第496話 乱入者が現れました
「...盗んだ剣で人を斬るのは楽しかった?」
「あ?」
声がした方を振り向くと、そこには無表情の赤い龍人が立っていた。言わずと知れたこの鉄剣を造ったアヤネだ。
そんなアヤネがこの剣を盗んだものと断定した。なぜ分かった...?それになんだこの威圧感は...。
「なんだなんだ...?」
「乱入イベントか...?」
「アヤネたそ可愛いなおい...!」
「無表情なのまじ萌え。」
ザワザワとしだす大会会場。同じく無表情だった高みの見物をしているあの女王サマでさえ目を見開いている。こ、ここは誤魔化すか...。
「な、何言ってるんだァ?これはダンジョンの宝箱で手に入れたもんだぜぇ?」
「それはない。剣の柄に私の掘った絵と番号があるから。私は買った人の顔と名前、買った物まで全部覚えてる。その中に貴方はいなかった。...つまり盗品。」
「なっ...!」
たった今見て気づいた。まじで絵が掘ってあるじゃねぇか...。
「おいおいまじかよ...あいつ泥棒かよ...。アイツに賭けるんじゃなかったぜ...。」
「残念だが金は帰ってこねぇよ。」
「くそが...。」
「断罪イベントかな...?」
「さぁ?まぁあの男が恥かいてるのは分かる。」
「だったらなんだ。」
「?」
「盗んだからなんだ!所有者は既に俺だ!盗まれたやつが悪いだろうが!!」
自分でも見苦しいと思ったがここまで来たなら引き返せない。
「...なるほどねぇ。...じゃあ盗まれても文句はないよね?」
「は──?」
───ズバンッッ!!!
「ぇ...?は...??」
───ガンッ...!
アヤネが腰に帯びている刀の柄に手を当てた瞬間、体が急に軽くなった。そう、全身の鎧が斬り落とされたのだ。この俺が、何も...何も、見えなかった...。それどころか今も怖くて動けない。
「うぉぉお...今何したんだ...!?」
「分からない...。」
「私、何も見えなかったわ...。」
「私も...。」
「アヤネたそはやっぱり最強...。」
「それで?剣すら抜かないのは私がこんななりだから?」
「ひ、ひぃっ...!」
その通りだった。最初は龍人とはいえアヤネが幼児体型だったからなめてかかっていた。第1回イベントでの優勝もきっとまぐれだと。俺も成長しているから...完全に下に見ていた。
───ヒタッ......
「っっ...!!」
「返してもらうね。」
───シュルッ...
腰に帯びていた剣が鞘ごと抜き取られる。俺は...俺は何もできなかった...。あれだけ殺意を向けてきていたのに剣を奪ったらさっさと背中を向けて去っていく。なんだよそれ...ふざけてるのか...。わざわざ...大勢の奴らが見てるところでやるか...!!
「こん、のぉ......!!!野郎がぁぁぁぁぁあ!!!!!」
力が漲ってくる。握りこぶしを作れば、そこから摩擦で火が出る。
「オルァァァァアアア!!!!!!」
「...。私男じゃないんだけど...。」
───パシッ...ドスッッ!!!
背後から殴りかかったはずなのに、なぜか掴まれて横腹に回し蹴りを入れられる。そのまま吹っ飛ばされた俺は会場の外壁にぶつかったところで意識を失った。
「「「「「「......ぅぉおおおおお!!!!!!!」」」」」」
誰しもが無言だった一瞬後に溢れんばかりの歓声が広がった。これがフィナーレと言わんばかりに。
だが、まだ戦闘大会イベントは終わっていない。




