第352話 しちゃく
「つ、疲れたぁぁぁ...。」
「お疲れ様あや。」
ぼふんっとベッドに倒れ込み、気の抜けた声を出す。ここ1週間ずっと依頼のことをしていたから自分のことは何もできなかった。まぁ素材集めのために色んなところに行ったし魔物の素材は結構ある。
「今日で終わりかなぁ。」
「そうね。ヅイルさんには見送る形で言っておきましょう。」
「ぅん...。」
そしてその数分後。
案の定すずから掲示板の反応が良くないと言われてしまった。お試し期間だったからと言い訳はできるが、何も感じないと言えば嘘になる。いつか開くから...。次はもっと田舎の方でのんびり...。
「刀夜さんみたいに山奥で開いてみてもいいかもね?」
「お父さんみたいに?」
「えぇ。だって来るのはお偉いさんとか知る人ぞ知るみたいな感じの鍛治屋でしょ?」
「たしかに...?」
...たしかにそうかも。お父さんはネットでの注文も受け付けてないから山奥にある現地でお父さんと直接会って依頼をしないといけない。代理人も受け付けないから依頼する人も少ない。それでもどうしても!とお父さんの元にはたくさんの電話による依頼がくるが、全部断っている。でもその数は初日の私みたいに1日200件とかそんなにはなかった。
「あ、そういえば明日は試着ね〜。」
「そうだっけ?」
「えぇ。」
すずの満面の笑みからどれだけ楽しみにしていたのか分かるが、そこまでだろうか?私はただの試着だと思うんだけど...。あ、ちなみになんの試着かというと、文化祭で着るセカンダリア・オンラインのそれぞれのアバターのコスプレ衣装だね。私は金色の角と尻尾、この来てる服と、あとは手の甲とか頬に赤く線を書くぐらいかなぁ。
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次の日。
「あの...?な、なんでみんなこっち、見てる、の?」
「いや...ねぇ?」
「だって...ねぇ?」
更衣室で上を脱ぐと、またもや感じる目線。これは体育の時とかにいつも感じる。だから視線を送ってくる皆になぜ見てるのかを聞いてみるが、いつも「ねぇ?」で返されてしまう。正直もう諦めてはいるが、気恥ずかしいことには変わりない。
それで、今は福宮 凛ちゃんが作ってくれた服を着ている最中だ。採寸は一瞬で終わったのにこんなにもピッタリなのはすごいなぁ...。下も着替えたら、次はウィッグを被って、その上から角を付けてみる。
「「「「もうアヤネたんじゃん!」」」」
「たん?...いや私は元から彩音なんだけどなぁ...?」
「あや。そういうことじゃないわ。」
「?」
なんだかよく分からなかった。まぁそんなことは置いておいて、次は尻尾だね。尻尾はベルトにくっついてて、付けるとちょうど腰あたりに尻尾がくるように調整されている。ちなみにこの尻尾...なんと動くらしい。
『天才発明家の僕にかかればこんなもの朝飯前さ!』
と言っていた蓮名 天斗くんはその言葉通りの天才だ。天斗くんは私が普段からやっている『セカンダリア・オンライン』をするための機械の仕組み...脳波を検知し、それをVR上に反映させる技術?を理解し、応用した結果を用いてこの尻尾を造ったらしい。だから向こうと同じぐらい自由に尻尾を動かせる。さらにさらに天斗くんは私のために龍の腕を用意してくれた。これを私の腕にはめると龍人みたいになれる。もちろん腕も尻尾と同じく自由に動かせる。
これで私は目以外完全にアバター通りの姿となった訳だ。目は金色のカラーコンタクトを入れればいいじゃんと私が言ったのだが、クラスの全員が反対したためNGとなった。カラーコンタクトってそんなに怖いのかなぁ...?
「「「「「「「「......。」」」」」」」」
「...?」
み、みんなして真顔で見てくるのが怖いんですが...。
...モン〇トのラミエルちゃんが獣神化した。(* * * *)
これで私は...まだ...(ω˘ ***)
戦える...!(`・ω・´)ドォンッ!
ありとあらゆる強化を施したラミエルちゃんに叶う者なし...!!(ラミエルちゃん推し(ラミエルちゃんしか勝たん))
...喜びを、誰かに伝えたい事って、あるよね...。(本編と関係なくてごめんなさい)




