第502話 かんどーのさいかい
またも暴走状態になっちゃった私はというと、ずっと暗闇にいた。勝手に動く体を動かすことはできず、なぜか気分が高揚したまま女王様との勝負を聞こえてくる戦闘音だけで楽しんでいた。
ちなみにスカーレットとも心の中で会うことも出来なかったから少し寂しかった。
音だけ聞いてると拳どうしの殴り合いが多いように感じた。あと体の感覚からまるで私そのものを殴っているようにも感じた。私は死んでも生き返るから良いんだけど、女王様はこの世界の住人だから死んでしまったらそれまでだ。なんとか無事でいてほしいんだけど...
とか思っていると左目に激痛が走った。左目には天魔石が埋まっている。なんとか守ろうと思ったはずだったのに、天魔石が木っ端微塵になったのを感じた瞬間、私の高揚感が一瞬で無くなった。それと同時に龍化も解けて体が落ちていくのを感じる。まぁ平衡感覚はそのままだから目を閉じたままでも着地はできる。
「目を攻撃したのは悪かった。しかし、天魔石を排除しなければアヤネは龍化する度に暴走する。」
「はい。ありがとうございます。」
「いや、感謝は不要だ。...そ、それよりも、わ、私とお茶でもしないか?」
「お茶...ですか?」
「あぁ。...アヤネのことを気に入ったからな。色々と話してみたい。」
「うーん...。」
「...ダメなら諦めよう。」
正直に言うと断りたい。だってすずがまた嫉妬しちゃうから。あ、でも龍化後についての話は聞いてみたい。すずと相談してみよう。
「ちょっとすずと相談するので...すぐには無理です...。」
「分かった。すずというのはあそこにいるスズカの事だな?」
「あ、はい。」
すずの方を見てみると一見すると素晴らしき笑顔を浮かべていた。しかし、その目には90%ぐらい嫉妬が含まれていた。残りの10%は...心配?
「ほら。血は止まっただろうが、顔に着いた血は取れてないから。拭いてからスズカの所に行ってやれ。」
「ん。ありがとうございます女王様...。」
ポッカリと空いた私の左目から止めどなく溢れていた血は嘘のようにいつの間にか止まっており、顔に着いていた血がもう固まり始めていた。それを女王様がハンカチで拭ってくれた。
「それと女王様じゃなくてウォリティアだ。リティでもティアでも好きに呼んでくれ。」
「え、その...ウォリティアさん...。」
すずからの眼差しが強くなったのが分かったから当たり障りのない呼び方に留める。というかここって会場のど真ん中だよね?すずのいる観客席まで結構遠いけどなんで話の内容が分かってるんだろう...?まぁいいや。
「ウォリティアさん...そろそろ行ってきます。」
「あぁ。お茶会の件。楽しみにしている。」
「......はい。」
さすがに体力も魔力もほとんどスッカラカンなので動きがフラフラするが、すずのところまで飛んでいくとギュッと抱きしめてくれた。
「あや...。」
「すず...。」
「「「「「「「「ぅ、うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」」」」」」
なぜか大歓声を浴びた。




