第536話 強さ
「ふぅ......ふぅ......。」
擬似の肺に溜まった空気を外に出す。思った以上に興奮してしまっていたようだ。
左手に付着している血を軽く振り払って立ち上がる。名前も知らないあの竜人はもういない。
「どこ行こうかな...。」
このまま彷徨っていても疲れるだけだ。すず達ともはぐれちゃったからどうしようもないなぁ...。
「...収縮範囲と一緒に動こうかな。」
この鬱蒼とし過ぎている森から出るのはもう諦めることにした。下手に動くと収縮範囲の壁に自分から突っ込むみたいな感じになっちゃうからね。それならばその場で待つのが1番いいんじゃないかな?
「よしそうしよう。」
木の上に跳び上がって太い枝の上に座る。周りから見られづらい場所かつ、周りを警戒するにはもってこいの場所。私は手元にある地図を見ながらボーッとするのだった。
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『...。』
『...。』
『えーっと...。なんか暴走してませんでした?』
『...チラッとだがそのように見えたな。お主がわしを擽らなければしっかり見れたと言うのにな!』
『あ、はは...ごめんなさい...。で、でも可愛いブラキじゃさんも悪いんですからね!』
『なぜじゃ!?...こほん...。それは違うとしてアヤネの事じゃろう?』
『はい。今までに見てきたアヤネたんの戦い方というか...あの龍人の姿を見てから様子がおかしくなりましたよね。』
『そうなのか?わしは耐えるのに必死で見れなかったからな。』
『それはごめんなさい...。それでブラキじゃさんはどう思いますか?』
『そうじゃなぁ...第2の龍人が現れたことにも驚いたし、あんな野蛮に殺すアヤネにも驚いた。アヤネの心情が気になるところだな。もしかしたらあの変装は...変装じゃない可能性もある。』
『へ?どういう事ですか?』
『いや忘れてくれ。今のはわしの妄言じゃ。』
『えー!気になるところで止めないでくださいよぅ!コメントのみんなも気になるでしょ!?』
『すまないがわしから言うことは無いな。色々と情報が揃ったらな。そんな事よりもスズカ達がどうなってるのか見るぞ。』
『はーい...。コメントのみんなも期待に応えられなくてごめんね...。みんなもブラキじゃさんにお金払って情報得てね?』
『ふふっ...情報屋じゃからな。』
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───モネside
「あ、あの...本当に良かったんですか?」
「ん?何が?」
「アヤネたんですよ。はぐれちゃったじゃないですか!」
「あー...確かに心配だけど、今気をつけるべきは私たちの方だからね。」
「...リーダーだからですか?」
「それもそうだけど戦力的にあやの方が強いからね。」
「そ、そんなに...ですか?」
「そうよ?私が戦ったら多分秒で死んじゃうわね...。」
スズカさんの口から語られるアヤネたんの強さ。アヤネたんの強さというものを第1回イベントの最後しか見ていない私からしたら今のスズカさんとそれほど戦力的な差を感じないんだけど...。まぁあの頃よりはアヤネたんも成長してるだろうしなんとも言えないかなぁ...。
「モネも知ってるでしょう?私の体質。」
「は、はい。1ダメージしか受けないってやつですよね?」
「そう。その分他の人とは比べ物にならないほど体力が低くなってるけどそれでも200回以上強い攻撃を受けられるわ。」
「お、おぉ...。それでも負けちゃうんですか...?」
「1秒に200回以上攻撃されちゃうからね。」
「え...。」
何その化け物...天使だけど。
「ん?...っ──!?」
「え、なにっ───!?」
───ズガァァァンッッ!!!
急に私に抱きついてきたスズカさん。正直役得...じゃなくて!
「ど、どうしたんですか?」
「ちょっとしゃがんでて。私を盾にしていいから。」
「え、え?」
何が起きてるの?




