第407話 芋打と
すずが1歩も動かずに魔物を倒したあと、ヒョウさんの後に続く。
結界の中には強力な氷属性の魔物がうじゃうじゃといた。この過酷な土地で生きる以上、弱いとすぐに死んでしまうのだろう。そのため明らかに強い魔物しか存在していなかった。だが、ヒョウさんは止まらずに突き進む。
「ほらはやく。」
「あ、はい。」
近くに魔物が来てもなぜか不自然なほど気付かれない。もしこれがヒョウさんの言った通りならば、1歩でもヒョウさんが歩いた道を逸れたらどうなるか想像も容易い...
「あと少しで到着だよ。」
「あれ?意外と近いところにあるんですね?」
「まぁね。この結界の仕組みはアイレーンと僕、あとはお城に暮らす者以外は知らないからね。言わば秘密の通路。...ちなみに1歩でも道を逸れるとそこら辺にいる魔物達が一斉に襲いかかってくるから注意してね。」
「「「「「「...。」」」」」」
───ゥオオオオオオンンッ!!ガウッ!!
────ギィィィィィィ...!!!
──ズガァァァンッッ!
今も後ろで私たちに気づかずに魔物同士で喧嘩している音を聞きながら私達は無言でヒョウさんについて行った。
───────
────
「着いたよ。」
「大きい...。」
「そりゃお城だからねぇ。」
全体的に真っ青な城。何を建材にしたのかが分からないその城は若干反射する景色を歪ませていた。
「中も広いわねぇ...。」
「うん...。天井も高いし...。」
「こんな事を言うと不敬になってしまいますが...私の国のお城よりも...立派です...。」
とてつもなく広く長い廊下を歩き続け、私達は他の扉とは一線を画すほど豪奢な扉の前までやって来た。冷たさを感じる扉を前に、私達は少し緊張していた。
この先にアイレーンさんがいるのかな...?
「なんか緊張するね。」
「そうね。」
「アイレーン入るよー!」
「急ですね!?」
そんな私たちを他所に、ヒョウさんは両開きの扉を軽々押してスキップしながら中に入っていく。
「...あと4年の1月後に解放する予定だったが...。なぜ貴様がここにいる?」
「いやぁこのアヤネ...さんに助けて貰ってね!」
「ふん。そんなことは分かっている。反省したのかと聞いているのだ。」
「えぇーだってあれは本当のこと言っただけじゃん?なんで怒るのさ!」
「...まぁいい。私はそこの龍人に用がある。」
「あるぇ?アヤネ...さんってアイレーンと知り合いだったの?」
「え、いや、知らないですけど...。」
あ、でもなんとなくオチは予想できる...。
「忘れたとは言わせんぞスカーレット!」
「デスヨネ...。」
「今日という今日こそは...!」
え?スカーレット何かやらかしたの...?
『何も。というかアレが誰か知らない。』
皆が皆...あのヒョウさんも固唾を飲んで見守る中、アイレーンさんが言ったのは...
「───私の妹になってもらう!!!」
「「「「「「「はい...?」」」」」」」
イモウト?いもうとってあれだよね?妹だよね?芋を打つで芋打とじゃないよね?...そんな言葉ないか。じゃなくて!
『あいれーん?どっかで聞いた覚えが...。』
「そうだスカーレット!いるんだろう!?出てこい!今日からお前は私の妹だ!長年探していたが、ようやくだ...!」
「えぇ...。」
『...あぁアイツか...。嫌なこと思い出しちゃった。アヤネ代わりに断っといて。』
『えぇ!?なんで!?』
『今の体の持ち主はアヤネだから。』
『...その体を勝手に使ってた人がいるらしいですよ?』
『......はぁ。分かった。』
「『我はお前の妹ではない。」』
私の口から発せられる声は私のものであって私のものでは無い。
「あるぇ?アヤネさん...?」
「気にしないでヒョウさん。」
「おぉ!スカーレットか!んー...なら、勝負をしよう!負けたら勝った方の妹になる...どうだ?」
「『どうだ?じゃない。お前のような妹など要らぬわ。」』
「...ふふん。そう言うと思ってな。私はある条件を持ってきた。」
「『...ほう?」』
刺々しいが、仲良さげな2人の会話に私を含む他の人たちも放ったらかしにされている。
「...スカーレット...じゃなくてアヤネと言ったか?貴様は一定の温度で冷やせる友好的な魔物を探しているのだろう?」
「『...なるほどそう来たか。」』
つまり私の探していたものを人質に取るということ?




