第459話 虹色王
「だれもトリックちゃんのことを襲ったりしないから安心して?」
「うぅぅぅ...ち、違ぅのぉ...。わ、私が...ただ、恥ずかしぃだけ...。」
「そ、そうなの...?うーん...。」
カボチャの頭がないバージョンのトリックちゃんは恥ずかしがり屋なのか。
ちなみに、今私たちはこの街で取った宿にいる。さらに言えばこの部屋には私とトリックちゃん以外誰もいない。トリックちゃん曰くあの激闘を敵として共にした私なら話せると2人きりを所望したのだ。私たちの中でトリックちゃんの情報を1番知っているだろうすずだとなぜか女の子に対しては少しだけ、ほんの少しだけ敵対的というか、威圧的というか...そんな感じだから任せられないし、他の子もあまり関わり合いがないといった感じで私しか適任者がいなかったのだ。
「そ、それで?なんであんな路地裏で泣いてたのか聞いてもいいかな?」
「っ...ぅ、ぅん...。ぇっと...ぁぅぅ...。」
「大丈夫大丈夫...ゆっくりで大丈夫だから...ね?」
「ぅん...。その...私ね───────」
────────────
─────────
当時のことがよっぽど怖かったのか、全ての話を聞くのに小一時間程かかった。
トリックちゃん曰く、私と別れてから1週間後くらいにいつも通りお菓子を貰いに行こうとしたら別世界に迷い込んでしまったらしい。そこで虹色の角...私の金色の角とは形状は違った物らしいけど、それを持つ女性と出会ったのだとか。ちなみにその女性はとてもえっちな人だったらしい。
それは置いておいて、その人はなんとトリックちゃんのことを性的に襲ったのだ。
「...まるですずみたい。」
...じゃなくて。
「私の...私のカボチャがぁ...。ぅぅぅぅ...!」
「う、うーん...。」
そしてトリックちゃんの声と体つきが気に入ったその人はカボチャの中にある顔が気になったみたいで、カボチャを切り刻んでしまったのだ。
そんな人の名前は...
「七大罪の色欲...虹色王ペパポペル...。」
「まさかの七大罪。」
これで私が知った七大罪は5人目だ。あと2人がどんな感じの人なのか気になるけど、大罪と付くだけあって知るのもちょっと怖い。
というかペパポペルって小さい子を性的に見てるってこと...?だってトリックちゃんは私と同じぐらいの背丈で声も幼げだから...。もし私が出会ったらトリックちゃんと同じ様な目に遭ってしまうかもしれない...。
「私のカボチャ...許せないよぅ...!」
「お、落ち着いて?」
「ねぇアヤネ...お菓子集め手伝ってくれないかなぁ...?」
「うっ...。その顔は反則なんだよ...。分かった。できるだけ手伝うよ。」
トリックちゃんは貰ったお菓子の量によってステータスが大きく変わるらしい。最初は生き残るためだったその目的はペパポペル打倒のためになったみたいだ。莫大な量のお菓子を集めて自身を超強化するつもりだろう。
「話は聞かせてもらったわ。」
「すず?」
「お菓子を集めたいのでしょう?ならば私が手配してあげるわ。」
「ぇ...ぃ、ぃぃの...?」
「えぇ。これも何かの縁だしね。」
そう言うや否やすずはフレンドチャットを開いて誰かにチャットを送った。
「あや。」
「なに?」
「明日この街の領主館に行こっか。」
「え...?」
「それと...誰が私みたいだって?」
「え...?えー...あっ...。」
最初から全て聞いていたというならば、ペパポペルの話を聞いたあとの私の「まるですずみたい」という言葉もちゃんと聞いていたということになる。つまり...。
「ごめんなさい!」
「私傷ついちゃったな〜。」
「くっ...。」
薄く微笑むすず。絶対傷ついてない顔だよこれ。お仕置きの顔してるもん...。
──この後滅茶苦茶くすぐられた。
話に出てきたのは6人ですが、アヤネたんが知ってるのは5人。




