番外編 猫は液体
「...。」
あれから102、103号室と隣接している部屋を探索したが、特にめぼしい物はなかった。...実験体にされた人の情報が書かれた紙ならたくさんあったけど。
「ほんとにどこいっちゃったのかなぁ...。」
それと、いつの間にかあの猫ちゃんとはぐれてしまった。ここは危険な場所なので心配ではあるが、私も危険であることには変わりはないため、探そうにも探しに行けない。猫ちゃんの無事を祈りつつ探索を続けるしかない。
「ん...?ここ、は...?」
本館入って右側の扉は全て探索したので今度は左側に行ってみたのだ。そしたらその先には巨大な実験室があった。使用用途の分からない巨大な機材やら化学実験などで使うビーカー、試験管がたくさん散乱していた。
しかし、その割には他の部屋と比べると綺麗であった。そしてここは...
「...夢で、見た場所...?」
毎晩夢で見ていた場所であった。あの女性の姿はないが、機材の配置が全く同じだ。たしか...
「この辺から見ていたような...やっぱり。」
部屋の一番奥。緑色の液体で満たされているカプセルの前から夢の中の私はこの部屋を一望していた。この場所を探索すればきっと何か手がかりは見つかるだろう。
「...早くしないとね。」
この家の家主が帰ってくる前に(帰ってくるか分からないけど)手っ取り早く探索をしなければならないからね。
まず最初は後ろの巨大なカプセル。これが一番異様な雰囲気を纏っている。
「にゃーん。」
「ひゅっ!?...びっくりしたぁ...や、やめてよもう...。」
またもやいつの間にか足元に猫ちゃんがいた。本当に神出鬼没だね貴方は...。
───カリカリカリ...
「にゃん。」
「え、ど、どうしたの?」
「にゃーん。」
やれやれと言った顔で急に大ジャンプする猫ちゃん。その着地地点には...
──カチッ!...プシューーッッ!!
「あ、こらー!!何押してるの!?あわわ...ど、どうしよ...!」
「にゃあん。」
──グヂョッ...
中に満たされていた緑色の液体が外に溢れ出す。私は慌てて逃げたが、猫ちゃんは飲み込まれてしまった。
「にゃぁ...!?」
「猫ちゃん...!」
怖いはず。怖いはずなのに。なぜか私の体は勝手に動く。
───グヂャッ!グヂョッ...!
粘性の高い液体に自分から踏み込んでいき、猫ちゃんの元へと向かう。
「猫ちゃん...!」
今日出会ったばかりの猫ちゃんではあるが、その存在はとても大きいものだった。一緒にいてずっと助けてくれた猫ちゃんは私の心の支えなのだ。だから...だから...
「もう大丈夫だよ...。」
今度は私が助ける番だ。
「猫ちゃん逃げて。」
粘液だらけの猫ちゃん。私の服で軽く拭って粘液の広がってない床に放り投げる。華麗に着地した猫ちゃんを見て、私は安堵した。ただ...
「猫ちゃんありがとね。」
スライムのように動く粘液に私は絡め取られ、そのまま意識を失った。
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「やってくれたわね...。」
「にゃっ!!」
「このクソ猫が...。いや
───猫になった哀れなルインちゃん?」




