第364話 何も無い幸せな日常へ
「...いつまで続くんですかこれ...。」
「どっちかが倒れるまでやな。」
「...それ実質私が倒れるまでですよね。」
「むふふ。そうとも言うな。」
「...はぁ。」
こういう所がなければ素直に尊敬できるお姉ちゃんなんだけどなぁ...。
「お?彩音ちゃんは清廉潔白なお姉ちゃんをお求めですかい?」
「そうですね。」
「即答かいな。」
そんな呑気な会話をしている最中でも刀(うち1人は木刀)を打ち付けあっている。否、杏子さんが打ち付けあいに付き合ってくれている。本当に力の差を感じる。師匠は私のことをコピー人間と囃し立てたが、杏子さんレベルになると理解すらできないもん...。
「じゃあぼちぼち行くよ。」
「っ!」
───ギャァィィイイインッッ!!
「おろ?ついに防げたん?」
「...いつもの軌道に刀を置いただけです。」
「それやとアカンねん...。ウチは敢えて同じ軌道にすることで目で捉えてほしかってん...。」
「...目で捉えることができるのは杏子さんと師匠だけだと思います。」
「えぇ〜...ウチには彩音ちゃんの攻撃が止まって見えるんやけどなぁ...?」
「尚更無理です。」
「むぅ...。」
可愛いですけど...。
「...せやけど彩音ちゃんのことやから少しは理解しとるんやろ?」
「......まぁ...はい。」
「せやから完全に理解するまでやろか。」
「...墓穴掘った。」
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「はぁー...はぁー......。」
「おつかれ〜。」
あの後ひたすら見えない攻撃を受け続けた。ずっと同じ軌道だったとはいえ、5時間ぶっ通しはどうかと思う...。3時頃に帰ってきたのに、もう8時半頃になってるよ...。まぁそのおかげで足運びから始まって、初動をどうやってあんなトップスピードで繰り出せるのかとか、効率よく振れるような最適な刀の軌道とか、そこら辺は大体理解した。だから同じことをやれと言われたらできるにはできる。だけど応用したりするのは無理だ。
家に帰ってきたあと、珍しくお父さんがご飯を作ってくれていてビックリしたけど嬉しかった。ご飯も美味しかったしね。杏子さんも美味しかったって言っていた。それで...
「...どうしてこうなった。」
「ん〜?ちょっとだけ...。」
今私は倒れるようにベッドに沈んでいる。...隣で杏子さんが抱きついてきているけど。
「...行くんですか?」
「......うん。」
杏子さんは世界で活動している人だ。...主に戦争関係で。未だ戦争をしている国々を両成敗し、両者に話し合いの場を設けるという荒治療とも言える非常に危険な仕事(?)をしていたりする。第二次世界大戦終戦後と比べ、最近では戦争する国も減ってきているため1年に2ヶ月程休みをもらえるらしいのだが、前者の頃は数年に1週間休みをもらえるかどうかの忙しさだったそうだ。
そんな杏子さんが毎回休み明け前日の夜にすることはなぜか私を抱きしめて寝ること。杏子さん曰くなんか落ち着くとのこと。私は抱き枕じゃない。
「...行ってらっしゃい。」
「...うん。秒で終わらせてくるわ。」
「ふふ。」
「むふふ。お休み〜。」
「うん。おやすみなさい...。」
ここで行ってらっしゃいを言うのは私が杏子さんが行く時間に起きれないから。だって杏子さん夜中の0時に出てくからなぁ...。
そうこうしている内に私の意識が薄れていく。そういえば今日セカンダリア・オンラインやれてないなぁ...と思いながら完全に意識がなくなった。
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次の日。
杏子さんがいなくなって、一抹の寂しさを感じながら私は今日も学校にいくのだった。




