第402話 霊的な
やっと一息ついて落ち着いたことだから、今の私たちの目的を整理する。まず第一にこの大陸にやって来たのは今ハルカちゃんが待ってくれている空島の進化のため...の天魔石を創るため。
ハルカちゃんは一緒に来れないみたいだから待ってもらってるけど、大丈夫だろうか...。防寒具をあげる前の薄着でも寒そうにしてなかったから大丈夫だとは思うけど、凄く我慢してるだけかもしれないし...。
っと話がズレてしまった。ハルカちゃんに関しては炎の魔石を何個かあげることにして...。
天魔石を創るためには金と石炭を混ぜたものを"一定の温度で"冷やしながら天力を纏わせる必要がある。これだけ聞くと素材さえあればこの大地でもできそうだと思うだろう。だけどこの大地では常に温度が変わっている。...まぁ寒い事には代わりないんだけどね。なぜ『一定の温度で』を強調したのかが分かっただろう。
だからこそ魔物の力を借りようと思っているのだ。常に冷気を発しながら寝ている魔物の近くで天力を纏わせればできるんじゃないかなと私は思っているんだけど、多分そう簡単にはいかない。
はぁ...なんでウィンズさんの造った装置が壊れちゃうかなぁ...。
「...あや?どうかした...?」
「んーん...。なんでもない。」
道中でメルが言っていた条件に該当する魔物はこの大陸にいるということしか分かっておらず、私達はこの広大な大地を宛もなく彷徨うしかない。安易に決めるべきじゃなかったかなぁ...。うわぁネガティブになってきた。
「...ちょっと私外出てくる。」
「はぁ!?きゅ、急にどうしたの!?」
「...頭冷やしてくる。」
「物理的に!?」
寒いが炎の魔石ならぬカイロがあるし、なんなら1人しかいないので天力で完全に寒さを凌げてしまうから問題はないだろう。それをすずに伝えると...
「...むぅ...。気をつけてね...?」
「ん。」
案の定ムスッとした顔になったが、止めることはなかった。
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────ビュォオォォオオオオオオオオ!!!!!
洞窟の外は相も変わらず吹雪が猛威を振るっている。天力を纏っているから寒さは感じないが風は感じるため、横に流れていく赤い髪が少しだけ鬱陶しい。
「...ちょっとだけ回ってみようかな。」
洞窟の周りがどんな地形なのか、私達はそれを確認もせず洞窟に居座っている。もし周りに先程戦った謎の氷の魔物よりも強い魔物が多数生息していたら奇襲された時に対応できるか分からない。これを機に確認しておいてもいいだろう。
───ザクッ...!
そう思って1歩踏み出した時だった。
「...。」
少し遠く...吹雪の中でも辛うじて目で見える範囲のところに人影があった。こんなところに旅人?それにしては軽装っぽいしなぁ...。
「...ちょっとだけ...。」
自分に言い聞かせるように呟き、その蠢く人影を追うことにした。
「ふぅ...ふぅ......結構...傾斜が...。」
雪に足を取られ、思った以上に前に進めない。それに急な坂だから尚更進めない。...ってなんで私飛べるのに歩いてるの...?
──バサッ...バサッ...!
そろそろ翼とか尻尾に慣れないとなぁ...。
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「見つけた。」
雪山の山頂辺り。そこに人影は佇んでいた。
『...ちゃんとついてきてくれたんだね。』
「っ!?」
遠くから見ていたのに気づかれていたとは...。それによく見ると体が透けているように見える。もしや幽霊...?




