第458話 カウォス
「鮮魚あるとこ私ありってね。」
そうウインクしながら言うぬこさんは可愛かった。あの後私たちはぬこさんと一緒に街を歩くことにした。良く来ているらしいぬこさんの案内はとても分かりやすかった。
「そういえば皆はハロウィンイベント専用の魔物って知ってる?」
「トリックちゃんのことですか?」
「トリックちゃ...あぁ、うんそう。知ってたんだね。」
「はい。ここに来る前に会ったので。」
「大丈夫だったの...?お菓子持ってないと殺されるみたいだけど...。」
「あやは擽りで撃退してたわね。」
「へっ?く、擽り...?」
────かくかくしかじか....。
「そ、それはまた...なんというか...アヤネちゃんらしいわね...?」
「私らしいってどういう事ですか...。」
「そのままの意味よあや。」
「くっ...。」
すずにまでそう言われてしまえば何も返すことができない。
と、そんな感じで歩いていると...
───っぐ...ひっぐ...
「ん?」
「どうかしたのあや?」
「なんか...誰かが泣いてる...?」
方向的に路地裏かな。泣き声は少女のものだった。急いで行かないと...。
「あ、ちょっとあや!?」
「ごめんね!」
吐き捨てるように皆に謝って私は駆け出した。
─────────
小川が流れる路地裏を数回曲がり、泣いている少女を見つけた。
「...どうしたの?」
「ひっぐ...ぁぅっ...ぁ、貴女は...あの時の...!」
「?私たちどこかで会ったっけ...?」
目元は金髪で隠れて見えないが、顔立ちはすごく整っている。有り体にいえば可愛い子だ。だけど、この子の顔を見たことはない。記憶にないからね。そう思って来ている服を見てみると、装飾にカボチャが着いている特徴的な服装をしていた。
「ま、まさか...トリックちゃん...?」
「ひぅっ...えぐっ...うぅぅ...。」
「え、えぇ...?な、なんで泣いてるの...?ど、どうしよう...。」
あのカボチャの頭で隠れていた子が、こんなにも可愛いとは思わなかった。そのことにも驚いたし、前に会った時はあんなにも強気だったのに、目の前にいるトリックちゃんはまるで別人のように弱々しくなっている。そのギャップにも驚いて私の方もオドオドしてしまう。
「あやー!どこにいるのー!」
「あ、すず!ここだよ!」
「もう!いつも先に行っちゃうんだから!」
「ごめんね?」
「はぁ...まぁあやのことだからしょうがないか。」
「うわぁぁぁあんっっ!!」
「「「えぇぇっ!?」」」
皆が集まってきたと同時にトリックちゃんがさらに大泣きしてしまった。
「さっきからトリックちゃんが泣いてるんだけど、どうすればいいかなぁ...?」
「わ、分からないわ...ってトリックちゃん?この子が?」
「うん...前に会った時と別人にしか見えないけど...服装と体型が全く同じだからさ...。」
「なるほど...?」
「え、アヤネちゃん体型が全く同じって分かるの...?」
「一応ミリ単位で分かりますけど...。」
「おぅ...。」
大泣きするトリックちゃん、トリックちゃんだと信じられないポカンとした顔のすず、引き攣った顔をするぬこさん、ともうよく分からない状況になってきた。
え、どうしよこの状況...。
「い、一旦皆落ち着こう?」
「そ、そうね。」
「ぁぅ...ゎ、ゎかった...。」
とりあえず落ち着こう。




