第573話 虹
学校から帰って、やるべき事をしたあとにログインした私は昨日すずに案内された部屋を見渡す。ベッドとか棚ぐらいしかない部屋だけど、ベッドにすずが寝ているだけでとても華やかな雰囲気を醸し出している。
「...。」
今日はちょっと早くログインしたからすずはまだ眠っている。すずの頬を一撫でしてベッドから出る。今日も鍛治師ギルドに用事があるから1人で行こうかなって思ってるんだけど、生憎なことにこの家から鍛治師ギルドまでの道のりを覚えていない。
「あれ?アヤネじゃん。起きてたの〜?」
「あ、メル。メルこそ起きてたの?」
「うん。アイリス弄ってたら寝ちゃってさ〜。」
「あはは...程々にね...。」
「それでアヤネはどうしたの〜?」
「今日はちょっと早くログイン...起きちゃって。これから鍛治師ギルドに行くところなんだ〜。」
「そっか〜!私もついて行ってもいい〜?」
「いいよ!あ、でも私道わかんない...。」
「地図はあるの〜?」
「うん。すずからもらったやつがあるよ?」
「見せてー?」
「うん。」
「...よし!出発!」
「え、もう分かったの!?」
「ん?地図があるんだから簡単じゃん?」
「...。」
グサッときた。こう...心臓にナイフが深々と突き刺さったような...。
メルに手を繋がれて案内される。メルは出発してから一度も地図を見ておらず、ずっとニコニコしながら鼻歌交じりに歩いている。でもその足取りに迷いはなく、あっという間に鍛治師ギルドまで来ることができた。
「すごい...。」
「なにが〜?」
「いや...なんでもない。じゃあ入ろっか。」
「うん!」
「ロイルさんお邪魔します。」
「お邪魔しま〜す!」
「おう。また来たのか。...今日はどんなもん造ってくれるんだ...。」
「?」
ロイルさんに挨拶をして昨日使っていた鍛治場に向かう。今日は昨日と比べて人が多いように感じる。それに伴ってこちらに向く視線の数も増えている。
「そういえばメルって猫耳付けてたけどあれどうしたの?」
「ん〜?あぁ、あれは今アイリスの頭の上にあるよ〜?」
「そ、そっか...。」
「うん!猫耳付けてるとアイリスが撫でてくれるんだけど、私もアイリスを撫でたいからね〜。」
「なるほど...?」
メルと話しながら準備を済ませてインベントリを開く。今日造る...というか改造するのはすずの杖だ。私が前に造ったすずの杖『八色の豊獄杖』はゲイザアイアン魔合金をベースに、ヘルウルフキングの素材を使った黒杖。今まで耐久値の回復とかしかしてなかったんだけど、今日は改造させてもらう。
「素材は何を使うの〜?」
「やっぱりこれかな。」
取り出したるはサンダルフォンスパルオンクイーンの足の刃。それととある臓器。この臓器は鑑定すると『魔雷の貯蓄袋』と出てくる。これを使えばすずの雷魔法が強化されるんじゃないかなって思って使ってみることにした。
杖に付いている宝玉を取り外し、杖の本体を燃やす。同時に足の刃も燃やし、杖と馴染ませていく。
───カァァァンッ!!カァァンッ!カァァァンッ!!
───カァァァンッカァァァンッカァァァンッ!!
折り返して打って、折り返して打って...私の手は龍人の手になっているから熱は感じない。自分で吐いた焔も無効化されるので便利なことこの上ない。
焔龍人である特性を活かして造り上げた杖には虹色の宝玉とサンダルフォンスパルオンクイーンの内臓、そして余っていた天魔石の欠片を《錬金術》で合成した物を《錬金鍛治》で取り付ける。
「名前はどうしようかなぁ...」
「んー?スズカはアヤネのことが大好きだからアヤネの武器と似た名前にしたら〜?」
「お、おぉ...。」
それですずにダメ出しされたら私立ち直れないけど...うーん...アリスが付けてくれた名前に似た名前かぁ...。英語にしないとなぁ...。よし...
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【名前】Rainbow Wand:品質16
【説明】黒狼王の呪いが聖雷蜘蛛蠍女王の聖魔力によって浄化された事により、本来の姿を顕にした白い杖。虹色の宝玉によって全属性に対する与ダメージ上昇効果や防御魔法の全属性耐性を上昇させる効果を持つ。黒狼王の血により強化されたゲイザアイアン魔合金と聖雷蜘蛛蠍女王の強靭刃が均等に合わさることで凄まじい耐久を誇る。その杖は天魔石によって常に浮遊しており、持ち主が手放してもすぐに戻ってくる。
【武器スキル】《虹色の雷鳴LV.1(new!)》《虹色の祝福LV.─(New!)》《軽量化LV.─》《全属性特化LV.1(New!)》[雷雨魔法(New!)]
耐久:1035→8655
MP:+500→+2560
INT:650→5370
MND:1400(New!)
【製作者】アヤネ
【所有者】スズカ
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【名前】武器スキル:《虹色の雷鳴》 消費MP:1000
【効果①(LV.1)】使用すると全属性を付与された雷が自身を中心に半径100メートルの円の内に降り注ぐ。
【効果②(LV.MAX)】半径1mから100,000mまで自由に指定することができるようになる。
LV.1:INT+30
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【名前】武器スキル:パッシブ:《虹色の祝福》
【効果①】聖女王の助けを得て浄化された宝玉は杖を祝福する。(耐久減少抑制)
【効果②】聖女王と黒狼王の力の均衡を保つ宝玉は杖に力を与える。(魔法攻撃に雷、聖、闇属性を付与する)
【効果③】自由を得た宝玉は主と定めた人物に忠誠を誓う。(手から離れると自動で動いて持ち主の元に戻ってくる)
LV.1:INT+25
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【名前】[雷雨魔法] 消費MP:5000
【説明】試練の塔の一角を支配していた四天王のうちの1体であるサンダルフォンスパルオンクイーンが創り出した魔法に近い「技」。型に囚われる「魔法」とは違い、自分自身で自由に雷風雨を操作できるこの「技」は他の四天王からも絶賛された程である。超広範囲に渡るこの技は発動すると自分の意思で消すまでその場に残り続ける残留性を持つ。
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「...杖自身も凄いけど、この[雷雨魔法]ってやつが特に凄い。」
「そだね〜...。」
珍しくメルの顔が引きつっているように感じた。




