第534話 生放送される痴態(二つの意味で)
『『......。』』
『あのぉ...ブラキじゃさん?』
『...なんじゃ?』
『...もしかしなくてもアヤネたん迷子ですよね?』
『...そうじゃな。...少し離れた場所からついて行くつもりだったらしいが、敵を追いかけて森の奥に入った挙句迷子になるとはな...。』
『あ、はは...。ま、まぁ可愛らしいというか...。その...いえ!そんなこと言ってる場合じゃないですね。たった1人森の中で迷子になってしまったのであればこれからの生存は厳しいはずなのですが...正直アヤネたんならどうにかしてくれると思いますね。』
『それは...わしも思う所存だ。というかメニューから地図が見れるはずなのじゃが、進行方向はスズカ達に任せっきりだったせいか見れることに気づいていないのでは?』
『「アヤネたん可愛い」コメントがたくさん流れてますね。私も同意します。さぁアヤネたんは地図の存在に気づくのか...。』
『恐らく気付かぬじゃろうな。涙声で焦っておるし叫んだせいで他の敵にも気づかれている。』
『むむむ...でもきっとなんとかしてくれると信じてます!』
『ふふっ...そうじゃな。』
『...なんですかその生暖かい目は。』
『なんでもないのじゃ。』
『むぅ...くすぐりの刑です!』
『なっ!?ば、ばかじゃないのか!?なまほーそーじゃぞ!?』
『知らないデース。』
『ぎゃぁぁぁあああああ!?!!?!?』
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「どうしよ。」
「へい。この坊や。何やら困ってるようだなぁ?」
1人の男を筆頭にゾロゾロとやってきた10人のチーム。全員ニヤニヤしててちょっと居心地が悪い。なんだか蛇に睨まれた蛙みたいな感じ。
「...ちょっとはぐれちゃって。」
「おっと坊やじゃなくて少女だったか。すまないな。...はぐれちまったのか。それは残念だったな。」
未だにニヤニヤしている男達。まぁチームPvP戦で1人だけ彷徨いていたのなら、それは格好の餌だろう。その証拠に周りのメンバーが徐々に私を囲おうと動いている。
「それじゃあ俺たちが案内してやるよ。」
「本当ですか?それはありがたいです。」
「もちろんさ。それじゃ宜しくな。」
「はい。お願いします。」
返事をして敢えて頭を下げてみたら近くに寄っていた男の殺気が膨れ上がったのに気づいた。隙を見て攻撃してきたのだろう。
───スパンッ!
「がぁっ!?」
「...何をする?」
「襲いかかってきたので反撃したまでです。」
首を刀で掻っ切って少し距離を取る。リーダーは私に話しかけてきたあの男で間違いないはず。残り9人いるがそこまで強くはなさそう。
「やっちまえ!」
「おぉおおお!!!《ソード・ウェーブ》!」
「死ねぇぇえっっ!!《豪脚》!」
波のように次々と押し寄せてくる剣の攻撃と至る所から飛んでくる蹴り。それらを刀と腕を使って逸らしていく。もちろん反撃も忘れない。
「お前たち何をやっている!」
「俺らも行くぞ。」
「おう。」
2人じゃ無理だと悟ったのか残りのメンバーも突撃してきた。...でもそうすると逆に攻撃しずらいけどいいの?だって8人が同じ人を攻撃するんだよ?流れ弾が多くなると思わない?
「私としてはいいんだけどね。《百連撃》」
人が増えたことによって攻めあぐねる隙が僅かながらできる。その隙を突いて短縮されたスキル名を唱え、スイッチを切り替える。そして...
───スパパパパパパッッッ!!!!
8人全員を切り刻み、退場させた。
「...はっ...いいだろう。お前がただの少女じゃねぇことは分かった。...しかし俺とてあいつらみたくボロ雑巾になるつもりはない!」
「はぁ...。」
「覚悟せいっ!!」
背中に担いでいた巨大な槍をブンブンと振り回し、その切っ先を私に向けた。




