番外編 セレティシアとアヤネ
あーテストが大変すぎる...。
私たちはいつも一緒だった。遡れば生まれた日も生まれた病院も育った場所も隣人だったし今通ってる大学も一緒。生活のこととなれば双子の姉妹のように毎日遊び、食べて、寝て、勉強し、成績もいつも一緒。食べ物の好みも一緒で小さい時は2人して嫌いな食べ物が出たらイヤイヤって駄々こねたのを覚えている。さすがに姿は似ていなかったが、昔は声色や口調がほぼ同じだったため声だけ聞くと間違われる事も多かった。まぁ今はセレスが口調を変えてくれたおかげで差別化はできてるけどね。
そんな一心同体を体現する私たちが今年の春に出会ったのが『セカンダリア・オンライン』だった。
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『...アヤネさん、強かったね。』
『...そうね。ほんと恐ろしい子だわ。』
先程アメリカサーバーに帰ってきたばかりの私たちは配信を閉じずにアヤネとの対戦の反省会をする。
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・えー...なんなんですかねあの化け物さんは
・化け物以外になって呼べばいいのか
・あのセレティシアモードにマトモに渡り合える人...化け物がいたとは...
・いや怖すぎ...
・ただでさえこっちのサーバーじゃ渡り合える人なんて居ないというのに...
・負けず嫌いのシアちゃんだからなぁ...
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『化け物じゃなくてアヤネと言いなさいよ。それと私は負けず嫌いじゃないわ!ただ私より弱い人に負けたくないだけよ!』
『それを負けず嫌いというんですよシア...。』
アヤネの伸び代は凄まじいものだった。何せ初めは私に遠く及ばない反応速度だったのにも関わらず戦闘開始10分も立たず完全に模倣されてしまった。私が得意としていた死角からの無数の攻撃も目を閉じながら防いでしまったし、逆にやり返された。セレティシアになった後も数分間打ち合えるほど強かったし、何よりも《天秤》を使わされたことが問題だろう。
『僕もそう思うよ。《天秤》はこのサーバーじゃ使ったことなんて無かったのにね...。』
『そうね...。』
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・しかも前の動画見たけどドラゴンのレイドボスにもなれるみたいだしね
・まじか?だとしたらチートすぎるだろ...
・極秘入手した動画によると人型のレイドボスにもなれるみたいだぞ
・え、なにそれ知らない
・どっから入手したんだその動画...
・めっちゃカッコよかったぜ。まるで神様みたいだった...
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『ドラゴンのレイドボスならば見たことあるわね。見た感じだとSTRとAGIがずば抜けてるイメージね。そんな補正塗れの攻撃受けたら吹っ飛ばされるどころか一瞬でミンチね...。人型のレイドボス?気になるわね。』
『僕も気になるな。普通モードのアヤネさんでも対峙しててちょっと気が引けたのに...。』
『同感。なぜ使わなかったのかしら?それとも何か制約があるのかしら?』
『当然あるだろうね。強いスキルにはそれ相応の対価が必要だからね。...僕らの天秤も全ステータス半減な上に暫く使えないしね。』
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・神アヤネちゃん見てみたい
・どこで見れるんだ?
・さすがにアヤネちゃんの切り札だし言えないな。それにいつかまた戦う時の楽しみに取っておいてほしいんだ。
・まぁそうだろうな
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『ふふ...それでもいいわ。私もその時までに強くなるから。』
『...僕も一緒なの忘れないでよね?』
『もちろん分かってるわよ!一緒に強くなりましょうね!』
『うん!』
こちらは《天秤》まで持ち出して勝ったのに対してアヤネはあれでも本気を出していなかった。いやあの人型での本気は出していたけどもっと上がある。私たちももっと強くならなきゃね。
『そうと決まれば試練の塔に向かうわよ!』
『了解!』
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・頑張れー!
・応援してるぜ
・シアちゃん達が成長するのを見るのは楽しいな
・アヤネは神になる
・2人ともがんばって!
・また戦う日が楽しみだな!
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言わずもがな神アヤネたんは《最後の煌めき》を使った姿です。




