第345話 よーじ
「「「...。」」」
く、空気が重い...。
あれから私たちは場所が悪かったのですずが買った家まで終始無言で移動した。そしてその後、応接室みたいな場所で私とアリスちゃんはすずと向かい合うようにすわっていた。
「それで?アリスちゃんはあやの側妻になりたい、と?」
「...えぇ。」
「...ふーん。」
すずの目が細められる。いったい何を考えているのだろうか...?き、気になるけど怖いなぁ...。このあとどうなっちゃうんだろう....。
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──スズカside
「それで?アリスちゃんはあやの側妻になりたい、と?」
「...えぇ。」
「...ふーん。」
あやは隣にいるのと、チラチラとこちらを窺っているためアリスちゃんの顔を見ることができないが、こちらからはハッキリと見える。彼女の目は本気だ。公爵令嬢という肩書きを持つ彼女が別の国の王都であるダルシムにまでやって来ている。それも外交などでは無いと。...それほどまでに本気であることが分かる。もし彼女が家族達に何も言わずに家出紛いのことをしたのならば、周りの大人達は放ってはおかないだろう。
...まぁ部屋の外には彼女の従者がいるんだけどね。巨大なバトルアックスを持って。
「私はアヤネさんに助けてもらいました。恩返しをしたかったのですが、その機会もありませんでした...。ですから今までできなかった分を倍にして返していきたいと思っています!」
「...それだけ?」
「いえ、これは理由の2割程です。...残りの8割は...アヤネさんのことが好き、だからです...!!」
「きゅぅ...。」
隣にいるあやが変な声を上げ、顔を真っ赤にしながら俯いた。そんな姿も可愛...ゲフンゲフン!今は大事な話の最中だ...。
「...。」
「...。」
私たちは見つめ合う。確かにその目には嘘偽りはないようだ。
「...なら、あやの好きなところを挙げなさい。」
「分かりました。まず最初に妹みたいで可愛らしいところですね。年齢はスズカさんと同じだとすれば私と同じぐらいですが、見ての通り妹みたく可愛らしくて好きです。こんな可愛らしい方が他にいらっしゃるのでしょうか?次に性格です。他人に対し無表情で僅かながら警戒するその姿勢...まるで猫のようで可愛らしくて好きです。ふとした時に見せた笑顔...私は忘れられません。次に仕草が可愛らしいところで─────」
「ぅぁ...ぁぁ...ひゃめ...あぅ....。」
「分かった。もういいわ。」
あやが羞恥で死にそうになっているのでそこまでで止めておく。...アリスちゃんが言っていることはまさに私が思っていることと同じであった。
「...。」
「...ゴクリ。」
「やるじゃない。いいわ。」
「っ!!本当ですか!?」
「えぇ。あやはちょっとしたことで恥ずかしがるけどそこがまた可愛くて好きなのよね。」
「ですよね!私も出会ってから話した時間は短いですが、アヤネさんの可愛らしいところはいくらでも挙げられます!」
「...ゎたしちょっと外、行ってくる...。」
「ダーメ。」
「ダメですよ?」
あやは私からの褒め殺しが始まったのを聞いてこの部屋から逃げ出そうとしたが、そうはいかない。ソファから立ち上がったところを無理やり捕まえて、私の膝の上に乗せる。ゲーム内ならばあやのSTRの方が高いため力を込められれば簡単に拘束を解かれるのだが、あやは私に優しいからそんなことはしない。
「は、離して!」
「ほーら逃げちゃダメ!」
「うぅ...。」
「...ふ〜。」
「ひゃぁぁあ!?!!」
背後から抱きついてお腹に手を回す。外套のフードを外して耳に息を吹きかけると面白いぐらいに飛び上がる。...まぁ抑えてるからそこまでだけどね。目隠しされ、私に抱きつかれながら顔を赤くしてるあや...ちょっとムラっとしちゃった。あ、そうだ!文化祭の時に......。
「...!」
「どうしたのあやぁ?」
「...ちょ、ちょっとだけ悪寒がした...。」
「気のせいじゃない?」
っとそうだったそうだった。アリスちゃんがいるんだった。
「アリスちゃんもだっこしてみる?」
「いいんですか!?」
「私は赤ちゃんじゃないからね!?」
それからあやを解放したのは2時間ほど後のことだった。...途中で出てくるのが遅いことに痺れを切らしたアリスちゃんの従者であるアンナと、アイリスとメルが部屋に突入してきて皆であやを愛でたのは良き思ひ出。
「...んん〜?...もっとなでてぇ...?」
「「「「「...。」」」」」
どうやら私たちはやり過ぎたようだ。(賢者タイム)
あやねさんのよーじたいこー




