第397話 氷結の女王
「寒い...。」
体が震える。ゲーム内の視界が徐々に凍っていく。ステータスを見ると状態異常:凍結(弱)が付いている。防寒具があってもなおこの寒さである...というのはすず談である。
「手繋ごう?」
「...ん。」
私は天力を纏うことで寒さを防いでいるが、他のみんな(アリスとアンナとすず)は防寒具を着ていても凍死しそうな程の寒さだそう。地上に降りて数秒でこれなのだから時間が経てば本当に凍死してしまうだろう。だから私はみんなで手を繋ぎ、天力を手を介して纏わせようとしているのだ。
「ふふっ...。」
「どうしたのアリス?」
「いえ...昔、こうして横一列に手を繋いで歩く子供たちを馬車の中から見たことがあったので...。」
「確かにそうだね。」
「私も手繋ぐ〜!」
「ちょっとなんで私なノ!?」
「いいじゃん〜!」
あっちはあっちで楽しそうだ。と気を抜く前に天力を皆に纏わせないと。
「暖かい...。というよりは寒さを感じなくなった...?」
「そうだね。寒さを防ぐだけだから...。」
「助かった...。ありがとあや。」
「ありがとうアヤネ。」
「ありがとうございますアヤネさん。」
正直魔大陸をなめていた。まさかここまでだとは思わなかった。ここに住んでる人達や魔物プレイヤー達はどうやって生活してるんだろう...?
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「み、見えて、きた...!」
「はぁ...はぁ...ようやく、ね...。」
あれから1時間ぐらい歩き、ようやく街っぽいところを見つけた。いくら天力があるとはいえ、4人を守るように天力を纏わせるとどうしても効果が薄くなってしまう。
白い息を吐きながら私達はどうにか街にたどり着いた。
なら最初から空島で街の上空まで移動すればいいじゃんと思うだろう。だけど、空島はここよりもさらに寒い。天力を纏っても30分ぐらいで凍死するだろう。それに、空は天候変化が激しいからね...。
「む...。珍しい。旅人だな。...龍人だと...?」
「こんにちは。」
「うむ。」
手が4本もある街の門番さんに止められ、挨拶をする。魔大陸だからこういう人もいるのか...。
「寒いだろう。この砦の中に入りな。」
「ありがとうございます。」
門番さんに連れられて私達は砦の中に入る。中は門番さんが言った通りすごく暖かかった。ストーブらしき物があったが、燃料が何か気になる。入ったらまず、私以外の5人がストーブらしき物の前に固まり、私は門番さんについていく。今この状況だと私が一番話も聞けて、動けるからね。...アイリスはともかく、メルはアイリスの腕に腕を絡めてストーブの前にいる。どうやら構造が気になってるみたい。
「ん?あぁ...あれは炎の魔石を燃料としている。この土地は数百年前に氷結の女王が住み着いたせいで凍っちまってなぁ...。...あ、これは俺たちが言ってるだけの名前であって、本当の名前は知らない。」
「そうなんですか...。それで、炎の魔石はどうやって...?」
「炎の魔石は隣国のバーニェスから輸入している。」
「ほぇー...。」
「...何も分かってない顔してんな。...ほれ。この地図やるよ。」
「え!いいんですか!?」
「おう。地図ぐらい安いもんよ。」
「ありがとうございます!」
有難いことに、門番さんから地図をもらった。さっそく広げてみる。
「で、今いるのが...ここ。トゥエティーっつーとこだな。さっき言った氷結の女王はこの街の東門から真っ直ぐ行ったこの城に住んでる。本当は倒したいんだが、妙な結界が張られていてな。迷い込むと凍死する危険地帯になってる。」
「なるほど...。」
この氷結の女王の城とその周囲の氷山は危険地帯...。覚えておこう。
魔大陸の地図です。断じて手抜きではないです。断じて。...断じて(大事なことなので)。




