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第403話 チワゲンカ




「気づいてましたか...。」

『あはは。まぁね。』



山頂の少し開けた場所。そこに降り立ち、未だこちらに背を向けている男性の幽霊に声をかけると気さくに返してくれた。



『それはともかく...。』



やけにゆっくりと振り向くので身構えつつも、彼と目を合わせた。そんな彼の目は...



『...助けてくれないかいっ...!?』



なぜか感極まったと言わんばかりに涙で濡れていた。...その場で身構えた私の身にもなってほしいものである。



『やっと...やっとなんだよ...!あ、詳しくはついてきてもらえればわかるからさ!』

「え、あ、はい...。」



さっきまでの得体の知れないという不安は一転し、困惑や呆れに変わった。



───────

────



『これだよ。』

「...これってずっと見えてたやつ...。」



そう。山頂に降り立った時から彼の先にあったものだ。それは十字架であり、氷像が磔にされている。



『いや。あれは氷像じゃないよ。』

「え...?氷像じゃ、ない...?」



磔にされているのはどう見ても人の氷像である。氷像じゃないとしたら...




『───あれは僕だよ。』


「...。」



本物の人なのだろう。一体なぜこんなところ(魔大陸の氷山の山頂)で十字架に磔にされているのだろうか。そしてなぜ霊として今目の前にこの人がいるのか。



()()()()凍っちゃってるけど冷凍保存だと思えば...大丈夫そうかなぁ...?』

「助けるってこの磔にされている人を解放すればいいってことですか?」

『うん。ついでに温めて欲しいけどね。』



のほほんとした笑みを浮かべる彼は一体何者なのだろうか。あとで詳しく話を聞かないとだね。



『えーっと...両手首足首と首の合計5箇所に鉄の枷があるんだ。...見えるかな?この凍ってるところ。』

「ちょっと出っ張ってるところですよね?」

『うん。』

「...これくらいなら。」



──スパンッ!



同時に全ての枷を斬り、落ちてくる氷像...じゃなかった。この人を受け止める。



『温めれるかな?』

「任せてください。」



そう言って私は薪と炎の魔石を取り出し、風が吹かないところで着火する。助けた人をその近くに運んで寝かせる。そして、炎の魔石達をこの人の体の上に乗せる。素の状態でカイロみたいな役割を果たせるのだから乗せるだけなら消耗しないだろう。


ちなみに、炎のブレスで温める方法も考えたけど勢い余って...ってなったら怖いし火を吐くところを赤の他人にできる限り見せたくない。



────────


『ありがとう...。本当に...ありがとう...。』

「どういたしまして。」



ボロボロと涙を零しながら(霊だから実際にはなにも零れてない)自分の体に戻っていく彼。そういえば名前聞いてなかったなぁ...。



「ぅ...ぁ...ぁあ...ぅぐ...。ふぅ...改めてありがとう...!そういえば自己紹介してなかったね。僕の名前はヒョウラン。ヒョウって呼んで?」

「ヒョウさんですね。私はアヤネです。アヤネって呼んでください。よろしくお願いします。」

「うん。よろしくね!...でアヤネが聞きたいのはどうして磔にされていたのかだよね。」

「はい。」

「それは...」

「それは...?」






「 僕 の 愛 し の 妻 と 喧 嘩 し ち ゃ っ た か ら だ よ っ ! ! 」


「はい...?」



この人は何を言っているんだろう?夫婦喧嘩で磔...?こんなところで...ヒョウさんは人間でしょ...?わざわざ魔大陸の氷山の山頂で磔にされる...もはや死ねと言われているようなことをされるほどのことをしたの...?



「あ、はは...。アイレーン...あぁ僕の愛しの妻のことなんだけどね?いつもツンツンしてるんだよ。可愛いと思わない?そんな彼女を僕はいつもからかったりしてるんだけど、まさかここまでするとはね!そんな彼女も可愛いんだけど!」

「はぁ...。」



とりあえずヒョウさんが100%悪いということで大丈夫...?




磔にされて体が凍りついても貴女を愛し続ける。

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