第625話 こども
───羨ましくてたまらない?───
『 ...はい...。 』
───でも何もしない、と?───
『 はい。私は...誰も傷つけたくない、です...。 』
───ふぅん...?じゃあ黙って見てるだけなんだねぇ?───
『 ...。いえ...。 』
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「なにか聞こえますね?」
「お祭りか何かかしら?」
「なんのお祭りだろうねぇ?」
私たちはようやく次の街にたどり着いた。この街はニスリンドという街らしく、鍛治の国ダルニアと似た雰囲気を感じる。やっぱりというかお祭りの騒ぎに紛れて微かに金属を打つ音が聞こえてくる。
「...あやは鍛治に関係するものならお構い無しなのね...。」
「だって好きなんだもん...!」
「別に怒ってるとかそういうのじゃないわよ。そういう所も好きだからね。」
「っっ...!そ、そういうの、良くないと思う、ます...。」
「顔真っ赤よ?可愛い。ふふふ...」
「っ、だ、だからそういうのやめてってば!」
「ふふ...ごめんごめん。お詫びにこれあげるわ。」
「っ!お魚...!」
すずからお詫びとして皮に焦げ目がついた串焼き魚を貰った。かぶりつくとたくさんの脂が溢れてきて幸せいっぱい。うまい。うまうまうまぁ...。
「顔が蕩けちゃってるわね...。」
「あー...とりあえず私が抱きかかえますね。」
「...だっこしたいだけでしょ?」
「...そうです。」
「うまうま...。」
「あ、アヤネたんの蕩け顔カワユス...!」
「ふふ...それじゃあ入りましょうか。」
おさかなおいしい。
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「おや、観光客かい?こんな何も無い街に...いやもうすぐアレが始動するから良い所にきたね...と言うべきかな。」
「ん?何かあるんですか?」
「ふっふっふ...まだ内緒だってユウト少年が言ってたからね。まぁでも慌てなさんな。1週間後にカイツウシキ?ってのをやるみたいだからね。今日は前夜祭みたいな感じだね。お祭りは1週間やるからぜひ楽しんでいってね。」
「分かりました。ありがとうございます。」
「ううん。気をつけてねー?...そっちの魚食べてるお嬢ちゃんも。」
「んぇ?」
すずが門番さんと対応していると急に私が呼ばれた気がしたのでそっちを向くと門番さんが手をヒラヒラさせていた。反射的に手を振り返すとにこやかな笑みが更に深まって満面の笑みになった。
街に入ると外から聞いていた賑やかな声が更に大きく聞こえてくる。みんながみんなニコニコしていてとても楽しそう。
「あら?観光客の人達ですか?良かったらこれでうぞ!こちらのお嬢ちゃん達には飴ちゃんもあげちゃうわ!」
「わ〜いありがと〜。」
「あ、ありがとうございます?」
なぜか私とメルだけ飴ちゃんを貰った。今はお魚を食べているのであとでゆっくり味わうことにする。飴ちゃんの包み紙がピンク色だからイチゴ味だったりするのかな?
「良かったわねーあや。」
「...うん。」
なんで私たち2人だけなのか分からないけどまぁありがたいよね。
「すず、半分こする?」
「え...あ、あめ...を?」
「うん。」
「そそそそそそれって口移───」
───スパッッ...!!
「はいあーん。」
「...デスヨネー。」
すずが私の飴ちゃんを見つめていたので食べたいのかと思って刀で半分に分ける。もう片方は包み紙に戻して後で食べる。
「...美味しいわね。」
「何味だった?」
「んー...イチゴ味かと思ったけれど...何味かしら...?」
「えー...なにそれ...?」
どうやらイチゴ味に似た何からしい。
○TIPS○
・飴ちゃん
まぁ幼い子には飴をあげたくなっちゃうものだよね。
・半分こ
ナニを想像したのか分かりませんが飴ちゃんを刀で真っ二つにするのは当たり前ですよね。
 




