第554話 雷と氷と大盾と
──ルーナside
「ふぅ......ふぅ......ふぅ......」
──ザリッ...
体が重すぎて地面に膝をついてしまう。アヤネたんに掛けた全ステ-90%のデバフを私自身も受けたせいでこの有様である。
もはや立ってもいられないほど辛いし瞼すらも徐々に落ちていく。全てのステータスが10分の1になる...それだけで普段の体の動かし方ができなくなるのだ。
それなのに...
それなのにどうして...
「貴女は、動ける、の...!」
翼を大きく広げ、ハッキリと開いた金色の瞳もじっとカインさんに向けられている。本当に凄いですねアヤネたんは...。
それに比べて私ったら...
「...別にそう悲観することは無いわよ。」
「え...?」
「貴女が弱いんじゃないわ。アヤネが強すぎるのよ。」
そう言ったのは私たちのチームにお助けとして一時的に入ってくれたアリアさん。氷属性のスペシャリストである彼女もアヤネたんの強さを良く理解しているようだ。
「事実、私もステータス全部-90%とかなったらルーナさんみたいになりそうだわ。もちろん程度は違えどあのジークフリートもね。」
「...そう、でしょうか?」
「えぇ。というかそうなるのは分かってたでしょうに。その為に私を呼んだのではなくて?」
「...ふふっ...そうでしたね。」
元よりこのスキル《一蓮托生》は打倒アヤネたんのために編み出したスキルだ。キョウさんのスキルを参考にさせてもらって自分で練習した結果ようやく手にしたもの。練習では-50%ですらも苦しかったぐらいだ。
アヤネたんをデバフ漬けにして、本命のアルキダスゼで倒す...それが本来の作戦じゃないか。シャッキリしなさい私!
「私の護衛は、任せましたよ!」
「もちろんよ。」
アヤネたんと同じ背丈のアリアさんはパッチリとウインクすると目の前の強敵に向けて杖を構えたのだった。
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──スズカside
「やってくれたわねルーナ。」
「ふふっ...最高の、褒め言葉...どうもありがとう。」
「ふん。それで?アリアちゃんが貴女の護衛って訳?」
「そうよ。私の氷魔法...とくと味わいなさい。」
アリアちゃんをはじめとする他のチームメンバーがルーナを守る。孤高のお嬢様であるアリアちゃんがまさかルーナのクランと共闘していたなんて思わなかったけど...
「...あやを潰すために呼んだのね。」
ルーナのクランメンバーで私が強いと思える人はアルキダスゼさんとミューさんの2人くらい。アルキダスゼさんはあやを倒すため居ないものと考えるとデバフを撒くデコイのルーナを守る人はミューさんだけになる。いくら大盾持ちのタンクだとしても主戦力1人で守るなんて不可能だ。そこでアリアちゃんがクランに入ることで不可能を可能にした。
「最初っからそのつもりだったとは...《マルチプル・サンダー・マイン》」
「《フローズン・リンク》」
───カチンッ...!
私の撒いた地雷の上から氷が地面を覆う。咄嗟にジャンプしたから自分の足を巻き込むことは無かったが、これはなかなか辛い。私の力が半分潰されたと言っても過言じゃない。
じゃあもう半分はなんなのかだって?
「地面に仕掛けられないなら空中に仕掛ければいいのよ。《マルチプル・サンダー・マイン・タイプ:フライ》」
「吹き飛びなさい《フローズン・ブラスト》!」
「《サンダー・シールド》!一点集中 《サンダー・レイ》!」
相手の魔法が完成する前にこちらも応戦する。あんな魔法使われたら空中に長く設置できないわね。
シールドさえも壊し、強く吹き付ける氷の風が私の体を急激に冷やす。それでも体力は10しか減っていない。種族特性様々である。
「っ!?」
「───フローズン・フローズン・コンバイン・...そのまま凍りなさい!ドラゴンブレス》!!!」
「《マルチプル・サンダー・シールド》!《マルチプル・サンダー・シールド》!!」
───ビュォオオオオオオオッッ!!!!!!
──バリリリリリリリリリリッッッ!!!
無数の盾を作り出し、龍の咆哮を受け止める。それでも秒間生成する数よりも割れる数の方が多い。
「──《雪月蝶の最終演目》」
───ビュォオオオオオオオオオオッッ!!!!
色とりどりの音を纏う蝶が飛び交い、戦場全体を吹雪で覆う。強すぎる吹雪の中、何も見えないがそれでもアヤネの方にいるカインさんの光だけは私にも視認できた。
「《マルチプル・サンダー・マイン・レイ》!!」
先程までアリアちゃんがいたであろう場所に向けて技を発動する。
───バヂュンッッ!!
「無駄ですわ。私の氷は電気を通しませんのよ。」
どこからとも無く聞こえてくるアリアちゃんの声。先程私が放った光線は確かに一瞬で霧散した。つまりこの空間はアリアちゃんの言う通り電気が通らない空間なのだろう。
焦ってはダメ、スズカ。
「串刺しにしなさい《フローズン・グングニル》!」
「《サンダー・マイン・シールド》」
──バヂィィィンッッッ!!!
吹雪に紛れて後ろから飛んできた巨大な槍を一方向のみ対応可能な小さなシールドで防ぐ。シールドは大きければ大きいほどムラができて守りが弱くなるけど小さくして1箇所に集中させればさせるほど強度が上がるのだ。咄嗟に使うのは難しいけどおいおい慣れていかないと...。
「まだまだですわ!《フローズン・ランス》!!」
「《マルチプル・サンダー・シールド》!」
───ズドドドドドドドッッッ!!
「うぐっっ...!」
今度は地面から突き出してくる大量の槍。流石に全てを防ぐことは叶わず幾つか体を貫いていった。
「まずい、わね。」
「貴女のターンなんて作りませんわッ!!そのまま死になさい!!《フローズン・ジャッジメント》」
私の周囲に影がかかる。上に何かが召喚されたようだ。
「破壊して[天雷]!!」
───ヂヂヂヂッッ...ドゴオオオオオオオンッッ!!
種族の特性で私は常に一つだけ雷玉を浮遊させている。それを使って頭上の氷塊を破壊する。どうやら[天雷]ならば通るみたいだ。
「むぅ...それならば───」
「《雷と金属を司る者》」
───バヂヂヂヂヂッッッ!!!
体から勝手に電気が溢れ出す。INTを600倍にして私自身を雷に変換する。吹雪くこの世界を私色に染め上げる。
───ヂヂヂッッヂヂヂヂッッッ!!!
「2度目ねルーナ。...全てを焼き尽くしなさい[天雷]!!!」
───ドッゴォォオオオオオオオオンンッッッ!!!
周囲に[天雷]を落とし、その衝撃波で吹雪を吹き飛ばす。晴れた景色の中にアリアちゃんを見つけた。どうやらルーナを連れて少しだけ移動していたようだ。
「ちっ...アヤネに貴女に...なんで化け物がこうも多いのよ...!」
「立場逆転ね。死になさい[天雷]!」
「───《カウンター》」
「なっ...!」
突如現れた女性が巨大な盾で天雷を受け止める。流れるように帯電した大盾を地面に当てて電気を逃がしつつこちらに飛び込んできた女性はいつの間にか私の首元に刃を当てていた。
「私を忘れてもらっちゃあ困りますよ。さよならスズカさん。」
「ミュー...さん...!」
───ザシュッ...!
その刃は見事私の首を掻っ切って、クリティカルヒットした私はそのまま...
いつもより長くなっちゃった。てへぺろ(真顔)




