第363話 戦闘狂
「おぉおかえり〜。」
「あ、杏子さん!?ずっといたんですか!?」
「なんや?ウチがいたら迷惑なん?」
「いや、別にそういうのじゃないですけど...。」
「せっかくやし彩音ちゃんにウチの運動につきあってもらおうと思ってな。」
「...ちなみに拒否権は...」
「彩音ちゃんの部屋に同居人が増えるな。」
「...分かりました。...いつまでたっても戦闘狂なのは変わらないなぁ...。」
「なんか言うたか?」
「...なんでもないです。」
「そうか。...それはそうとして戦闘狂なんは彩音ちゃんもやと思うけどなぁ?」
ニヤニヤとしながら私に問いかける杏子さん。...聞こえてたじゃん!これ絶対ボコボコにされるやつじゃん...。
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「...準備はええか?」
「正直帰りたいですけど...はい。」
「軽口叩けるんなら大丈夫やね。」
杏子さんは最近私に技を教えてくれてるけど、終わったあとに必ず一戦を求めてくるんだよね...。その時の武器は当然刀。だけど、杏子さんは木刀で私は真剣。これは決して舐められている訳ではなく、杏子さんがスリルを感じたいらしいのでこうなっている。
師匠に教えることはもうないと言われ、杏子さんを紹介された時、私は死んじゃったらどうするんですかと聞いた。だけど、『ウチを超えるぐらい強くなったってことやろ?なら万々歳や。』と返された。そう言われた時、この人には勝てないなと思っていたが、まさか掠りも入れられずに4年経つとはね....。
「さぁどっからでもかかってきな!」
「それではお言葉に甘え...てッ!!」
力を入れるタイミングを少しずらし、フェイント紛いのことをしたが、普通に受け止められる。木刀なのになんで真剣の攻撃を受け止められるんだって?...それは私も聞きたいよ...。そこの所は見て覚えろって言われたんだけど、未だによく分かっていない。でも少しだけ...ほんの少しだけ仕組みが分かってきてる。
────......!!!!!
「楽しいなぁ。」
「っ...そうです、か...!」
音の無い戦い。別に全ての攻撃が避けられているという訳では無い。木刀に当たっていても音が響かないのだ。これも仕組みが分からない...。
「よそ見は禁物やで。」
「ぐぁっ!?」
よそ見なんてしてないし、できない。多分この言葉を使ってみたかっただけだと思う。
「なんやか貶された気ぃすんなぁ。」
「気のせいです!!」
────ヒヒヒヒヒヒュンッッ!!
渾身の万連撃をその場から一切動かず受け止められる。これを初めてやられた時、心が折れそうに...いや折れたがそんな事を一々気にしているとやってられないということに4年前気がついた。
「相変わらずすごい技ポンポン出してくんなぁ?」
「よく言いますよ...。」
自分は斬撃の軌跡だけで視界を真っ白に染められる癖に...。いったいいつになったら勝てることやら...。
「ほれほれ!まだ行けるやろ?」
「もちろん、です!!」
ここまでやっても杏子さんどころか木刀にも傷1つない。それどころか向こうは攻撃すらしていないのに私は翻弄されて満身創痍だ。
「ふぅ...。なんでいつも私なんだろ...。」
「だって勝と戦ってもしょーもないもん。」
「え?なんでです?」
勝とは師匠の下の名前。師匠と戦ってもつまらないって...。
「だって本気出してくれへんもん...。」
「えぇ...。」
「『お前に本気で行くと絶対付き纏ってくるから』って刀しか使わへんし...。」
「あはは...。」
「せやから刀だけやと勝より強い彩音ちゃんと戦ってるわけやね!」
「...はぁ。」
杏子さんは憧れの人でもあるけど...やっぱり苦手だ。
ちなみに彩音たんが戦闘狂なのは杏子さんの影響です。




