第354話 想像したらヤバいやつ
「天空王ファルティタの匂い...?」
天空王ファルティタというと、メルと同化していたメルフォーズくんの友達?だったよね?でも会ってから結構時間が経ってるし、一緒にいた時間も短い。...あ、でもなぜかき、キスしてきたのは忘れられない...。それと同時に称号も貰ったしね。
「...それにしても随分とまぁ...好かれたもんだな。」
「そうですかね?」
「あぁ。...まぁ大方添い寝して気持ちよく寝れたから気に入ったんだろうな。」
「...。」
添い寝されてることがバレてる...。
「そりゃああの『怠惰の』だぞ?初対面の相手とはまず寝て体の相性を確かめるやつだ。」
「な、なんかそれ色んな語弊がありそうですね...?」
「まぁいい。本題に入るぞ。」
「はい。」
「まず、なんで『怠惰の』の匂いがしたから話すのかだな。最初に答えを言っておこう。───俺が『天使族』だからだ。」
「てんし...ってあの天使ですか?」
「どの天使かは知らんがそうだな。」
「そんな天使がなんでこんなところにいるんですか?」
「...とある理由があって俺はずっとここにいる。あれは今から54年前のことだった─────」
「...なんか中途半端な数字ですね?」
「...うっせぇよ黙って聞いとけ。...俺にとって忘れられない出来事があった年だから何年前のことか鮮明に覚えてんだよ。」
「なるほど...?」
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あれは54年前、雪の降る日のことだった。
俺ことウィンズ・ロスタルムは天界に引きこもりがちな天使族の中では特殊で、外の世界に興味が尽きない...そんな感じの男だった。将来は両親の仕事を継ぐ予定だったが、歳を重ねる毎に外の世界はどんな感じなんだろうと思う気持ちが膨らんでいった。
『母さん。父さん。俺、下界で旅するよ。』
『はぁ?なぁに言ってんだぁ?』
「ウィンはこの家を継ぐのでしょう?なぜ下界に行きたいなどと...?...考え直して?」
「ちっちゃい頃から下界には行きたいなと思ってたんだ。...俺の気持ちは変わらない。」
「「...。」」
呆然とする両親を置いて数ヶ月前から密かに旅の準備を進めていた俺はその準備した物を持って雲から飛び降りた。
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『すっっっ......げぇぇえ......!』
白しかない天界と違い、緑、赤、青、と下界には無数の色が存在していた。当然のごとく俺は興奮し、暫くは同じ場所でウロウロしていたのはいい思い出だ。何もかもが新鮮だったからな...。
それが最初の印象。天界とはまた違う美しさを持つ下界の魅了に囚われたのだ。だが、それが一瞬にして反転したのがそれから3年後のことだ。
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「おぉ?なんだアイツ?翼生えてねぇか?」
「んぁ?うぉ!ほんまやん!まさか魔物か!?」
「たしかに亜人っぽいけど、あんな翼が生えた亜人なんて見たことねぇしよぉ...?」
───...魔物っつうんなら翼を捥いでも良いだろ...?
そんな理不尽な理由で俺は両翼を失った。ちなみに飛べば良かったじゃんと言われるかもしれんが、あの荒くれ者達は冒険者という存在...つまり強い者達だった。だから相手が飛んで逃げようとも魔法やスキルで攻撃を当ててきたし、なんなら自分たちで跳んできた。為す術もなく地面に叩き落とされた後ゴギ、ギッッ!!っと...。
それからというもの人間が怖くなった俺は引きこもるようにして今いる研究所で研究をしている。
その研究内容は"天魔石の創造"である。天魔石...別名:飛空石は空を飛ぶための石だ。これで分かっただろ?...なんで俺がこの石を創りたいのかが。
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「...だから俺は龍人様のその翼が心底羨ましいと思っている。」
「なんか...すみません。」
「謝るな。俺が惨めになる。」
ウィンズさんが不憫だ。私も何かできること、無いかなぁ...?




