第367話 (ヤ)ミツル
「さぁミツルさん。前は逃げられたからね。...詳しく話して?さぁ。さぁ。」
「ちょ、ちょっ?こ、怖いぞ...?に、逃げないから!...な?」
ミツルさんはあの骸骨の姿ではなく、最後に見たポニーテールの可愛いというよりはカッコイイが似合う女性の姿で現れた。それも幽霊ではなく実体化して。っとそんなことはどうでもいい。
「これについて詳しく説明してください。」
「うっ...。いやぁ...その、な?......よ、よく似合っ───」
───ヒュンッ...!
「──ぶなぁっ!?」
「チッ...。」
「黒いなぁおい!」
「あ、あの...?」
「ぁ...ごめんねハルカちゃん。」
「ハルカちゃんって言うんだな。騒がしくしてごめんな。」
「い、いえ。その...お二人共随分と仲が良いように見えるので...。」
「そ、そうか?という訳で私は見回りに行ってきます!」
───ガシッ...!!
「......ニガサナイ。」
「ヒッ...!」
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あの後ミツルさんとじっくりと話し合いをしてこの外套について詳しく聞いた。
この外套は本来魔大陸のある国の王族が代々受け継いでいた物だったらしい。『試練の外套』という名の通り子供である王子が王へ至らしむために用いられていたのだとか。だけど、その頃の外套は全体的な身体能力の低下以外には特に何も効果が無かったという。
ミツルさんになぜ目隠しという効果が生まれたのかと聞くと、ここ百年以内にとある事件が起きたからだという。
「代々受け継いでいた王族が皆殺しにされたんだ。」
「みなごっ...!?」
「そう。...その時外套を着ていた王子は目隠し、拘束をされ、磔にされた。謂れもない罪を着せられてな。」
「それは...。」
「その時の怨念が外套に宿ることでそのような禍々しい物になったんだ。そして私は............興味本位で触れたら外套に巻き付かれて死んだ後も尚、魂を外套に絡め取られたまま現世を漂っていたという訳だな!」
「...なんですかその妙な間は。」
「い、いやぁ?なんでもないぞぉ?」
「怪しいですね...。」
「ハルカちゃんもそう思う?」
「えぇ。」
「...まぁ気が向いたら話すよ。」
どこか悲しそうな顔をしていたミツルさんはそういうと気持ちを切り替えたのか笑顔になった。...やっぱり興味本位で外套に触れたという話は嘘なのかもしれない。
「これで私の話は終わりだな。」
「ありがとうございました。」
「...いや、私はあの時逃げたわけだからな...。感謝しなくてもいいぞ。」
「それとこれとは別の話ですからね。」
「...そうか。」
「さて!私はそろそろこの島の巡回にでも行ってくるとするか!」
「あ、そういえば守護者でしたね。」
「...まさか外套のこと聞きたいがためだけに私を呼んだのか...?」
「......あはは。」
「はぁ...。まぁいいや。行ってきます。」
「はい。行ってらっしゃい。」
「行ってらっしゃいませ。」
そう言うとミツルさんはボロボロの剣を腰に提げてこの部屋を出ていった。ミツルさん用の剣も造りたいな...。そのためにはまず設備を用意しないといけない...。
「それでしたら1500ポイントで『鍛治場』を創れますよ?」
「本当!?」
「はい。ただ時間がかかるのですぐにでも装備が造りたいのであればオススメはしませんが...。」
「今後使うと思うから創りたいかなぁ。」
《──1500防衛ポイントを使用し、『鍛治場』を制作します──》
機械音声が聞こえてくると、目の前にこの島のマップらしきものが現れた。多分どこに創るのかとかそんな感じだろう。
「んー...どこがいいんだろう...。」
「よく使うと仰っていたのでここから近くに創るのがいいのではないのでしょうか?」
「そうだよねぇ...。じゃあ...ここで!」
《──では『鍛治場』の制作に取りかかります(完了時間:現実世界で3日)──》
確かに制作時間が長い。その間何も造れない...という訳でもない。
「じゃあちょっと外に行ってくる。」
「何をなさるのですか?」
「鍛治だよ。」
私は焔龍王だ。高温の炎を吐くことができる龍人だ。...金属を溶かす炎を吐くぐらい余裕だ。
ミツルちゃんに一体何があったのか...。




