第629話 権能
───ゴォォオオオオオオオオッッッ!!!!
炎が燃え盛り、肉が焼ける臭いが漂う車内に足を踏み入れ、ユウト君を探す。私は焔属性の攻撃までは無効化できるから大丈夫だけどユウト君は違う。あと3人ぐらいユウト君と一緒に入っていた大人の人がいたけれど大丈夫だろうか。
──...ホッ...コホッ...!
「ユウト君っ!」
操縦席の方から入っても誰もいないと思ったら2列目の客車の扉前で倒れていた。確かに操縦席近くの扉は燃え移らないようにか金属製で熱くて触れないから仕方ないかもしれない。でも客車の内部は木造でより燃えやすくなってる。現に倒れているユウト君自身もその周りも火の海だ。
「ゴホッゴホッ...ぼ、僕は大、丈夫...プレイヤーだから...でも、ほ、かの人達、は...!」
そこでユウト君は光になって消えていった。さっきはユウト君しか見えていなかったが、座席の影に隠れて他の倒れている人達も発見した。そちらは息はあるものの意識がないみたい。扉を蹴り飛ばしてその人達を外で騒いでいる人達に受け渡し、他にもいないか探すと突然叫び声が聞こえてきた。
「ゥギャァァア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!!?!!?」
それは3列目の...本来人がいないはずの客車から聞こえてきた。そこに向かうと火だるまになって燃えるユウト君と同じぐらいの背丈の少年が泣き叫んでいた。
「ァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!!だずげ、いだい...ぉ...!!」
「っ...!」
慌ててその子を抱きとめてまとわりついている火をインベントリから出した水筒の水でなんとか消化を試みるが焼け石に水。
しかし、その子を抱えて車内から出ようとしたその瞬間まとわりついていた火がこの子に吸収されるかのように消えていった。
「なん、で...?」
「すぅ.........すぅ..........」
苦痛に悶えていた顔から穏やかな寝顔になった少年を抱え直して外に出る。この子を探していた母親らしき女性が熱気漂う車両近くまでやってくると号泣しながらありがとうと頭を下げた。
「いえこの子が無事で良かったです。」
「ぐすっ...ほ、本当に、ありがとうございます...!」
あとから聞いた話なんだけどこの子かくれんぼでこの機関車の中に忍び込んだらしいんだよね。この子と一緒にかくれんぼしていたお友達の1人が中に入るのを見てこの子のお母さんに伝えたのだとか。本当に無事でよかった。
...それにしてもなんで火が消えたんだろう...?
『貸し1つね。』
『.........それは分かったんだけど、アレってどうやったの?』
『私火なら操れるもん。あの火をあの子供の活力に変化させただけ。』
『...えぇ...?』
何を言っているんですかねこのスカーレットさんは...。あ、でも吸収された理由が分かった。でもどうやって操るのか見当もつかないかなぁ...。
「...っとここは目立つね...。」
少年のお母さんに受け渡したあとだからかなり注目されている。こういうの苦手だから早く帰ろう。...写真取られてるような気がするのは気の所為に違いない。
この時の私は少年を助けることに必死で機関車内全ての火が消え去っていたことに気が付かなかった。
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【号外】龍人娘アヤネ、少年を救い出す!
「ねぇあや。これはどういう事かしらね?」
「...やっぱり撮られてたんだねぇ...。」
「ねぇあや。私の目を見て?なんで火の海に飛び込むなんて危険な事したのかしら?ねぇ?」
「いやだって私焔属性の攻撃無効だか──」
「それとこれとは別だよ?もしリアルの方で混同しちゃって同じことしたら死んじゃうよ?」
「流石にそんなこと──」
「ルーナ。」
「...へ?」
「リアルで凛のことルーナって呼んだらしいわね?」
「...そ、そう、だったっけなぁ〜...?」
確かに昨日登校中に凛ちゃんの事を心の中でルーナさんって思っちゃったり、普通にルーナさんって言ったりしたような...
「ゲームと現実...混同しないでよ?」
「...分かった。」
「...おいで?」
「うん。」
なんか湿っぽくなっちゃった。手を広げたすずに抱きついて首筋に顔を埋める。
「お仕置ね」
「なんで!?」
○TIPS○
・号外新聞
アヤネちゃんが扉を蹴り飛ばす場面のカッコイイ写真がデカデカと載っている新聞。この新聞はコピーにコピーを重ね、なぜか全世界に広まったとか。
・お仕置
危険な事をしたお仕置。流石に連日エッ...なことは本編では書かないけどナニかと色々されたでしょうね。()
・投稿
私の中では17:46=17:00ですのでセーフ。




