第429話 最強にして最凶
──スズカside
「あ、あや...!?」
「...?」
私が思わずあや...と瓜二つのあや...なんか頭がこんがらがりそうだからあやちゃんでいっか...あやちゃんに声をかけると、彼女は『?』を頭の上に浮かべながら無表情でこちらを見つめてきた。その顔は...私が初めてあやに声をかけた時に見せてくれた顔...。今では顔見知りの人には笑顔を見せるあやは昔はこんな感じだったなぁ...。
「...すまないがこのスキルによって作り出された人は本人の記憶がない状態なんだ...。記憶の複製は日本だけじゃなく、世界でも禁止されているのは知っているだろう?」
「そうね...。」
懐かしい記憶を思い出しているとグレースさんから説明が入った。確かに国際法で記憶の複製が禁止されている。だって記憶の複製ができちゃったらクローン作成技術が進歩しちゃうからね。
「まぁそれでも体が戦闘技術やら普段の仕草やらを覚えている...というか世界監視AIが忠実に本人を再現しているから本人とあんまり変わらないはずなんだけどなぁ...。」
「そうなの?」
「あぁ。このゲームにログインしてからずっと観察されてきたからな。口調とか全くおなじになるはずなんだよ。」
「でも...」
「そうなんだよ。このアヤネは全く喋らない。」
「これがスキルによってできたアヤネさんかぁ...。全くおなじだねぇ...?」
「そうですねぇ...普段のアヤネも可愛いですけど、こっちのアヤネはカッコイイです!」
「おぉー頬っぺムニムニしても怒らなイ!」
「私もアイリスの頬っぺムニムニしたい〜!」
「だめ。」
「...?」
ヒョウさんを始め、みんなが皆スキルによって造られたあやちゃんをじっくりと観察している。...なんかちょっと胸が痛い。
「さぁアヤネ!魔物を倒すのだ!」
「...ん。」
あやちゃんはグレースさんの言葉にこくりと頷き、一緒に複製された刀に手を当てた。すると...
───キィィンッ...
「え...?」
金色の瞳が僅かに赤くなるとスキルを唱え始めた。他のみんなも一緒に見ているが瞳の色が変わったのに気づいている者はいない。やっぱり違う...。あれはあやじゃない。
「《刀堂流刀術・奥義:次元斬》」
──ズバンッッ!!!
「「「「「「え?」」」」」」
今...あやちゃん...何をした...?
私が見えたのは刀を振ったところまで...。その後は斬撃の重なった音が聞こえてきたあと、なぜかあのフロストバトルホースが一瞬にして細切れになった。
あや...あんなことできるの...?
たった一振りでボスを倒したあやちゃんはなぜか急に走り出した。...ってめっちゃ速い!?もう次の階層に行っちゃったよ...。
「ちょちょっ!?アヤネ!?どこ行くんだぁぁあ!??」
「行っちゃいましたね...。」
「...ねぇグレースさん。」
「な、なんだ?」
「さっきあやちゃんになんて指示を出しました?」
「あやちゃ...?あ、えっと魔物を倒せ、と...。」
「あ、もしかしてフロストバトルホースだけじゃなくてこの先の階層にいる魔物達もその対象になっているんじゃ...?」
「その可能性は高そうねアリス。」
「じゃあ追いかけル?」
「わ〜い!鬼ごっこだ〜!」
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「はぁ...はぁ...はぁ...全然見つからないわね...!」
「はぁ...はぁ...そう、ですね...!」
あれから1時間。ひたすら走り続けたが、全く見つからない。もう10階分...60階層まで降りてるんだけどなぁ...。
「いやぁ...すごいなアヤネさんは...。」
「ヒョウさん...?何がですか?」
「だって、ねぇ...?」
「?」
含みのある言い方で注目を集めるヒョウさんが次に言った言葉に私だけでなく、ここにいるみんなが驚いた。
「...この先の40階層分の魔物達全員倒されてるよ。」
チーター爆誕。というのも少しだけ人間味のあったあやたんの人格がAIによって効率化されたらそりゃ戦闘面でも一切の無駄が無くなるでしょうねぇ....。(遠い目)
常に最適な方法で最短ルートを通っていくAIあやたんは最凶。
ちなみに目が若干赤く光ったのはAIが操作してますよ〜っていう証拠みたいなもの。一般人が常人にはできないスキルを使う時、その動きを補助するためにAIが働く場合にも目が赤くなります。つまりほとんどの人がスキルを使う時に目が若干赤くなります。だから今まで目が赤くならなかったあやたんは...。
そして目が若干赤くなることの意味を知っているプレイヤーは今のところいません。




