第595話 テキパキウゴコウ
そんな訳で私たちは街の人に歓迎(?)されながら街に入った。街はやっぱりというか赤い建材しかないから赤く、出歩く人があまりいなかった。
「人あんまりいないね...。」
「防壁工事で出払ってるのかしらね?」
「なるほど...被害はさっきの場所だけじゃ無さそうですね...。」
「私たちも手伝ウ?」
「それもいいかもね〜。」
手伝うとはいえ、何をしたら良いのか分からない。とりあえず宿だけ取ってまたさっきの防壁のところに行ってみよう。
「じゃあモネちゃんは私と行きましょうか。」
「分かりました!」
「行ってらっしゃいすず、モネちゃん。」
すず達と手を振って別れて、私たちはさっきの場所に向かう。
「あれ?戻ってきた?」
「どうしたのアヤネたん?」
「スズカちゃんが居ないみたいだけど...」
「あの、私たちも手伝いたいんですけ──」
「「「「「来たァァァァァっっ!!!」」」」」
「戻ってきたところで予想はしてたがまさか来るとは!!」
「うぉおお目の保養じゃぁぁぁっっ!!」
「ひぇっ...。」
「あ、アヤネ大丈夫ですか...?」
「なんだか一種の狂気を感じますね。」
─────
「っとすまない。実はな...」
あの後荒ぶる人達が我に返ってリーダーさんらしき人がにこやかにやって来た。その人曰く防壁の建材が足りていないらしい。防壁に使われている素材はレッドストーンゴーレムから取れる赤い石らしく今たくさんのプレイヤー達がレッドストーンゴーレムが生息する火山に挑戦してるんだけど進捗が芳しくないらしい。
「イベントで優勝した強いアヤネたん達が手伝ってくれたら...って君たちが来た時から思ってたんだ。」
「そうだったんですね...分かりました。火山ってあの山でいいんですか?」
「あぁ、あの馬鹿でけぇ山だな。中腹あたりにたくさんいるから頼んだぞ。」
「分かりました。」
フレンドチャットですずに火山に行くと送ってから私たちは出発した。アリス達には悪いなぁと思ってたんだけどなんかみんな私よりやる気満々だからホッとした。
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マグマ溜りが多いので蛇行しながら進んでいく。もうすぐ山の麓に着くというところで目の前に大きな魔物が現れた。あれは...赤いワニ?
「ふふふ...私の天海魔法が火を...いえ、水を吹きます...!」
「お嬢様...程々にお願いします...。」
「私の魔法で粉微塵にしてやる〜!」
「メルも落ち着いテ。」
───ジャリッ...ドパンッッ!!
「!」
───ドスッッ!!
「ギャッ!?」
少し離れたところから微かに聞こえてきた何者かが地面を踏みしめる音。それから一瞬も立たず音を切り裂きながら飛んできた何かを手刀で地面に叩きつけた。
「...ちっちゃいワニだ。」
目の前の大きなワニに気を取られて危なかったが奇襲は防いだ。気絶している小さなワニの首を斬ってからインベントリにしまう。音よりも速いワニが気絶から起き上がったら脅威となるのは間違いない。危険な種は1つずつ摘んで行くべきだ。
「グルルルッッ...アガァァ...」
「危ないッ!!」
「《ヘブンリー・プロテクション》!」
───パァァァァァッッ!!!
───ズガガガガァァァァァァァンッッッッ!!!
光のカーテンがアリスの目の前に現れる。その直後巨大なワニの口から地面を捲り上げる大きな光線が放出された。
───バヂヂッッバヂッバヂヂヂヂッッッ!!!
光のカーテンと赤い光線がぶつかり合って激しい火花を散らす。光のカーテンは全くビクともせず光線を受けきった。
「やっぱりこの魔法凄いですね...。」
「お嬢様...もしその魔法が破られていたらどうするつもりだったんですか...!」
「大丈夫よアンナ。いつでも避ける準備はできていたわ!」
「もう...そういう事ではなくてですね...はぁ...。」
「あはは...アンナさんも大変ですね...。」
「アヤネさんも大概ですけどね?」
「.......なんの事やら。」
何故かこっちにまで飛び火したので素知らぬフリして歩く。さーてレッドストーンゴーレムはドコカナー。
常日頃《天海魔法》の練習をしているアリスちゃん...もう誰も手を出せないんじゃ...?ちなみに今の《天海魔法》のレベルは22です。早スンギ。




