第597話 戦闘!S
私たちがレッドストーンゴーレムを倒し回っていると突然襲われた。美しく腰まで流れるような金髪に少しの黒メッシュ。そして貫くような視線を向けてくる蒼い目。極めつけには頭に浮かぶ光の輪っかに右側にしかない真っ白な翼が生えている。
彼女の名はレティシア。私の反応速度を大きく超える速さを持った女の子との出会いはそんなものだった。
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『さぁもう集まったわよね!?』
「...まぁはい。」
レッドストーンゴーレムの素材を一緒に集めてもらう代わりに戦うこととなってしまった。私としては全ステータスが半減しているためこの体での本気を出せないことに少しだけ残念に思っているがレティシアさんはそれでも戦いたいらしい。
「...ごめんね?先戻ってて。」
「いえ!私たちも見学させていただきます!大丈夫です。私たちも強いですから!」
「...分かった。気をつけてね?」
「はい!」
アリス達には少し離れてもらい、レティシアさんと対峙する。さっきの一瞬だけの打ち合いで分かった事だけど、レティシアさんも超人だ。
昔、1回だけ超人の人と打ち合った事がある。...いや杏子さんじゃないよ?杏子さんが紹介してくれた超人でその人は『反応速度の超人』って言われていた。反応速度に関して言えばその人の右に出る者はいないと言われるほど圧倒的だった。
そんな感覚を彼女からも感じるのだ。
『...?どうしたの?そんなに笑って。』
『...いえ、楽しくなりそうだな、と。』
『ふふっ...そうね。この為に遥々来たのだから...。』
反応速度の超人...彼女もきっとそうだろう。だからこそ楽しみなのだ。理解し得なかったその反応速度...今度こそ理解してみせる。
『───私も楽しませてッ...!』
『───望むところッ...!』
───ズガァァァァァァァァンッッッ!!!!
空中から勢いよく振り下ろされる彼女に相応しい美しい剣。...なるほど。やっぱり速いね。でも...
『速いだけッ!』
『っ!?』
実体化させて攻撃を受け止めた刀を素早くぬるりと動かして彼女の首筋に傷を付ける。...もっと深くまで斬りたかったが、流石の反応速度。
『お返し。』
『ふふっ...やってくれたわね。』
彼女の反応速度は流石のものだった。だけど逆に言えばそれだけ。剣を振る技術はあまりないように見受けられる。...ならばそこに勝機はあるはず。
『貴女は翼があるのに飛ばないのかしら?』
『飛ぶことまで意識を割いていられないですから。』
...まぁつまるところレティシアさんが強すぎて慣れない飛行をしながら戦うなんて無理なのだ。だからこちらはなるべく動かず、受け身で立ち向かう。それと、恐らく向こうはもう攻撃を受けないだろう。頭が悪い訳でもないから戦い方も変えてくるだろうからね。
『私の反応速度に着いてこられるかしら!《天撃》』
「っ...!!」
───ジュバババババッッバババッッ!!!
無数の攻撃が全て私の死角から飛んでくる。いやぁ...反応速度が良いだけって言ったけどやっぱりそれでも十分だね...。レティシアさんはずっと私と目を合してきてる。私の目の動きから次に攻撃する場所を決めている。だから全部死角になる。
それらの攻撃を刀をメインに手を使ったりして逸らしていく。え?なんで防げてるのかって?そりゃ...心眼で見えてるからね。
『っ...急に目を閉じて舐めプのつもりかしら...?』
『れっきとした作戦です。──私に死角なんて存在しない。』
『い、良いわ...そっちがその気なら私にだって考えがあるんだから!』
頬をぷっくりと膨らませて指をさすレティシアさん。子供っぽい仕草が可愛らしいけど今は敵同士。油断はしない。
『《現影・天舞》』
ふわりと踊るレティシアさん。そんな彼女の存在がブレて1つ、また1つと増えていく。うーん...心眼で見ても全部本物に見える。かと言って素早く行き来している訳でもない。幻影ならぬ現影、ね...。
『『『『全て本物よ。さぁ神の鉄槌を!』』』』
ほんとすごいねレティシアさんは...。いったいどうやってそのスキルを身につけたのやら...。
私は若干レティシアさんの凄さに呆れながら刀を構えた。
アヤネたんは反応速度こそレティシアちゃんに劣りますがその分を技術でカバー。レティシアちゃんは技術こそアヤネたんより格段に劣りますが反応速度によるゴリ押しでカバーしているといった感じです。
まぁ普通に考えてリアルでは剣を振らないレティシアちゃんに技術がないのは当たり前と言えばそうですよね...。アヤネたんの周囲環境が異常なだけです()




