第584話 やり過ぎ
──スズカside
「あやが消えた!?」
「そ、そうみたいですね...。」
「御二方落ち着いて下さいませ。きっとアヤネさんなら大丈夫です。」
「そ、れは分かってるけど...。」
やはり心配は心配なのだ。しかもあやだけっていうのがね。どっかの女狐に捕まってないかしら...。
「アイレーンさんって前にアヤネを妹にしたいって仰っていた方ですよね...?」
「そうね...まさか」
「アヤネを連れ去ったのはアイレーンってこと〜?」
「そうなりますね。」
まだ早とちりは良くない。しかし、それ以外にここであやが連れ去られる理由が思い浮かばない。
「そうと決まればこの城を攻略するしかないわね。」
「はい。」
あやを連れ去った女狐は今や私たちの敵。なればここはボスがいるダンジョンそのもの。心してかからなければいけない。それにあやが私たちの為に造ってくれた武器でどこまで行けるのかというのも目的に入っている。
「...見た感じ前のお城と少し構造が違いますね。」
「そうね。」
「前のお城が分からないのですがこの石?の材質はすごいですね...並の金属よりも硬いですよ。」
「そうなの?前に崩壊してからそんなに経ってないはずなのに建てるのが早いわね...。」
あやもといスカーレットが本気を出して壊した氷の城よりもより強固な素材で建て直されたこの黒い城。まだ一月ぐらいしか経ってないのに建てるのが早い。流石はアイレーンと言ったところか。
「ん〜?」
「どうかしたのメル?」
「なんか〜...歪んでる〜?」
メルの言われた通りに目の前の景色をよく見てみる。何が歪んでるのか最初はよく分からなかったが、目を凝らして見てみると空間そのものが歪んでいることに気づいた。これは恐らく魔法でこのお城を迷宮にしたと見ていいかもしれない。看破魔法とか持っていれば良かったのだけど生憎持っていない。
「《シーウェーブ》」
───ギギギ...ザザァァンッ...パキッ...!
アリスが魔法を唱えると何かが軋む音と共に波の音が周囲に流れる。すると目の前の空間にヒビが入った。
「シリウスの天海魔法を試してみたのですがやはりすごいです...。」
「これが天海魔法なの?」
「そうですね。今やったのは海の波を空間の波にぶつけて空間に掛けられている魔法を崩壊させるものみたいです。」
「なるほど...?」
そんなことができるのかとも思ったけどゲームだから今更ね。何はともあれ長い通路の左側に隠されていた扉が姿を現したので早速そこに入ってみることにする。...もちろん小型のシールドを張って。
「...あら?もう破れちゃったの?速かったわねぇ。」
「んぁっ...ぁ...。」
「もうちょっと妹と遊べると思ったのに。」
扉の奥には白髪になったあやとあやを後ろから抱きしめてあやの体をまさぐっている敵の姿があった。
「...あやを離してもらえるかしら?」
「ふふふ...今はスカーレットちゃんだからそんなに怒らな──♡」
「──《サンダー・レイ》」
「おっと」
──バヂュッッッッ!!
「今のは中々ね。」
「っ...。」
アイレーンは私の雷光線攻撃を手を振り払うだけで凌いだ。単体攻撃魔法の中で最大級の魔法のはずなんだけどね...。こうなってくると地雷をばら蒔いてから吸収して攻撃しないといけないが、そんなことを敵が悠長にさせてくれるはずもない。
「《マリンブレス》!」
「《フリーズスペル》」
───ピシッ...!
「《バーンスラッシュ》!!」
「《フロストブレード》」
───ガキィィィンッッ!!
続くアリスの天海魔法もアンナさんの焔魔法を剣に纏った攻撃も難なく防がれてしまう。が...
「《サンダー・ストライク》」
「っ...」
────ズドォォォオオオオオオオオオンンッッ!!!
2人が稼いでくれた少しの時間を使って《サンダー・マイン》を周囲にばら撒き、それを吸収させてアイレーンの顔側面から攻撃を放つ。
「...中々やるじゃな──。」
「スネークブレード!」
「あっ!?」
防がれると分かっていたが、さらにその隙を突いてアイリスが剣を伸ばしてあやに巻き付けて奪還する。これで思う存分魔法をぶっぱなせる。
「[サンダーブラスト]」
「《シエル・メール》」
屋内で決して使うべきじゃない攻撃魔法。巨大な台風が横向きにアイレーンを襲う。アイレーンは氷の盾でなんとか防ぎきったようだが、それを一筋の線が崩壊させた。きっとアリスの魔法だろう。
「あ、あら?あらあらあら?」
「《テンペスト》〜!」
最上級魔法のオンパレード。流石のアイレーンでもこれには...
「《スペースドライ》...ふぅ危なかった。貴女達中々強くなったみたいね。認めるわ。私の負けよ。」
「「「はぁ?」」」
皆と声が被ってしまう。無傷の奴が何を言っていると言いたい。私たちの魔法が届く前にそれら全てが凍ったように静止する。どことなく雷が通らなくなるアリアちゃんの氷魔法の吹雪を彷彿とさせた。
「ふぅ...いい運動になったわね!」
「「「「「...。」」」」」
「あら?やり過ぎちゃったかしら...?」
...少なくともそれで納得する人はいないと思う。




