第381話 文化祭と言えば的な
お昼ご飯の時間になり、控え室でご飯を食べる組と残りのお客さんの接客をする組とで別れることになった。私はよく頑張ったと言われて前者の組にいる。すずも特殊な髪色(水色がかった銀髪、先端に行くほど黄色になっていく)だったからか人一倍目を引き、人気も高かった。だからすずも先にご飯を食べる組に入っている。...ここまでで察しのいい人なら分かるだろうか。そう...
「はいあ〜ん!」
「はむっ。」
「美味しい?」
「ん。」
ニッコニコのすずの膝の上で恥ずかしさを通り越して死んだ魚の目をしながらすずからのあーんを受け入れている人物。...これが今の私だ。
「あ、ついてるよ?...ちゅっ...。」
「んっ...。」
「「「「...ヴッ!」」」」
いつの間にか頬にご飯が付いていたのか、キスで取り除くすず。...別に手でもいいと思うんだけどなぁ...。
「あ〜ん。」
「あむ。...っ!?」
あまりの美味しさに思わず目を見開く。それを見たすずはしてやったりといった顔だが、そんなことよりもだ。今までのも十二分に美味しかったが、これは二十分だ。
「...シャケ、おいひい。」
「そっかぁ。ふふっ...手作りした甲斐があったわね。」
「手作りなの?」
「うん。あやの為に私頑張ったんだよ?」
「...そっか。すずありがと。」
すずが私のために頑張ってくれたと聞いて嬉しかった。つい抱きついちゃったけど大丈夫かな?
「...ぉちつけ涼香...落ち着くんだ...襲っちゃだめだ襲っちゃだめだ...まだその時じゃない...まだ...。」
「すず?顔赤いよ?」
「ひゃぁっ!?」
無表情で菩薩のような顔をしていたすずの顔が真っ赤に染まっていた。熱でもあるのかと額に手を置いたらそこまで熱くなかった。
「「「「「「てぇてぇ。」」」」」」
てーてー?てーてーってどういう意味...?中国語とかかなぁ?今度調べてみよう。
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──午後
「じゃあ楽しんできてねー!」
「行ってくるわ。」
「はい。行ってきます。咲ちゃんも頑張ってください。」
「ありがとー!...彩音ちゃんの応援が心に染みるわ...。」
クラスメイトに送り出された私たちが何をするのかというと、他のクラスを見に行くことだ。実は午前と午後で仕事の役割が分担されていて、私たちは午前組だったのだ。そういう訳でさきほど送り出してくれた咲ちゃんは午後組ということになる。そして午後が自由になった私たちは他のクラスを見て回れる訳だね。あと、さすがに翼やら角やら尻尾やらが邪魔になるのでそれらの装飾品は全て外してきた。
「お化け屋敷が多いみたいね。」
「人気なのかな?」
「そうねぇ。...惹かれるものはあるわね。それに今年は先生達が体育館でお化け屋敷をやると言ってたからその影響もあると思う。」
「なるほど...。体育館を使った先生達のお化け屋敷ってどれほどなんだろ...。」
「今から行ってみる?...私は気乗りしないけどね。」
「うん。」
すずはお化け屋敷があまり好きではないみたいだから気乗りしない気持ちがひしひしと伝わってくる。だけど、単純に先生達が体育館を使って作ったものが気になるって気持ちも少しだけ伝わってきている。
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「...いらっしゃい。」
体育館に入るとまず目に入ったのは顔を黒いベールで覆った女性だった。ベールの色が濃いせいで顔が見えなかった。そして、まだお昼すぎたばかりだからか、他に入ろうとしている人は誰もいなかった。
「...入るのかしら?」
「えぇ。」
「はい。」
「...ならこれを持って中に入りなさい。」
「これ、は...?」
渡されたのは真っ白の顔なし人形×5。すずにも同数渡された。そしてその後にひとつの手作りの手帳も渡された。手帳は私が持つことになった。
「...ここは幽霊迷路屋敷。言わずもがな迷路よ。貴女たちはこの中にある6つのスタンプを全てその手帳に押してくること。そしてその人形は言わば残基そのもの。それは無くさないようにしてね。...全て無くなると...。」
「無くなる、と...?」
「...さて。時間ね。もう入っていいわよ。...途中で出たかったら非常口が所々にあるから探してみてね。...では逝ってらっしゃい。」
なんだか不思議な感じがする人だったなぁ。
そうして私たちは手を繋いで幽霊迷路屋敷?に入っていった。
いつでもイチャついてんなこの子達...。




