第533話 しんり(ん)せん
「次の範囲は...あっちね。」
「そうですね。敵に会わないように森をぬけていきましょう!」
「それが1番ね。あやもそれでいい?」
──こくっ
離れた場所から頷くことで返事をする。私たちがこれから向かうのは大きな木の橋がかかっている大河だ。そこまで繋がっている森も気が生い茂っているから隠れるにはもってこいの場所。その分他の敵も隠れている場合があるからこれまで以上に注意が必要だったりするけどね。
「...噂をすればなんとやら。」
すず達の方ではなく、私のいる場所の近く。少しだけ追跡してリーダーだけ倒してしまおう。
「《隠密》」
──タンッ...!タタンッ...!
木の上から木の上へ飛び移っていき、件の敵チーム真上までやってきた。ここからペースを落としてゆっくりついていく。
「どこに隠れようか。」
「あんまり道から離れすぎても待ち伏せできねぇよな。」
「あと少しだけ進もう。」
「りー...すまない。」
「油断するな。」
「もしリーダーが割れたらその時点で不利だからな。」
「そうだぞ。」
「...。」
徹底的に情報統制をしているみたいだね。そう簡単にリーダーが誰かを言うはずがないか。今までの人達はきっとイベントで浮かれてたのかな?
「...まぁそれならそれでやりようはあるけどね。《刀剣地獄》」
スキルを使い、10本の黒い魔法刀を空中に浮かべる。そして、真上からそれぞれを1本ずつ丁寧に狙いを定め射出する。
───ザクッッ!!ズシャッ!!ズドドッ!!
「な、なん───がぁっ!?」
「敵しゅ──ぅがあっ!?」
「散か──がはぁっ!!」
「やっぱり強いねこのスキル...。」
「はぁ...はぁ...だ、誰だ...!」
「ここは...俺に任せろ...。」
「エクス...分かった。みんな行くぞ...!」
「あぁ!」
流石に同時に殺せなかったからか5人と半分は生き残っている。まぁみんなどこかしら貫かれてるけど。1人だけその場に残ってみんな森の奥に逃げていった。1人だけ逃げたのならばその人がリーダーだが、これではどちらがリーダーか分からない。普通に考えたら多数集まってる方にリーダーがいると考えるだろうけど、このチームは策をすごい考えてるからね。
「ほら出てこい!!リーダーはやらせねぇ!」
「君が、リーダーという可能性は?」
「っ!?」
「...なにを言っている?俺がリーダーなはずがねぇだろ?それならみんなで立ち向かう!」
「ふーん?そうなの?」
「そうだ!」
「じゃあ死んでも大丈夫だよね?」
「っ...ぐぅっ!!」
───ギィィィンッッ!!
「すごい反応速度...。」
「へっ!《反応速度・改》スキル様様だぜっ!!」
「へぇ...。」
それならば...どこまで反応できるか試してみてもいいかな?
「へ?ちょ、ちょっとハヤスギィッッ!?!?」
──ギギギギギギギギッッッ!!!ズバンッ!!
「か、はっ...!ま...だまだぁっ!!」
「もう遅いよ!」
トドメの一撃を与えようとしたその瞬間...
「くっ...《チームリーダー》!」
「っ!」
相手はチームリーダー専用スキルを使って無敵になった。先程までとは打って変わって今度は私が防戦一方となった。だって攻撃しても意味ないからね。
「ほらほらほらほらぁ!!そんなもんかぁっ!?」
「傷1つないけどね?」
「うっせぇ!死ねぇぇぇえっっ!!!」
────ギギギギギギギギギギギギッッッッ!!!!!
私の刀と相手の剣が混じり合う。なんとか逸らしているとはいえ、相手のスキルの影響か逸らすのも一苦労。でも無敵もずっとじゃない。
「おらぁぁぁぁぁあああっっっ!!!!」
「はっ!」
───スパッッ...!
「ぁ...ぇ?」
「ちゃんとカウントしとかないとね。」
「...。」
この試合が始まる前に見といたから持続時間は分かっている。あとは効果が切れる時と同時に攻撃すれば無防備に攻撃してた相手は何も出来ずに死ぬ。
「さて、と...。」
ここからが本題だ。
「迷子になっちゃったよぉっ...!」
1人の少女の涙声が森中に響き渡るのだった。




