第539話 油断大敵
「...はぁ。」
あのすごく大きい大剣を使っている人に逃げられちゃった。でもあの人なら最後まで生き残りそうだし、戦うことはできそう。...チームのメンバーもいないみたいだし他の人に殺られちゃったらそれまでだけどね。
「本当は追いかけたかったけど、流石にまた迷子になる訳にはいかないからね...。」
迷子になってからまた迷子になるとかもう目も当てられない。次の範囲が決まるまでのんびり待っておこう。
そう思って木の上に跳ぼうとしたその瞬間...
───ガヂャンッッ!!
「ぐゥッッ...!?」
突然足に激痛が走った。慌てて見ると大きなトラバサミが私の足を挟んでいた。肉に食い込むように挟むトラバサミは私の血だけではなく、他の液体も付着している様子。
───スパンッ...!
「うっ...!」
考えるのは一瞬。体に毒が回らないように左の膝から下を切り落とす。痛いけれど毒で死ぬよりはマシでしょう?それとモネちゃんと同じ戦い方をする人がこの近くにいるからボーッとしてられない。
すぐさま跳躍して木の上に飛び移り、葉に隠れる。
「奴は足をなくした!遠くまで逃げられないぞ!」
「居たぞあの木の上だ!!」
「撃ち落とせ!!」
「死ねぇ!!!」
先程まで他の敵はいなかったはず。範囲が縮まってここに集まったのか、それとも戦闘音に惹き付けられたのか...。
───ビュンッ!!...トスッ!!
「っ...!」
矢も飛んでくるし足が無くなった今、慣れてないのに下手に戦うとまともに矢を食らいかねない。今は逃げよう。これは戦略的撤退だ。
木の枝を飛び跳ねていき、木から木へと飛び移る。足が1本だけしかないからちょっと不安だったけどSTRは十分あるし問題はなさそう。
「はぇー...人間ってあんな動きできるんやな...。」
「おい!何見とれてんだよ!...気持ちは分かるが...。」
「まだこのスキルがあるから諦めるな。《血肉追跡》」
何言ってるのか全然分からなかったけど遠くから話し声が聞こえてきた。しかし立ち止まっているみたいでもうこちらを追ってくる気は無さそうだった。
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『うわぉ。なーんであの一瞬で足を切り落とす判断ができるんですかねぇ...?』
『アヤネの師匠はかの有名な刀堂勝氏じゃ。それを踏まえてみるとあの反射神経と判断は「できて当然」の域なのじゃろうな...。』
『え!?刀堂ってあの刀堂ですか?ですが弟子はもう取らないと仰ってたような...。』
『うむ。わしもそう思って調べてみたのじゃがどうやらアヤネの父親と刀堂勝氏が旧友の仲のようでな。流石にこれ以上は言えぬな。』
『なるほど...それで繋がっている訳ですね...。アヤネが刀堂さんの弟子...ですか。言われてみれば人間とは思えないような動きとかしてますもんね。』
『そうじゃな。超人と呼ばれる者しか育てない刀堂氏が育てるアヤネも当然超人だろうしな。まぁでも流石のアヤネもこちらのチームのスキル発動には気づけなかったみたいじゃな。』
『《血肉追跡》ってどんなスキルなんですか?』
『《血肉追跡》は文字通り、その場に残された血肉から元の持ち主の居場所を知らせるスキルじゃ。つまりアヤネは逃げても逃げてもこのチームに追われる羽目になる訳じゃな。』
『うぅむ...ですがアヤネたんなら何とかしてくれるのではという気持ちもありますね...。』
『どーじゃろな。』
もはやアヤネを観察するだけの生放送になってしまったが一体どうなるのか。




