番外編 最近時間無いからとかいう理由で番外編書いてないんだからね!///③
『ナナミ。私は...強くなったかな...?』
あれから10年。私は世界一周を成し遂げることができ、冒険者として最高ランクのSランクになった。そして世界中に剣豪として名を馳せた。
暇さえあれば剣を握り、魔物を討伐していたら自然と剣豪と呼ばれるようになったのだ。幼い頃からナナミを守るために剣を握っていた私はついに世界で1番の剣の使い手になった。だが、守るべき対象はもういない。
『私もそっちでナナミを守りたいよ...。』
そんな事を常日頃思いながら惰性で魔物を狩り続けていた。
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ある日のこと。
『もし宜しければ俺たちのパーティに入ってくれませんか!!』
『お願いします!』
『...。』
当時勢いのあったSランクの冒険者達が一緒にパーティを組まないかと誘ってきたのだ。私はずっと1人で戦ってきたし、パーティでの共闘はあまりした事がなかったため断ったのだが、あまりにもしつこかったので1度だけという条件でパーティに入った。
『最近難度の高いこのダンジョンですごいお宝が出るって噂になってたんすよね!だから一緒にパーティ組めて嬉しいっす!ありがとうございますミツルさん!』
『...あぁ。』
目を細めて笑う男はこのパーティのリーダーであるウーラ。他のパーティメンバー達もなぜか私を見て薄く笑っていた。
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『ハッ!!』
───ザザザザザンッッ!!!
最下層のボスを難なく討伐した後、1番奥の部屋に向かった私たちは普段見ていたような宝箱よりも数倍は大きく、豪奢な宝箱を見つけた。
『...すごいっすね...。ささっ!ミツルさんが1番活躍したので開けちゃってください!』
『...私でいいのか?』
『もちろんですよ!』
先程よりも嬉しそうな笑みを浮かべるパーティメンバー達を尻目に私は宝箱を開けた。...開けてしまった。
『うわっ!?な、なんだこれは!?』
『ギャハハハハ!!!騙されたなァミツルゥ!!それは呪いの装備だぜェ!?』
『前から鬱陶しかったんだよなぁ!』
『ざまぁねぇぜ!!』
『『『ギャハハハハハハ!!!』』』
宝箱を開けた途端、私の視界は謎の布によって塞がれ、謎の布が体に巻きついてきた。パーティメンバー...元パーティメンバー達の嗤い声がダンジョン内に響く。私は裏切られた。
『あぁ、その大事な大事な剣...あとついでにそのネックレスももらってくぜぇ!?』
何が何だか分からなかったが、私の大切なネックレスを奪うということだけは分かった。慌ててバックステップで彼らと距離を取り、剣を抜こうとするが、もう既に剣は取られてしまっていた。
『...ネックレスは取れなかったが、まぁいい。お前はこのダンジョンの最下層で武器無しの状態で彷徨うがいいぜぇ!!』
ウーラの言葉はそれで最後だった。嗤い声がどんどんと離れていく中、私は1人ダンジョンの最下層に取り残された。
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『なぁナナミ...。私は...もう死んでもいいのではないか?』
剣がない鞘とネックレスを握りしめながら私は1人呟く。ナナミに問うたが、当然返ってくるはずもない。
『はぁ...。頑張って出てみるか。』
とりあえず視界を確保したいところだが...。多分無理だろう。気配を察知してここから出る事にする。視界については後回しだ。今はここから出ることに集中しよう...。
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『...。』
もう無理だ。今度こそ私はここで死ぬ。食料が切れてから約1週間...も経っているのかは分からないが、体感1週間は何も食べていない。水だけは魔法でなんとかなっているが、食べ物は魔法では作れない。
このままでは餓死するだろう。...でもまぁ私は頑張ったよな。何せこの300階層あるこのダンジョンで200階分は階段を登ったからな。目隠しで階段を探しつつ魔物の気配を察知するのは大変だった。ちなみに何十回か魔物と遭遇したが、全て手刀で倒した。食べられる魔物だったら良かったのだが、残念なことに全て金属系の魔物だった。
『ごめんナナミ。私...そっちに行くね...。天国と地獄があったのならば、恐らく会え...ないと、思う、けどね...。』
第106階層。残り100階層を目前にして私は息絶えた。気がついたら私は外にいて自由に歩いていた。視界もハッキリしているし、お腹が空いているようなこともなく、特に問題はなかった。ただ1つ...
───体の所有権を何者かに奪われていること以外。
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「...ナナミ。...会いたいよ。」
あの時と同じように私はマイマスターが造ってくれた剣とネックレスを握りしめながら呟くのだった。
ミツルさんに幸あれ。




