1種。今は魔力で体が変質してる。火属性は無効だから気をつけるべし。火属性攻撃を仕掛けてくるし物理攻撃はそこそこ強い。あ、あと物理攻撃はほとんど無効だからそこの所よろしく。強いて言うなら水属性が効くんじゃない?
HP:1255468/1255468
MP:1041179
STR:8078590
VIT:3385406
DEF:8421540
AGI:1007460
INT:984170
DEX:902148
MND:920496
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「STR800万もあるんですけど...」
それに物理攻撃ほとんど無効ってサラッと書いてあるけどめっちゃ重要だよね!?私の取り柄が潰されてるじゃん...。
「 グォォオオオオオオオ!!!!!! 」
3つの頭がそれぞれ伸びて私を喰らおうとする。でもスピードはあんまりない(AGI100万)から避けやすいといえば避けやすい。
とりあえず逃げながらどうやって倒すかを考える。足の速さは負けているけど、小回りのききやすさはこっちに軍杯が上がる。
そんな感じで走りながら方向を変えたりして攻撃を避けたり、敢えて岩に攻撃を当てさせて目眩しをしてみたけど中々距離が離れない。
───ガヂンッッ!!!!!
「っ!?」
あと少しで白い森に辿り着くと言ったところで左真横から歯がぶつかり合う音が聞こえてきた。同時にブシャッと私の左腕から血が吹き出し、腕が持っていかれる。
「ぅ、くぅっっ...!!」
───ドシャッッ...!
なんとか森まで逃げ込んだが、何かに躓いて転倒してしまう。恐竜の追撃を避けようと体を転がしたが、いつまで経っても追撃は無かった。
「......見失ってはない、よね。」
ジッと森の外からこちらを睨みつけてくる恐竜。真ん中の頭の口元は私の腕の血でベッタリだ。なんてどうでもいい事を思いつつ私は助かったのだと胸を撫で下ろした。...無いって言った人、すずに泣きついてやるんだから。
「はぁ....はぁ.........いつつ...。」
噛み切られた左腕にインベントリから出した回復薬を塗りたくって包帯を巻く。こうすることで継続ダメージを受けなくなるって少し前にすずに教わった。
「 グォォォオオオオオオオオオ!!!!! 」
森に木霊する恐竜の咆哮。白い木に隠れて様子を見ていると恐竜は来た道を戻って行った。
「...私生き残れるかな。」
思わずそう思ってしまう私であった。
○TIPS○
・詳細なデータ無し
前人未到のブラックアイ。そこにしか生息しない魔物の詳細なデータは存在するはずもなく。ではステータスに現れたのは誰だったのか。
・アヤネたん
物理無効と聞いて何も出来なかった子羊ちゃん。恐竜さんは攻撃掠っただけでも大ダメージをおうぐらい強いので下手に物理攻撃を試す訳にもいかず。かといって魔法を全く使ってこなかったアヤネたんがすぐに魔法を使えるかといえばそうでもない、と。あれ?倒せるビジョンが見えない...?
・ティラノヘルベロス
レイドボスって書いてあるけど、普通にこの大陸では雑魚枠。この大陸にめっちゃたくさん居る。まぁ物理特化と物理攻撃無効だけで頂点取れるほどこの大陸は甘くないってことですね。
つまり人類にはまだ早すぎる大陸。




