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第590話 邪道




刀が凍ってしまって使えないため、短刀で代用する。今度は氷魔法が付与されている鏃を弾かないように注意して戦うことにする。



───ヒュヒュヒュヒュッッ!!!



まるで私を追尾するかのように、というか実際追尾しているだろう矢の鏃より後ろ...()の部分を短刀の側面で弾いてその勢いを地面に向ける。



「むんッ!!!」

「ふぅッ...!」



先程よりも一層集中し、大剣による連撃を短刀で捌く。私の短刀はChaos Swordよりも耐久が断然低いので相手の剣と打ち合わせるだけで折れてしまうことは容易に想像できる。だから全ての攻撃を逸らす方向にシフトしたのだ。



「ウ、ォオオオアアアアア!!!!!」

「ふん、ぬぅぅぅうっっっ!!!!」



私の頬に当たる小さな風。今の私はSTRが半減しているから表吽のものとほぼ同じだ。と言っても5万ぐらいこっちが上なんだけど。それでもSTRが近しい相手の攻撃を受けるのは中々厳しいものがある。


剣の風圧が凄まじいし、時折私にとって嫌な場所に飛んでくる矢を鏃に触れないように弾く又は破壊するのは脳のリソースを大きく割いてくる。



「まだまだぁぁぁあッッ!!!!」

「望むところッ!!」



───キキキンッキキキキキィィィンッッッ!!!



───ギャィィィンッッ!!!!



押されているのは私。この刀で打ち合って押し返すのは無理。徐々に後ろに押されていって、いつの間にか背後にあった木に背中を押し付けた。



「死ねぇぇぇッッ!!!」

「は、ぁっっ!!」



───ズガァァンッッ!!!



私が晒した一瞬の隙を突いた大きな横薙ぎをしゃがむ事で避けて真上に来た大剣に掌を打ち合わせる。大きく仰け反った表吽の頭目掛けて、真後ろで倒れかかっている木を掴んで思いっきりぶつけた。


───ドゴオォオオオオオンッッ!!!!



「はぁ...はぁ......。」



あと一人。そう思って裏阿を探そうとした、その瞬間...



──ガシッ...!!


「なっ──!?」

「我らは二人で1つ。故に1人が死んだ所で何度でも甦る。」

「なにそ、ぐぇっ!?」



頭を潰したはずの表吽がなぜか五体満足の姿で横たわっており、その手は私の足を握っていた。そのまま彼は私をハンマー投げのように振り回して近くの木にぶつけた。



「ぁ、ぐ...。」

「これが表裏の試練。我らを倒したくば2()()()()()倒せ。」

「はは、は...。」



なにそれ。どちらか片方だけ倒しても無限に復活してくるってこと?なんか...今までよりも難しくないですかね。裏阿なんか心眼で見つけるのがようやくなのに...。



「さぁ...武器を握れ。何度でも相手をしようじゃないか。」

「...。」



...なんだか、むかつく。すっごい、むかつく。でも攻略法が何も思いつかない。このむかつく顔をしている表吽を倒すには...



「..........。」

「どうした挑戦者よ。」

「...心を...折る?」

「っ...!?」



師匠や杏子さんから教わった、『相手が不死身な場合の戦闘方法』。不死身の敵なんて現実世界ではいないだろうと聞いてみたんだけど、実際に第二次世界大戦では敵国に居たみたい。その人は不死身な体質を持つ超人で杏子さんと打ち合ったのだとか。その時杏子さんがやったのが私が今からやる戦闘方法だ。



「...がッ!?」

「...。」


なぜか怯んだ相手の隙を突いて無言で距離を詰めて首を掴む。私の背が低いから飛ぶことで相手の足を地面から離れさせる。


──ミシミシ...ギチッ...


「カヒュッ...!」

「...。」


死なない程度に首を締めあげて無言無表情で見つめる。杏子さんはこの無言かつ無表情で見つめる工程が大事だと言っていた。何故かは知らない。...うーん...この戦法は私には合わないな...。できるけどやりたくない...。



───ヒュンヒュヒュヒュンッ!!


「ガ、ァァァッ...!!?」

「...。」



慌てているのか、標準がブレッブレで中途半端に速い矢を表吽を盾にすることで防ぐ。これぐらいじゃ表吽は死なないだろう。

締めている首に更に力を入れて表吽が魔法発動させようとしていたのを阻止する。



「ぁ、ぃっ...!」

「...。」

「だ、だずげ...ガァァァッ!?!」

「...。」


「卑怯者めが...!」



裏阿が吹雪に紛れながら苦言を呈すが、これも作戦の1つなのだからしょうがないでしょう?私も悪いと思ってるけどこれは殺し合いだ。人を殺すのは苦手だけどやれない訳じゃない。



「はぁッッ!!!」

「っ...!」



遠距離のアドバンテージを捨てて、無理やり表吽を助け出そうと距離を詰めてきた裏阿。2つの弓だけしか持っていないと思ったけど腰にナイフがあったようでそれを逆手に持って襲ってきた。



「シィッ!!」

「よっ...と。」



ナイフの切っ先には毒が塗られているみたいでテカテカと光っている。それに当たらないように突き出された手を掴んで捻り、落とされたナイフを踏みつけた。


「ハァッッ!!!」

「ぐべぁっ!?」



手首を掴んだまま肘で顎を打ち付けて仰け反らせる。そこに苦悶の顔を浮かべている表吽を投げつけてから短刀を構えた。



2人がぶつかって重なり...




────ズバンッッ!!




アヤネたんにとっての邪道。『無言無表情で相手を常に見つめ苦しめ続けて相手の心を折らせる』というできれば使いたくない戦法。とはいえ今回完璧にできた訳でもなく...。


ちなみに杏子さんもこの戦法を嫌っています。え?なぜかって?そりゃ不死身なら刀のサンドバッグにしたいと思っ───




次回は表吽視点の番外編です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 首絞めて無力化できたなら打ち合わずに片方の首掴んだ状態でもう一人追いかければよかったんじゃ?
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