第431話 本物と本物
「ど、どういうことなのぉ...?」
「アァ...ァァァァア!!!」
「っ!?」
────ギィィィンッッ!!!
私が昨日倒したフロストサーペントの部屋にログインし、この部屋を出ようとしたらなぜか私と瓜二つの私がいた。向こうも困惑していたようだったけど、何やら錯乱しているようで狂ったように笑いだして私を攻撃してきた。
「死ネェ!」
「私そんな事言わないからぁッ!!」
私であって私じゃない...。性格がまるで別人だ。...いや、私の性格も自分ではよく分かってないけど。
────ギギギギギギィィィンッッ!!
「っ...。」
それに戦い方が全く違う...。私は殺すつもりでもこんなデタラメに攻撃しない。苦しまないように一撃必殺を狙っている。だが、目の前の私は出血多量による死を狙っているようにも思える。...断定できないのは相手が常に相手へ死に近い攻撃をしているからだ。例えばさっきの出血多量。刀で私を滅多斬りにすれば私はたちまち死んでしまうだろう。だけど、私はなんとか防いでいる。だから相手は攻撃の方法を変えていくのだ。
「ガァァァ!!!」
「無駄だよ!」
こんなに暴走して理性がなくなっているようにも思えるが相手はちゃんと考えているらしい。焔を吐けば私が焼死するとでも思っているのだろうが、生憎と私は焔龍王。焔は無効化されるのだ。
吐かれた焔に怯まず飛び込むことで相手にできた一瞬の隙を突いて胸に蹴りを入れる。
『スカーレット。あの私は何?』
『...スキルで創り出された存在。何もしなくても一定時間が経てば消える。...殺した方が速いけど。』
『...そっか。』
さっき「私が偽物」って言ってたけど、自分で自分のことを否定したってことだよね。...それは良くないこと。例え周りがお前は偽物だと言っていても実際に存在しているのだから偽物も何もないでしょ...。
「アア...ゥヴヴ!」
「ふぅぅ...。」
覚悟を決める。あの私を...いやあのアヤネを私が認める。だから...そんな今にも泣きそうな...悲しそうな顔をしないで。
「ァアアアア!!!!!」
「ふっ!」
───ズガガガガガガガァァアンンッ!!!
今度は拳での近接攻撃を繰り出してくる。だが、それは全て私の拳にぶつけられる。そして、次に拳がぶつかるタイミングで敢えてぶつけずに、そのまま相手の拳を掴み、私の方へ引っ張る。
───ギュッ...!...ドサッ!!
受け止めたはいいものの、勢い余って背中から地面に倒れてしまった。それでもアヤネの背中に回した手は離さない。
「ハ、ハナ、セ!ハナセェェエ!!」
「離さない!」
スキルによって創られた存在ならば、ステータスは私と同じぐらいだろう。そこに天力を上乗せしてあげれば簡単に抑えられる。...幸いなのが、相手は混乱していて抵抗するために使っている天力をまともに扱えていないところだろうか。
「貴女は本物。」
「ぇ...。」
「スキルによって複製されたとしても、周りが偽物だと言っていても、貴女が自分のことを偽物だと思っていても...私は貴女が本物であると断定できる。」
「なん、で...なんでそんな...嘘だ!!」
「嘘じゃない。だって、私とは姿こそ瓜二つだけど口調や戦い方は全く違うじゃん?」
「それ、は...私が偽物だから...。」
「違う。それは個性だよ。貴女は私とは違う。別人だよ。たまたま姿が同じだっただけ。たまたま声が同じだっただけ。その他は全部私とは違う。」
「そう...かなぁ...?」
いや可愛いな。私ってこんな顔するっけ...。でも別人だから違う顔も見せるよね。
「ありがとう...アヤネ...。」
「どういたしまして。」
「ぁ...私、そろそろ行かなきゃ...。」
「え?...あ...。」
そういえばさっきスカーレットが一定時間が経てば消えるって言ってたっけ...。
「そっか...。」
「...ん。だから...また会おうね。」
「っ!うん!」
───パァァンッ...!
最後に笑顔を見せたアヤネは光となって弾けた。
感動するような話を目指したけど、やっぱり難しい。慣れないことはするもんじゃないね!()




