第587話 アカゴ
────......
「「「「「...。」」」」」
「...。」
音もなく現れたのは先程の女性よりも2倍ほどの背丈を持った人達。さっきの人はもしかしたらまだ子供だった可能性がある。...私より大きかったけど。大きかったけど!
私の4倍ほど背の高い人達に囲まれている。前衛には大剣を片手剣のように装備している男性が、後衛には私の知っている大きな弓よりも遥かに大きい弓をキリキリとこちらに向けて構えている女性達がいる。
「ヨクモ、ワレラガ、ムスメヲ...。」
「やっぱり...。」
予想が当たっていた。きっとさっきの女性はこの人たちからはぐれてしまった人だったのだろう。色々と大きい女性だったが、足音を立てないような歩き方もまだできてなかったみたいだしね...。そこを私が倒してしまったと...。
あー...ただでさえ人に近くて倒すのに躊躇うぐらいなのに会話もできるとなるとなぁ...。プレイヤーならまだ復活するから大丈夫なんだけど。
───ギュゥゥンッッ!!
飛んできた巨大な矢を側面に刀の柄を当てることで逸らし、私は1番前にいた周りと違い、一回り大きい男性に飛びかかった。
「ウガァァァァァッッッ!!!!」
「はぁぁッッ!!!」
───ガギィィィンッッ!!
「ナッ!?」
「せいッ!!」
───ドゴォォォンッッ!!
「シィッ!!」
──ギュォォォッッ!!
真正面から大剣と打ち合って、STRのごり押しにより向こうの大剣を弾いた。驚く相手の無防備なお腹に蹴りを入れて、飛ばされた相手の影を縫うように飛んできた矢を尻尾で掴んだ。
──バキッ!
拾われて使われないように尻尾に力を入れることで矢を折り、無造作に捨てる。まだ反転する体に違和感はあるが、攻撃する時と攻撃を避ける時以外は特に気にしなくても良くなった。
「オマエ...アカゴのクセニ、ヤルナ...。」
「バカにしてます?」
一瞬私のことをバカにしているのかと思ったが、確かにさっきの女性が子供だと言うのならば私の背丈だと赤ちゃんと思われても仕方ないのかもしれない。きっとすずがここに居ても赤子だと言われるだろう。きっとそうに違いない。
「イヤ、ニンゲンニシテモ、アカゴジャナイノカ...?」
「は?」
───ドゴォォォォオオオッッッ!!!!
「ゴハァァッ!?!」
認知されないほどの速さで距離を詰めて下から顎に蹴りを入れる。やっぱりバカにしてるじゃないか。私は赤ちゃんじゃない!...いや幼女でもないから!
「「「「「...。」」」」」
なんだか弓を向けてきていた女性達の目がすんごい暖かいんだけど...。なんで私を微笑ましい目で見てるわけ...?私貴方達の娘を殺した人なんだけど...??
「っ...っ......。」
私は逃げた。いや、これは戦略的撤退だ。あんな目をされたら私が駄々こねてるみたいじゃんか...。いやまぁ私も娘さんを殺してしまったから悪かったと思うけども...。
一応敢えて背中を晒しながら逃げてみたけど、やはりと言うか矢は飛んでこなかった。飛んできたのは生暖かい目のみだった。解せない。
「あ、階段...。」
私がこの地に降り立って向いていた方向とは真逆の方に進むとすぐに階段が見つかった。雪に溶け込むような真っ白な階段を滑らないようにゆっくり登るとそこには...
「またもや真っ白な景色が...。」
さっきとほぼほぼ変わらない銀世界がそこには広がっていた。魔物...は近くにいないみたいだね。
「うん...体も問題ないね...。」
さっきの逃ぼ...戦略的撤退により、走ることにも慣れた。不意打ちされても多分反応できるだろう。
(身長は)大きかったけど。(胸も)大きかったけど!




