第600話 天秤の天使
本日は2話投稿です。前話を見ていない方は注意してください。
───ヒュォォオオオオオオオッッッ...!!
落ちていくセレティシアさんの体を受け止めるべく追いかける。あと少し、手が届くという所で何やら嫌な予感がしたので咄嗟に距離を取った。
───バァァァアアアンッ...!!!
距離を取ったと同時にセレティシアさんは翼を大きく広げた。それだけで暴風が吹き荒れて私は目を薄く閉じた。
『『...私は負けない。私は天秤の天使...。』』
「かっ...!?」
───グシャッ!!!
「は、ぁ...!」
私の胸から黒い何かが生えてくる。...いやこれは刀か...?もしやと思い、バッとセレティシアさんの方を見ると彼女の胸に穴など初めから空いていなかったかのようにピンピンしている。そして...
『『罪を背負いなさい。』』
──背後に見えていた天秤が右側に傾いていた。
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【名前】《天秤の天使》 消費MP:なし
【効果①(LV.1)】片割れの天使同士が合わさりあう事でとてつもない力を得ることができる。このスキルの発動条件は以下の3つ。
・魂の波長の一致
・思考回路の一致
・互いに危機を感じた時
【効果②(LV.1)】スキル:《天秤》を得る
LV.1:STR+30
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【名前】パッシブスキル:《天秤》 消費MP:なし
【効果①(LV.1)】自身の種族が天秤の天使であれば背後に大きな天秤を召喚する。
【天秤】
・破壊不可の浮遊オブジェクト
・右側に傾いている時:自身の受けたダメージの全てを敵対する相手に肩代わりさせる。
・左側に傾いている時:相手の受けたダメージの全てを自身が肩代わりする。
・釣り合っている時:自身の全ステータスが2倍
・傾けていられる時間とクールタイムは共に1分。
【効果②(LV.1)】戦闘後、天秤は崩壊し自身の全ステータスが半減する。
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「ぅ、なる、ほど...。」
『『アヤネ。貴女は私には勝てないのですよ。しかし...この天秤を傾ける日がくるとは思いませんでした。』』
「ゴホッ...!!」
肺に溜まった血を無理やり吐き出して刀を構える。短刀が折れてしまった以上Chaos Sword1本で戦わなければならない。体力はあと1000弱。胸からの出血や刀による継続ダメージによってそれはドンドン削られていく。
「はぁ...はぁ......。」
『『とても楽しかったですよ。こちらに来て良かったです。』』
「...てに...」
『『なんですか?』』
「勝手に、終わらせるなッ...!!」
───ヒュンッッ!!!
天力を全身に纏って特攻する。ちょうど天秤が傾けていられる時間を過ぎたためクールタイムの1分間は大丈夫なはず。...この1分で決める。
「ァァァァアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
『『っ!』』
──《刀堂流刀術・新月夜ノ次元連撃》──
朧月の上位互換技である新月。それを次元斬と組み合わせて無理やり発動させる。無数の次元の狭間から無数の不可視の刃が飛び出す。時が止まった今、セレティシアさんにこの攻撃を防ぐことは...
────ズガンッッッ!!!!
と、思っていたのにほぼ全ての攻撃を弾いた彼女はなぜか左腕を斬り取る攻撃のみを受けた。
「なっ...」
『『お返し。』』
──ズシャッ...!
もう1分経ったのか...。
残り僅かしか無かった体力も完全に無くなり、私の視界は暗くなった。
『『...楽しかったですよ。久しぶりに楽しめました。』』
その場に残ったセレティシアは落ちていくアヤネを見て薄らと笑みを浮かべたのだった。
大逆転...。言わば負けイベというやつですね。最強の反応速度と察知能力を持ったセレティシアさん。その上受けたダメージを1分毎に全て反射できる天秤を持っているというチート仕様。そりゃアメリカサーバー代表にもなりますわ。とはいえアヤネたんもただで負けた訳じゃありません。セレティシアさんの反応速度と察知能力を理解してさらに強くなりました。次に戦う時はもう少し余裕を持って戦える事でしょう。
...ちなみにこの《天秤》スキルはいずれ登場するアヤネたんの最後の刀への対抗として出しました。あ、龍神の秘剣じゃないです。(ネタバレ)




