番外編 傍観者と奮闘者
「...社長。まだ見てるんですか?」
「ん?えぇ。この子すごい頑張ってるのよ。...今はちょっとピンチだけどね。」
秘書の叡子が呆れた表情で私に問いかけてくる。だって仕方ないじゃない。この子が頑張ってるもの。ついつい見てしまうのよねぇ...。
「そうですね。問い合わせも来ていますし...。2件。」
「ふーん?あの子たちには悪いけど、しばらく観察させてもらおうかしらね。」
「はぁ...?...問い合わせ係もその子たちも可哀想ですね...。」
「あはは...謝礼でも渡しておいて?あとお詫びのメールもあの子たちに。」
「全く...。分かりました。」
「ごめんねー?...でも、あと少しだからさ。」
「...?失礼いたしました。」
──パタン...
「...さぁて。どうなるかしらねぇ?」
画面に映る龍人の少女が中に囚われている大きな結晶。
──ピシッ...ピシピシッ...!!
「...ふふ。さすがね...───
──スカーレットちゃん。」
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──スカーレットside
『はぁ...。』
天魔石に囚われたアヤネ...の体の中にいる私は呆れ返っていた。最後まで言えなかったけど、一応忠告はしたんだけれどね...。...まぁ過ぎたことは仕方ない。
『一応体は使えるけど...。』
アヤネの意識は天魔石に囚われた瞬間に消えてしまった。つまり、この体の今の所有者は私だということ。だけれども体が動かせない。かと言って天力を使うとこの石に吸い込まれてしまう。
それに目も閉じてしまっているため周囲の状況も確認できない。...はずだったが、アヤネが習得している心眼を用いて確認することができた。私も似たようなことはできるが、それは天力ありきの物。アヤネは本当にすごいな...。
『...どうしよう。』
とりあえず一通り試せることを試していこう。
と言ったものの、やれる事は限られている。まず、天力は使えないので己の力のみで抜け出さなければならない。しかし、アヤネの力であってもこの石は硬かった。1ミリも体を動かせる気配を感じない。
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そんなこんなでどうしようもないままなんと1週間も経ってしまった。未だにアヤネの意識が回復することはない。...いよいよまずくなってきた。
『天力か...。』
こうなったら天力を使うしかないだろう。しかし、そうすると...ん?
『...なぜ今まで気が付かなかったのか。』
今までずっと体内にある天力のみでどうにかしようとしていた。しかし、それだとなけなしの天力を吸われておしまいだ。だが、天力なら他にもあるじゃないか。
───天魔石が。
『...行けるな。』
試しに少しだけ天力を放ってみて、その吸引力を確かめる。これぐらいならば行ける。
...天力を繋いで逆に吸い散らかしてやる。
───ギュィィィィィッッ...!!
───ピシッ...ピシピシッ!!
『ふふ...。天力がたくさん...。』
────バギンッッッ!!!
「『...む?」』
天魔石が...体に吸収された...?これは良いな。アヤネの体にあった天力を溜め込む器がより大きくなって強化されている。
「『...目の色も変わってる。」』
両目とも金色だったのが、左目だけ金色に水色が混ざったような色になった。...所謂オッドアイというやつか?スズカが好きそうな見た目になったな。これは見せたくないな...。...アヤネ頑張ってくれ。なぜ私も一緒にスズカの攻めを受けなければならないのか...。もうあれは受けたくない。
「『...はぁ。」』
アヤネが帰ってくるまで暇になったのだった。
天力を求めてアヤネたんを取り込んだが逆に取り込まれてしまった天魔石ェ...。




