番外編(?) クリスマス
──これはいつかのクリスマス...
────あやちゃん。』
───起きてってばぁ。』
──すずちゃんに襲わせちゃうぞ?』
「んぅ?」
「あ、起きた?朝ごはんできてるわよ。」
「ん...。」
「おはよう。──お母さん。」
────これは、もしかしたら起こりえたかもしれない物語。
「ふふっ。おはよう。今日はお父さんと一緒に清水さんのところに行くのよ?早く顔洗ってね?」
「うん。ふぁ...ぁ...。」
────これは...本編と関係がある...かもしれない物語。
──言うなれば...if may物語。
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「おはようあや!それとおはようございますお義母さん!刀夜さん!」
「おはようすず!」
「あらあらおはようすずちゃん。」
「あぁおはよう。」
「おぉ!刀夜君!心音君!よく来てくれた!さぁ入りたまえ!」
「おはようございます皆さん。お待ちしておりました。寒いでしょうし、中でゆっくりお話しましょう。」
二家族が揃い、暖の取れた大きな広間で久々に皆が集まったことを喜びあう。みんなの笑顔がとても眩しく、私も嬉しい。
「ねぇあや。」
「なぁに?」
「私の部屋でゲームしよう!」
「うんいいよー。」
「あらあら彩音ちゃんもう行っちゃうの?私寂しいわ...。」
「ごめんなさい...。」
「んもぅ鏡華ったら...私のあやちゃんを誘惑しないの!」
「ふふっごめんなさいね?」
「刀夜君、最近は何を造っているんだ?」
「ん。...もうすぐ心音の誕生日だからな。料理好きの心音の為に造ってる。」
「そういえば元旦は心音君の誕生日だったなぁ。よし、私も誕生日プレゼントを用意しよう!」
「...高いのは止めてやってくれよ。」
「...もちろんだとも。」
「...その妙な間は信用ならんな...。」
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「ログインっと...。すずは、あ、いた!」
「あや〜!こっちだよー!」
「あれ?皆もいたの?」
「はい!今日はアヤネが起きそうでしたので!」
「Merry christmasだよ〜!」
「は、発音綺麗ね...?」
今年はゲームの中のみんなと過ごす。去年は現実世界でお母さん、お父さん、そしてすずの家族と一緒に過ごしたのでクリスマスからお正月まではゲームをしなかったんだけど、今年はちゃんとログインしないとアリスが拗ねちゃうから...。
「アヤネ!その...今日は、一緒に寝ませんか...?」
「うん。いいよ?」
「い、いいの...?」
「だってアリスも恋人だもん。」
「っ...!アヤネぇ!!」
「わわっ!?ちょっとアリス!?苦しいよ!?」
いつもと変わらない日。だけど、ちょっぴり特別感がある日。
「でもなんだろう...違和感がある...。」
「え?何が?」
「...なんでもない。」
何かがおかしい気がする。私ってこんなに幸せだったっけ。確かに、確かに今までも幸せを感じていた。だけど、1人になった時...具体的にはすずがいない時はとても寂しい想いをしていた気がするんだよね...。でも、今は...それがない。とてもいい事だと言うのはわかっているんだけど、それでもやっぱり違和感は拭えない...。
「...。」
なにか、忘れている?
いや...逆に、この温もりを忘れていた?
すずがいない時はいつもお母さんがいた。お父さんは鍛治ばっかりしてたからね。だけど、私は寂しい想いをしていたはずだ。お母さんがいれば寂しい想いなんてしない...。
「...ごめんねみんな。ちょっとだけ落ちるね。」
「え!?ちょ、ちょっとあや!?」
すぐにログアウトした私は一緒のベッドに寝ているすずの頭を撫でて、1階に降りた。
「お母さん。」
「あら?すずちゃんとゲームしてたんじゃないの?」
「お母さん...。」
「なぁに?そんなに泣きそうな顔をして。」
「お母さんは...お母さんは...」
「......ふふっ。気づいちゃったのね。ちょっと早いけどクリスマスプレゼントよ。」
「お母さん...!!」
「ごめんなさいねあやちゃん。」
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「っ...!!」
夜中の1時。私はハッと目が覚めた。背中は汗でビッショリしていた。何でだろう?なにか悪い夢でも見たのかなぁ...?
...でも、なんとなく...幸せな気分、だな。
幸せな日を。




