第420話 パシャリ
「正直、外で写真を取りたいところだが...まぁ写真どころの騒ぎじゃなくなるかもだからここで撮ることにしよう。」
「...?そうかな...?」
確かに言われてみればただでさえ皆からチラチラと見られる私達が外で写真を撮るとなるともっと見られそうかも...。それだったら中で写真を撮った方が良いのかな?
「そ、それじゃあ私は臨時休業の貼り紙貼ってきます!」
「え!?そこまでしなくても...!」
「いいんです!利益の心配なら大丈夫です!」
「えぇ...?」
そう言っていそいそとお店の裏に消えていく店員さん。利益かぁ...。一体私達の写真と私のサインで何の利益が出るんだろう....?そもそも利益なんて出るのかな...?なんかよく分からなくなってきた。
「じゃああやは私の膝の上ね。」
「うん。...え?」
「良かった!てっきり断られるかと思ったわ。」
「あの...え、その...。」
「どうしたのあや?」
確かにうんって返事したのは私だけど上の空だったと言いますか...。でも話を聞いてなかった私が悪いんだよね?いやでも流石にお店に飾る写真ですずの膝の上に乗るっていうのはどうかと思うし、何よりも恥ずかしい。いやいやでも私は同意した訳で、すずが悪い訳ではないから嘘でしたって断るのもそれはそれでどうかと思う。うぅぅ...なんでちゃんと話聞かなかったのか私!!
「あや...?私の膝に乗るのは...嫌、かな...?」
「乗ります。乗らせてください。ごめんなさい。」
「...ほんとに?」
「はい。」
「そっか...。良かった。」
結局私はすずに弱いんだなぁ....。すずの凹んだ顔はあまり見たくないからね。...可愛いけど。
「じゃああや。おいで?」
「う、うん...。」
もう既に皆が椅子を並べ終わり、それぞれ座っている。あとは私だけ。恥ずかしながらもなんとかすずに背中を向けて膝に座る。すると...
───ぎゅむっ!
「ひゃっ!?」
「すぅはぁ...あや...このまま撮ろっか...。ふぅ...。」
「ぁう...。」
座ったタイミングですずに抱きしめられ、左耳に囁かれた。あとなぜか耳に息を吹きかけられた。どうやらすずは私の左肩に首を乗せて写真を撮るらしい。
恥ずかしいので話を逸らすが、写真を撮るにあたって椅子に座る前列組とその後ろに立つ後列組に別れる。前列には私とすず、右隣にはアリスで左隣には店員さん、さらにその隣にグレースさんがいる。後列組はアリスの後ろにアンナさんがいて、私達の後ろにアイリスとメルが立っている。アイリスとメルの仲が心配だけど、大丈夫だろうか...。
そして、ヒョウさんだがなぜかカメラマンをしている。グレースさんがスキルで作り出したデジタル(?)カメラの使い方を教わって撮ることになったのだ。ヒョウさんは入らないのかと聞いたら『なんだか撮ったら誰かさん達に呪い殺されそうだから止めておくよ。』と言われてしまった。誰かさん達って誰...?
「じゃあ行くよー。はいチーズ!」
────パシャッ!
「もう1枚〜!はいチーズ!」
────パシャッ!
「最後はお好きな顔で〜!はいチーズ!!」
「好きな顔...?どうす───」
──チュッ...
────パシャッ!!
「おっほ...最後の...最後の写真は私の家宝にすることにして...。現像するからちょっと待ってて。」
「最後の写真...くれるよね?」
「は、はい...。」
「わ、私アヤネにき、キス...しちゃいました...!」
「おめでとうございますお嬢様...。」
私が呆然としている中、すずがグレースさんに何か言っているみたいだった。というかなんですずと、あとアリスは私に...き、キスしたの...?
「わ、私も最後の写真欲しいです...!!」
「だ〜め!これは私の...私達だけの写真なんだから。」
「スズカさん...。」
そんな訳で...私はどういう訳か分からないが、最初に撮った写真をグレースさんの思い出用に、2枚目を店員さん用に、そして最後の...左右からすずとアリスにキスされている写真はすずが持つことになった。
ほんとに...ほんとうに...もう...。顔が熱いよ...。
写真と言えば不意打ちキス(は?)




