第563話 唐突に始まる試練の塔攻略
という訳で私たちは再び魔大陸の方に来ていた。理由はたった一つ。攻略していない試練の塔がこちら側にしか無いためだ。前回の試練の塔では真っ暗闇の森の中を進み、ノワールドラゴンを倒した。今回はどんな試練かなぁ...。
「それじゃあ行ってきます。」
「えぇ。気をつけてね?」
「そっちこそ。」
暇だからと皆も試練の塔を攻略するみたいだから互いに鼓舞しあった。...すずと拳をぶつけ合った時に周りから歓声が聞こえてきたのは謎だったけど。
──────────
──────
《粘雷の試練の塔に挑戦者が現れました》
《特殊設定を確認──完了──》
《──プレイヤーネーム:アヤネ に状態異常:移動速度低下(極大)を付与──》
《──プレイヤーネーム:アヤネ に状態異常:麻痺(極大)を付与──》
《アバター情報を記録中──記録しました──》
《環境設定──異常気象:超豪雷雨 設定完了──》
《バトルシステム──連戦モード──》
《エネミー設定──データ収集中──》
《エネミー設定──完了──》
《レベル設定──計測中──》
《エネミーレベル設定──LV.500に設定完了──》
《ボスエネミーレベル設定──LV.550に設定完了──》
《ラストボスエネミーレベル設定──LV.600に設定完了──》
《───》
《─》
───────
─────
──ドゴォォォォォオオオオオンッッッ!!!
「んっ...。」
雷の音で目が覚める。顔に当たる強い風雨が私の顔を顰めさせる。それになんだか体が重い。いや、重すぎる。
慌ててステータスを確認してみると状態異常に移動速度低下(極大)と麻痺(極大)が付与されていた。
「...ここ、は...?」
風に晒されることにも慣れてきて、ようやく周囲の様子を見ることが出来た。相も変わらず台風が直撃したかのような風の強さと、鳴り止まない雷の光に照らされるこの場所は草木ひとつも生えていない不毛の大地だった。
「どこに進めばいいんだろう?」
───ギリギリギリギリ...
頭上には黒い雲が空を覆っていて全体的に暗いこの場所。先も見通せない中、どこに進めば良いのか悩んでいると、どこか遠くから沢山の地面に金属を突くような音が聞こえてきた。
「蜘蛛?ん?サソリ...?」
黒く霧がかった景色の中に小さな赤い光がチラホラとその数はどんどんと増していき、遂には私を囲んでしまった。1番前に出てきたモノの姿は全体的に真っ黒な蜘蛛っぽいサソリ...サソリっぽり蜘蛛?しかし、足だけは刃物のようなものだ。そして、私と同じかそれ以上の大きさの蜘蛛になぜか敵意はなかった。呼び名は蜘蛛に統一することにする。
「シャァァッ...。」
「え、なに...?」
『着いてこい、だとさ。』
スカーレットは魔物の声も分かるのか。と思いながら1歩踏み出すと、蜘蛛は振り向いて歩いていく。スカーレットの言う通り着いてこいって意味だったらしい。
「...。」
周りの蜘蛛たちも私と一定の距離を保ちながら着いてきている。なんだろうこの絵面は...。
───────────────
あれからいくら歩いただろうか。目の前でピタリと止まった蜘蛛は「シャッ」と鳴いてどこかに行ってしまった。スカーレット曰くここで待っていろという意味らしいので待つことにする。
───カシャン...カシャン...カシャン...
暫く待っていると、周りの蜘蛛たちよりも一回り二回りほど大きいサイズの蜘蛛が歩いてきた。色も周りと比べて青色っぽい?
「シャァァ...。」
「?」
『よく来たな。』
「シャァァァッ...!」
『早速殺り合おうじゃないか!だってさ。』
「えぇ...。」
ガチンと刃物な足を地面に叩きつけ、私と距離を取る蜘蛛。とりあえず鑑定してみようかな。
「《鑑定》」
▲▲▲▲▲▲▲▲▲
【名前】サンダークスパルオン《BOSS》LV.550 状態:正常
【弱点】赤眼
【苦手属性】地、焔、聖、煌
【説明】闇魔法と雷魔法を両立させる蜘蛛蠍型の魔物。弱点は顔に着いている6つの赤い目であり、苦手属性も中々多い魔物である。しかし、物理魔法耐性共に優れている堅牢な外殻と闇を切り裂く強靭な鋭い足はその弱点を補って余りあるほどに脅威である。対策は魔法と物理攻撃両方に気をつけつつ、的確に弱点を攻撃する事だろう。
HP:107425/107425
MP:86417
STR:53640
VIT:54213
DEF:86556
AGI:75478
INT:64214
DEX:53229
MND:34170
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
「っ!も、もうボス戦なの...?」
私は手を置いていた刀の柄を強く握りしめた。
ちなみに、アヤネさんは気づいてませんが状態異常に負けて案内蜘蛛についていけなかった場合、試練失格となって後ろの蜘蛛たちに襲われます。




