第418話 人たらし
「...それでアイリス。」
「...ナニ?」
「...メルと喧嘩でもしたの?」
「っ...け、喧嘩じゃ...ないと、思ウ...。」
「喧嘩じゃないの...?じゃあなんで2人は...。」
「あぅ...あ、アヤネ達と同じだヨ!」
「え...?私達と同じ...?」
まず私達というのが誰を指しているのかが分からない。まず私は入っているが、他には誰が...アイリスとメルの2人の関係が私達と同じ...もしかして私とすず...?いや、もしかしたらアリスかもしれない...。うぅー!分からない〜!!
「ねぇアイリス。私達と同じって───」
「着いたヨ!さぁ早く入ろウ!」
「う、うん。」
露骨に誤魔化されたので、これ以上の話を聞き出すのを諦めて情報屋さんに入る。中に入ると、そこは新聞で溢れかえっていた。足の踏み場もないような場所でどうすればいいのか...。
「ん?いらっしゃ〜い!」
「あ、どうもこんにちは...。」
新聞タワーの隙間から顔を出したのは私とは違った角を生やした女の人だった。
「あ、アヤネたんじゃない!!...それとアイリスちゃんだったかしら?」
「え?そ、そうですけど、私達って面識ありましたっけ...?」
「いやいや!初めて会うけど、一応ここはブラキジャ情報屋支部だからね〜!...白髪なのは流石にびっくりしたけど...。」
「ん?...あぁ...私達がこの街に来たということも知っていたってことですか?」
「えぇ。」
ブラキジャ情報屋の支部...ブラキジャ...ブラキじゃさん?確かブラキじゃさんも情報屋さんをやっているって聞いたことがあるけど...まさか...。
「やっぱり知ってるかー!ブラキじゃさん有名だもんね〜。一応あの人の経営してる情報屋は各国に最低でも1はあるからね。」
「そんなに有名だったんですね...。」
ブラキじゃさんすごいたくさんの知識があったからね。経営者としての知識もあったのかなぁ...?いずれにせよブラキじゃさんは只者じゃなかった。私と同じぐらいの背丈だけどすごいなぁ...。
「それで?今日はどういったご要件で?」
「あ、はい。ヒョウさん...ヒョウラン・レオパルドっていう人を探しているんですけど...。」
「ヒョウランさんねぇ...。つい1週間ぐらい前にこの街に来たばかりなんだけど、それ以前の情報が全く無いのよねぇ...。まあ居場所だけなら教えられるわ。」
「どこにいるんですか?」
「最近だと西にある『白の憩』ってカフェに通ってるみたいね。」
「なるほど...それと、もう1つ聞きたいんですけど、ナティルード地下氷獄迷宮ってどういうところなんですか...?」
「え、まさかあそこに行くつもり?」
「は、はい...。」
「やめといた方が良いかもよー?だって強力な魔物ばかり生息してるし、ダンジョン内の環境が最悪も最悪...。レベル100を超えた魔物プレイヤー達でさえも第1階層で死んじゃうぐらいだからね〜...。それでも行くんだったら出現する魔物のリストを作ってあげるわ。」
「...お願いします。」
「...分かったわ。宿でゆっくり読んでね。」
「はい。...それで、報酬はいくらですか?」
「正直、アヤネたんから貰いたくはないんだけど...一応仕事だからね〜...5000Gでいいわ。ちょっとまっててね。」
「分かりました。ありがとうございます...。」
相場が分からないが、5000Gが安すぎるというのは分かる。きっと迷宮の出現する魔物のリストを作るのにも相当の時間がかかっだろうしね。それを5000G...しかもヒョウさんの居場所込みでの金額なのはどう考えてもおかしいもんね。...これはあの女の人に感謝しないと...。
「...はいこれ。他の人に見せたらダメよ?」
「分かりました。...最後に名前を聞いてもいいですか...?」
「わ、私?...私はメイよ。」
「そうですか...ありがとうございますメイさん。」
「っ...!?そそそ、そう?お、お役に立てて良かったわ。」
「はい。ではまた...。」
「あ、はい...。」
メイさんいい人だったなぁ...。情報も手に入れたからすずにフレンドチャットで連絡して、『白の憩』に行こっかな。
「...アヤネって人たらしだよね。」
「え...?」
人たらし...?なんで...?
可愛い子の笑顔は癒し。




