第514話 正面突破
迷わずにダルニア国の王都ダルシムに辿り着いた私は城壁の上から城を眺めているメルを見つけた。
迷ってないからね?本当だよ?......ごめんなさい本当は行く街間違えました...。
───ヒュゥゥゥッッ....スタッ...!
「お待たせメル。」
「待ってたよアヤネ。スズカ達はもう潜入してるからね〜。」
「うん。私たちはどうするの?」
「うーん...アヤネは強いでしょ?だから正面で引き付けて欲しいんだ。」
「それでいいの?」
「うん。私はその隙に城内隈無くアイリスを探すからさ。」
「分かった。」
「それで、デストラクターっていうゴーレムが出てくるかもだから気をつけてね。」
「へ?ちょっとメル!?」
言うだけ言ってメルは先に城の庭園に向かっていった。恐らく侵入経路が近くにあるのだろう。ってそれよりもデストラクターって何よ...。ゴーレムらしいけどどんな感じなのかな...?
「うーん...姿バレるのもなぁ...。」
今回はアイリスを奪還するだけ。ここで国との戦闘になって指名手配とかシャレにならないからね。
「変装...でも角があるから難しい...。」
『...人化すればいい。』
「す、スカーレット!?久しぶりだね!それで...人化?」
『ん。龍が龍人化するのと同じで龍人も人化する。私が特別に身体を用意する。』
「そ、それって副作用的なのは大丈夫、なの...?」
『ん。効力は1日。人化って唱えて。』
「わ、分かった。」
「《人化》」
─────ボフンッッッ!!
赤い煙が出たと思ったら...何も変わって...いや、手と足が人間のものになっている。それに尻尾も消えて角も翼も無くなっている。
「顔にも少し鱗があったんだけど...。」
何時ぞやにアンナさんから「どこでも身嗜みを整えるのは淑女として当然」と頂いた手鏡で顔を見てみると、そこにはスカーレットがいた。
「あ、あぇ?声も変わってる...。」
声もつい先程まで聞いていたスカーレットのものに。私...スカーレットになっちゃった。
『どう?』
「わ、私の声...!」
『私とアヤネは一心同体。体を入れ替えるのも訳ない。』
「そ、そっかぁ...。ありがとうねスカーレット。」
『ん。頑張って。』
翼が無くなった今、飛べないけれどそれでも地面に降り立つことはできる。とりあえず姿を隠して突撃しよう...。私がするのは陽動。危なくなったら逃げに徹する。それでもメルやすず達を見捨てることはしないけど。
「...懐かしいねこれ。」
呪われた黒い外套。今はアリスによって解呪されてるからただの黒い外套だね。ボロボロだけど身を隠すには問題ないはず。あとは目隠し。目隠しは無駄に長いから口元を隠すにはもってこいなんだよね。
「ん...。」
これでよし。あとはフードを目深に被れば私の顔は見えないはず。堂々と真正面から入ってやろう。礼儀なんていらない。アイリスを誘拐したのだから。
「おい止まれ!」
「誰だ貴様!」
「ん。」
鎧を纏う兵士2人が城門の前で私を引き止める。
───ドゴッッ!!
「ぐばぁっっ!?」
「な、何をする貴様っ!?」
その内の片方の胸あたりを蹴り、地にへばりつかせる。
「大人しく捕まれッッ!!!」
「嫌。」
───ガンッッ!!
「がぁっっ!?」
「だ、大丈夫か...!!」
「あ、あぁ...応援を呼んでくれ...!」
「ああ!!」
思いっきり城門を開け放ち、堂々と歩く。先程逃げていった兵士が呼んだであろう練度の高い兵士達がゾロゾロと集まってくる。
「貴様何用だ!!」
槍の矛先を一斉にこちらに向けてくる兵士達。私は陽動するだけ。これだけ集めればメルもすず達も動きやすいだろう。
「何とか言えッッ!!!」
「...。」
「捕らえよ!」
「「「「「おぉおおおお!!!!」」」」」
私を囲うように展開する兵士達。だけどそんなんじゃ私は止められないよ。
そうして私はインベントリから刀を出した。刃物持ってた方が危険度が増して他の兵士達も来そうだからね。




